ウインド_リバー

アメリカのある一面『ウインド・リバー』(2017年・米)

渋くて苦い映画です。反面、能天気なお姉さんやラリった輩も出てきます。「渋い」のは主演のジェレミー・レナの役柄です。極寒の地がめちゃくちゃ似合います。「苦い」のは舞台となっているワイオミング州先住民保留地区のやるせない人間模様と生活そのものです。

後半のシーンで、あたり一面雪原の中、血だらけの警備員が叫びます。
「ここには何の楽しみもない、あるのは、この憎たらしい雪だけだ!チクショウ!」
そう叫び、行き場のない雪原を這いつくばっていく――。
観ている人は、このシーンで胸をなでおろします。スッキリ。

先住民役のギル・バーミングがまたいい味を出しています。目立った産業もなく、寒すぎて農業もできない地域に押しこめられたアメリカの先住民たち。彼らには生きる希望も喜びもなく、常に差別と苦しみの生活があるのみで、若者はヤクの売買でその日その日をしのぐ。

LINK-USAから

ちなみにワイオミング州は、全米の中でアラスカ州に次いで人口の少ない州です。その人口密度は2人/㎢。極端にいえば1キロ歩かないと隣人に会えないということです。そうした環境に、ネイティブ・アメリカン(先住民)が押しこめられています。そして、若い女性を狙った殺人事件が多く、未解決なまま放置されてしまう現実。サスペンス・スリラー映画とうたわれていますが、むしろアメリカが抱える社会問題を告発したミステリー作品といえそうです。

見終えて、無言になってしまう20.315でした。

ハッピーエンドでもバッドエンドでもない『ウィンド・リバー』ですが、アメリカ社会のもうひとつの辺境を描いた佳作となっています。脚本がとてもしっかりしていると思います。

この作品、AmazonPrimeで上位の評価となっていたのでみてみました。事実、2017年カンヌ映画祭で監督賞を受賞しています。

※冒頭写真は「Real Sound映画部」、中段は「Link-USA」から。

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