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どんぐり(長野修平さん)が語る(3)知恵につながる種を次世代へ

自分たちが頑張ってやってきたBe-Nature Schoolを、受け継いでくれる人がいるのはありがたいね。

立ち上げから2年経って「この先どうする?」って話してたとき、もし森さんもやめるって言ったら終わってたよね。森さんはさ、その後も何度か「オレやめようかな」って口にするときがあったけど、僕はいつも「じゃ、やめなよ」って言ってた。そう言われてやめるくらいだったらやめたほうがいいから。

人間って、何かにしがみついてるとよくないの。執着を放つことで次が開けてくるわけ。「せっかくここまでやってきたんだから」とか「みんなのこともあるし」って理由で維持しなきゃいけないんじゃ、気持ちが入らないでしょ。でも、自分でやりたいと思ってることには実力以上の力が出せるものだから。

Be-Nature Schoolって、バブル崩壊のころに立ち上げた事業じゃない? で、あの時代に生き残るっていうのは、やっぱり並大抵のことじゃない。

通年プログラムだけだと集客が厳しいってことで、単発型のプログラムにしたり、請負仕事もできるようにしたりして、森さんがどんどん変えていったから、徐々に伸びて、社員も入れられるようになったわけでしょ。

ほかの自然学校は、学校関係とかの団体客を受け入れることで維持してるところが多かったの。一般個人だけを対象にしてる自然学校なんて、まず生き残れないだろうって、みんな言ってた。「続いているのはまぐれだろう」って言ってる人もいた。

自分がかかわったものが残ってるのって、もう単純に自慢だよね。うっふっふ! 「オレがつくったんだぜ」みたいな。一生言えるね、これ。だから、成長してもらわないと困るよ(笑)。

もしも、いつかBe-Nature Schoolがなくなったとしても、創成期にかかわらせてもらったのは大きなステップだった。それを踏み台にして伸びてきて部分もすごく多いから。

いろんなナチュラリストに会えたし、環境や自然の知識とか知恵とか幅ができた。自分のなかにいろんな視点が増えたね。今みたいな仕事をしてると、自然のことを知ってるのと知らないのとでは、ものすごく大きい違いがあるから。

Be-Nature Schoolにかかわるなかで覚えたものをプライベートや生活に生かしていくうちに、自然と自分の口からポロっと出てくるときがあって、そうなるともう、すっかり自分のものになってるってことなわけ。自然に近い暮らしをしているから、「あぁ、これってあの人が言ってたことだ。なるほど」っていうことがすごく多い。

学んだことは、そのままだと単なる「知識」なんだけど、本来それは、世代を超えるたびに変わっていかないといけない。それが「知恵」だよ。僕はそういう知恵につながるものを、その種をいっぱいもらえたなって。

これまでPRの仕事や飲食業もやったし、そのうえでBe-Nature Schoolで自然にかかわる経験を積んできた。そういう自分の経験は、絶対に消せない知識であり知恵なんだよ。今やってるネイチャークラフトにしても、アウトドア料理やキャンプにしても、これまでの経験をぜんぶフル活用して組み合わせてるだけ。

そうやって自分が積み重ねてきたことを、次の世代にどうやったら伝えていけるのかを実践してる。ときどきBe-Nature Schoolで講師をやらせてもらうときも、そういうものを伝えてるつもりなんだ。

(聞き書き・鈴木慈子、構成/編集・小島和子)

*以上3回をもって、どんぐり(長野修平さん)のシリーズは終了です。
次はどなたが登場するのか、どうぞお楽しみに!