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「好きな気持ち」がうまく言えない

そんな私が、人を好きになった。
仕事の後輩。出会いは4年前。後輩君と呼ぶことにする。
はじめは、チームもちがうし、その子の指導係も別にいたから直接かかわることはなかったけれど、

シンプルに、かわいい。

一生懸命なところとか、ノリのいいところとか、見た目も含めてかわいいのだ。
遠巻きに見守るくらいだったけれど、たくさんいる中の一人、きっと向こうにとっては直接かかわろうとは思わないだろうなーと思い、何も変わらない日々が続いた。

その年の末、まだオフィシャルに“忘年会”が開けたときだったので、例にもれずうちの職場も会が企画された。
忘年会は、なぜか幹事集団が席くじを作り、ランダムに席が割り当てられる。毎度のことながら、くじづくり含めて大変だなぁと思っていたが、一番手前のとても出やすい位置に陣取ることとなった。
飲み会の私は”沈黙”が生まれないように場を回すことに終始する道化師と化す。どんどん話題を見つけ、話が終わりそうになったらほかの人に振る…というように、みんながある程度お酒を飲んで、饒舌になるまでは酔ってらんないのです。

そんな忘年会の終盤、いよいよ道化師のお役御免ということで、ソファー席に座り、そのテーブルの話に耳を傾けていた時に、
「せんぱーい!!!」
と元気な声が。後輩君だ。

おお、どうしたの?
「いや、年末にかけてお世話になりました!」

そう、そこまでかかわりはなかった毎日だったが、ある時に仕事のことで相談を受けたことがあった。その仕事が落ち着くまで、ちょくちょく話を聞いていたので、そのことについてお礼を言われたのだ。

「で、全然関係ないんすけど、なんで俺とLINE交換してくれないんすか?」
え、まぁ聞かれなかったし
「ひどいっすよ、俺ずっと連絡先交換したいと思ってたのに…」

キュンとした。
なんか、諸々のフィルターかかっていたとはいえ、頭の中で嵐の“Love so sweet”のイントロ流れるくらいキュンとした。
また、ソファー席も相まってか、ちょっと甘えてくる感じ。ネコみたい。

そうだったんだー、うれしいよ。じゃ、交換しよっか。

その様子を近くで見てた指導係も、
『よかったじゃん、ずっと言ってたもんね』
とほほ笑んでいる。

おいおい…///

そこから先、お酒を飲みながら仕事の話、趣味の話、たわいもない話を延々と。
残りの時間があっという間に感じた。


その日から、職場での時間に楽しみができた。
今までと違うのは、朝の挨拶に何か一言加わったことだ。
「おはようです、あのyoutube見ました?」
「おはようです、朝一で悪いんですけど、これ教えてもらっていいですか?」
「おはようです、今週末飲みに行きませんか?」
ドアを開ける前に、いい表情しようとさえ思ってたくらい、楽しみができた。


あぁ、これが人を好きになるってことなのかもな。と。
今までだって抱いたことのある感情だけれど、「毎日顔を合わせる人」を好きになると、こんな毎日になるんだと初めての感覚に戸惑いもあったが、楽しみが勝っていた気がする。

一緒に飲み会をした。
一緒に温泉に行った。
一緒に旅もした。

後輩君のスマートウォッチの背景が6色のラインだった時に「もしかしたら…」を感じた。
もし、自分と同じ性だったら、この気持ちを伝えても関係が大きく崩れることはないのではないか。でも、そうじゃなかったら…

ずるい自分は、飲んだ後のLINEで
「急な誘いで一緒に飲んでくれてうれしかったです~。」
全然OKだよ。後輩君のこと好きだからね。
と言ってごまかしていた。嘘じゃないし。

ジャブ過ぎたのか、何にも変化がなく、ただただどんどん仲良くなっていく実感だけが増えていく日々が続いている。


「好きな気持ち」がうまく言えない。


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