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The 1975 - A Briefly Inquiry Into Online Relationships

11月末、0時を周ったころ、
私のツイッターのTLはざわついた。
それもそう、The 1975の新作がストリーミングで配信されたのである。

テレビ番組、映画、サッカーなどタイムラインで実況されているのは
これ幾度となく見てきたが、音楽でこれほど実況が盛り上がったのは
ツイッターを始めて以来、今までなかったことである。

それほどまでにThe 1975に対する期待は寄せられていた。
先行シングルは全て素晴らしく、the 1975のバンドとしてのアティチュードも素晴らしく、このバンドに対しての信頼度はとても高いものであった。

そうしてハードルの高まった中、始まったアルバムの実況は良いものの、
肝心のアルバムの出来はどうであったか??
勿論、周知のとおり2018年を代表する傑作であった。

「ロック」というジャンルを超えた幅広い音楽性、
一曲一曲の完成度の高さ、多ジャンルを取り込みながらも、
きちんとした整合性のとれた作品。
初めて聴いたときの感動をまた味わいたいと思えるほど、
感動的な出来であった。

具体的に言うと、ロック、アンビエント、ポップ、ジャズ、AORといった
ジャンルがこの作品に収束されている。
昨今、ストリーミングサービスが盛り上がっており、
リスナーは音楽にアクセスしやすい環境が整った結果、
あらゆるジャンルが聴かれるようになった。
2011~2012年にロックしか聴かなった人間も今や、
ヒップホップを聴いて感銘を受けるなど、
我々の耳は多くのジャンルに対応できるようになった。


そういった背景を見過ごしたかのように、
the 1975の新譜はあらゆるジャンルを取り入れ、
現代を生きる我々の耳元にあらゆるアプローチをしてきている。
このような情勢をつかみ、自身の音楽に反映させることは、
今のバンドなら容易だろうが、
The 1975のすごいところは、そういったありすぎるジャンルの中でも、
一曲一曲のクオリティが高いところ。
そして音楽性の秀逸さもさながら、今作はインターネットをテーマにした、
コンセプティブな作品でもある。

現代インターネット社会において我々はパソコンやスマフォなどを手放せない生活を暮らしていて、昔ではありえなかった、顔もわからない人たちと、文章だけの付き合いで仲良くなることができ、
実際の生活において友人と呼べる人間が少なくても、インターネットを開けば沢山の交友関係を深めることができる。
それが現代社会のメリットでもあると同時に、それを逆手にとって犯罪に利用したり、またはインターネットならではの問題も発生しており、
便利さゆえに、昔と比べて生活基準が怠けてしまうなどの社会現象も起きている。

そういった側面をthe 1975は注視し、今作のいたるところに問題提起を起こしている。
例えば、"the man who married a robot"という曲では、とある孤独で人間関係に充実していなかった男が、インターネットの人工機能を持ったプログラムに恋したというテーマなのだが、
少々非現実的な方向へ進んだ題材とはいうものの、現代を生きている私たちにとっては、容易に理解しうるシチュエーションとなっており、
それに本質的には孤独であるのには変わらないのに、この曲の歌詞は「孤独=悪」という形にリードせず、
逆にインターネットのAIに出会って幸せになっているかのような描写をしている。
しかしながら、われわれの目には孤独で死んでいったという事実しか見えないので、いくらこの男が幸福を感じようとも、こちら側では「幸福とは何か?」という疑問を抱いてしまう。



このようにしてthe 1975は音楽面、歌詞面においても現代の生活環境について取り扱ってることは、間違いないだろう。
こうした時代性を伴う作品はこの先とても重要な資料ともなるだろう。
10年後、20年後、2010年代はどのような時代を過ごしていたか?と考えた際に、この作品は色々な面で役に立つことができる。

私にはこうした点において、この作品はとても大事な作品であると決定づけ、the 1975自体も2010年代を代表するバンドとなることを決定づけるものとなった。

しかし、批判的な意見も存在することについては納得できる。
この作品は、沢山のジャンルを取り入れたものであることには間違いないが、もう少しアップビートな曲を入れてほしかったというのも正直な気持ちである。
前半や、中盤の展開は素晴らしい。後半の展開も素晴らしいには間違いないのだが、前作における"the sound"や"this must be my dream"のような気持ちを高揚させる曲があればいいのになとも思える。
前提としてとても良い曲に恵まれている作品と述べておくが、
"Inside your mind"や"Surrounded by Heads and Bodies"などは、
この作品をやや退屈にさせている要素であるので(個人的に)
この代わりにアップビートなものでもあればと思ったのだが、
作品の雰囲気を壊しかねないのでしょうがないともいえるのかもしれない。

つまり何が言いたいかと言うと、ライトなリスナーなら中盤からの展開に退屈な印象を抱くのもわかるという事だ。

そしてRadioheadのOK computerとも比較されてしまったのが問題でもある。まあこれについてはMatty Healy自体もこの作品に値するクオリティを作ると言ってしまった時点でこうなる運命は逆らえなかったが、
膨大なファンベースを持つバンドと比べてしまうと、the 1975ファン側が「Radioheadより素晴らしい」みたいなことを述べてしまう可能性がある以上、これについて反発する声も大きくなってしまう。
かねてからMattyはビッグマウス的な発言もあり、Radioheadについての発言も注目を集める意図で言ったつもりだろうが、
ファンを期待させる良い意味の可能性もあるし、叩かれる要因となってしまった。まあ本人はこれに関して気にし無さそうだが。

賛否両論を生む作品であることは間違いない。しかしどの時代の傑作も、良い声もあれば悪い声も少なからずある。(私もかってはビートルズのサージェントペッパーズは苦手だった。)
現時点で2018年を代表する話題作であるのは事実であるし、私は10年20年経とうが、この作品は「一年を代表した傑作」というポジションのままであると思う。


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