剣持刀也という最高のエンターテイナーについて

 2020年2月13日 にじさんじJAPAN TOUR Shout in the Rainbow Zepp 福岡公演。

 あれやこれやそれで完全に脳みそがおかしくなってしまったのですが、このおかしな脳のまま、熱量のままを記録しておきたいので書いてしまいます。書かないときっといつかこの熱を忘れてしまうから……。


※剣持刀也の~と銘打っている割には他のお三方についてもまあまあ書いています。オタクの熱量100%の文章だから許してください。


にじさんじ所属元二期生剣持刀也。
16歳の高校2年生。剣道部所属の隠れまじめ系男子。
普段は周りと合わせてじゃれているがダメな時はダメという。
以前から他の人の配信を見るのが好きで、その憧れから始めた。
練習のしすぎで怪我が絶えないので、常に救急セットを持参している。
(にじさんじ公式HPより引用)


 分かりやすく端的に申し上げると、剣持刀也は私の「推し」である。


 剣持刀也は不思議な少年だ。ロリを求めているときは本当に気持ち悪いし、配信で敗北している様を晒してリスナーにゲラゲラ笑われていることも多い。彼は二期生出身というにじさんじのなかでもかなり古株の方だが、わりと頻繁に後輩からいじりを受けている様を見るし、剣持リスナーもそれを当たり前のものとして受け入れている。本人がそういう扱いを受けるように立ち回っている節もある。平たく言ってしまえば、普段の彼はヨゴレ側の立ち位置にいる。

 でも、剣持刀也はそれだけでは終わらない。彼は重度のロリコンで、敗北者で、弄られ役で、トークが上手くて、聡明で、可愛らしく、でも最高にかっこいい男の子なのだ。

 優等生らしくきっちりブレザーを着込んだ自称「普通の男子高校生」だが、圧倒的なパワーとかっこよさで万単位の人間を、我々を魅了していく。しかも、普段の「剣持刀也像」を壊すことなく。それは彼の持つ天性の才能と広い視野、デビューして2年経っても失われる気配のないリスナーとしての感性、多大な努力、そして彼の「愛」がなせる技なのではないかと私は思う。
 そうした「剣持刀也のかっこよさ」を大爆発させて数多のリスナーを真っ黒焦げにしたのが、2月13日の福岡公演である。


一曲目「誘惑」 剣持刀也

 はい来た切り込み隊長剣持刀也~~~~~!!!!!これはにじさんじから放たれた最初の弾丸ですわ。一瞬で会場が沸騰したのを、ネット越しでも感じられました。当然ネットチケット組の私も自室でペンラぶん回し。カウントダウン時点で「最初は剣持だろう」という謎の確信と覚悟はあったのですが、そんなもの吹っ飛ぶくらいめちゃめちゃ興奮しました。
 正直に申し上げますと、私はこの「誘惑」という曲を存じ上げませんでした。調べたら1998年リリースの曲でした。剣持よく知ってたな。どうやら友達がカラオケで歌っているのを聞いて「いいじゃん、これライブで歌お」と決めたらしい。
 しかし、曲を知らないというハンデ(?)は全く盛り上がりへの障害にはなりませんでした。

 初期から比べて明らかに上がっている歌唱力。完璧な煽り。にじさんじ初(下手したら業界初)男性Vオンリーライブの先発としてこれ以上無いくらいのパフォーマンスだったのではないでしょうか。がなりが上手いのとか流石剣道部としか言えないくらい肺活量・体力共にあるのは知ってたけど、高音のロングトーンとかあんなに綺麗だったっけ…?
 やっぱ絶対歌上手くなってる。剣持のストレートでパワフルな歌い方が個人的にとても好きなので、本当にぶち上がり大興奮でした。細かいところだと「言葉の棘に変わる」の「と」の発音凄い好きだった。あとやっぱりロングトーン。よくあんなブレずに綺麗な高音出せますね…。

 歌ってみたや歌枠を時系列順に聞いているとよく分かるのですが、剣持刀也はマジで歌を世に出す度どこかしら上手くなっているんですよ。彼からボイトレに行っただとか歌のレッスンに行っただとかを聞いたことはありませんが、どこかで練習はしているんだろうな…。
 剣持は結構才能の人扱いを受けることが多い(初期から上手いトークやプロレスはそうだと思う)けれど、間違いなく努力の人でもあると思います。にじくじでラップ失敗した後の話とか、マリカにじさんじ杯で参加ライバーのマリカの腕・配信ネタをほぼ全員分覚えていたこととかが如実に表わしているんじゃないかな。そしてそれをリスナーに見せない。なんで…? そういうかっこいいことされるとオタクって死んじゃうんだけど、わかんない?
 とにもかくにも、大熱狂の1曲目でした。


5曲目「雨とペトラ」剣持刀也&叶

 あのね~~~~~~~~雨とペトラめちゃくちゃ剣持に歌って欲しかったんですよ!テンポ早めで力強さを発揮できる、しかしどこか哀愁を感じさせる歌。バルーンさんの曲に多い。
 1曲目の感想で「剣持のストレートでパワフルな歌い方が好き」と書きましたが、この曲は少し落ち着いたというか、寂しさをはらんだ歌声がよかったですね。曲の雰囲気にとても合ってた。かといってパワフルさは失われておらず…。剣持、本当に曲に合せて歌うのが上手いな。「妄想の世の中で 日々を食らっていろ」のちょっと諦めたような声が凄く好きです。
 それから一緒に歌った叶君!剣持と叶君が表で絡んでいる印象はあまりなかったんですが、どつきあったりと仲がよさげで微笑ましかったです。そういえばイケボマリカでは結構プロレスしてた気もする。前日キャスの雰囲気もよかった。声も合ってるしペンラの色も可愛かったし、またこの二人で歌って欲しいな~~~~!!!紫陽花組認知されてて笑ってしまいました。
 剣持は一緒に歌う人に歌い方を合わせるタイプっぽいと思っているのですが、叶君とのデュオは彼に引っ張られてかやや声が甘くなっていたような。前述した歌の雰囲気とも相まって、新しい剣持を見たって感じでした。 

 叶君、剣持の新しい魅力を引き出してくれてありがとう!時間さえあればあなたの魅力についても3万字くらいは書ける。純情スカート凄かった。柔らかい雰囲気のまま会場を飲み込んでその場の全てを魅了してしまったのは本当に凄い。透き通った空気のまま熱量だけ上がっていく様の美しいこと美しいこと。シンプルに表現力が凄い。あと「湿るアスファルトを背にして俯いた」の歌い方好きすぎて20回は聞き直した。叶君にしっとりした歌詞を歌わせるとオタクが全員死ぬから気を付けてほしい。かといってかっこいい曲を歌われるとギャップで死ぬからダメ。前門のかなかな、後門のライトニングゲイボルグ。好きにならないのが難しい男。それが叶君。


6曲目「天樂」 剣持刀也

 言語化するの無理じゃない?ネチケ買って見てくださいお願いしますってわめき散らすことしか出来ないんですけど…。
 かっこよかった。本当にかっこよかった。剣持刀也×和ロックの組み合わせは最強。めちゃくちゃ合うって夢追翔さんも言ってたもん。歌詞もすごく合っているんですよね。「今打ち鳴らす衝動の刃が世界を砕く」「ぐしゃぐしゃに割れた音で構わない」めちゃくちゃいいな…。
 からのスーパーエアギタータイム。正直ちょっと笑っちゃった。微妙な動きのダサさが、ダンス慣れしてない男子高校生の質感があって大変よろしいと思います。なのに大事なところではかっこよく決めるからあいつはズルい男ですよ…。歌が上手すぎて全然意味がわからない。

 正直、初期の剣持の歌は本人の言う通り「カラオケ好きな高校生」レベルの歌だったんですよ。流石の声量と煽り力、緊張知らずな本人の性質でうまく盛り上げていたけれど、歌唱力単体に焦点を当てると超絶上手いと言うわけではなかった(それで客席沸かせてるから凄いんだけど)。
 2月13日の福岡に、「カラオケ好きな高校生」はいなかった。随分前からいなくなっていたような気もするけれど。そこにいたのは、確かな歌唱力で観客を沸かせる最高にかっこいい「剣持刀也」だった。他出演者やリポーターの夢追さんが絶賛していたのも納得です。天樂のラスト、ロングトーンで天高く拳を突き上げた彼を見て自然と涙が零れ落ちていました。推していて良かったと、心の底からそう思えた瞬間でした。言語化しきれない…見て欲しい…まだ5000円でネットチケット購入が可能なので是非見て欲しい…きっと人生が豊かになるから…。

 真っ直ぐで力強い、その名の通り刀のような鋭さで観客の心に斬り込む歌でした。剣持刀也、お前は最高だ。 


10曲目「ドラマツルギー」 剣持刀也&葛葉

 ああ!あああああ!あああああああああああああああああ!
 剣持×ドラマツルギーは剣持リスナー界隈で割とスタンダードな概念(?)だったので曲目の受け入れは早かったのですが、まさか葛葉くんと歌うとは…!
 剣持の声って、少年の声なんですよね。声変わりはもう終わっているのだけど、まだどこか不安定で青臭さがあるというか。良い意味で成熟しきっていない声をしていると思うんですよ。その声がドラマツルギーの我武者羅で挑戦的な歌詞とめちゃくちゃ合っていていい。同じく少年声の葛葉君と歌う剣持は等身大の16歳に感じます。
 Eveさんの作られる曲は凄くスタイリッシュでかっこいいんですけど、音域が広くて歌うのが難しいんですよ。ドラマツルギーもそう。なのにAメロも低音もサビの高音も、ファルセットすらめちゃめちゃ綺麗に出てて正直引きました。ヤンキーボーイ・ヤンキーガールやハッピーホロウと神様倶楽部で既に感じていたことではありますが、剣持刀也はとても音域が広い。ピアノか? 昔こんなに広かったっけ? Vになってまだ2年ですよね。成長速度エグくない? 竹ですか? 君は。

 それからね~~~~~!!!この曲を葛葉君と歌ったのもまた良いですね!「男性Vにおいて僕以上のポテンシャルを持つ」と葛葉君を評す剣持と、剣持について「配信に命を賭けてほしい」「勿体ないんだ、もちさん(剣持のこと)は」と述べた葛葉君。VTuber黎明期から男性V界隈を盛り上げ続けた剣持と、そんな剣持を尊敬し自身もまためざましい活躍を続ける葛葉君。互いに互いを意識し、にじさんじの男性Vとして顔的役割を果たすことも多いそんな二人が「ドラマツルギー」を歌う。個人的にドラマツルギーは泥臭い足掻きと挑戦を歌う曲だと思っているので、くずもち(葛葉君と剣持の非公式コンビ名。ファン内で頻繁に用いられる)がこの歌を歌ったことがめちゃめちゃ心にきました。しかもにじさんじ初男性Vオンリーライブで! いやー…〝エモ〟ですわ。言葉にならない。御託はいいから見てくれ…剣持あるいは葛葉君のファンなら絶対に後悔しないから…! 背中合わせやばかった!!
 「開拓者・剣持刀也」を感じられる良曲でした。正直この曲だけで5千兆円の価値があった。


13曲目「ねえ、どろどろさん」 剣持刀也&加賀美ハヤト

 ライブのラストブロック、熱狂を加速させるのに十分以上の役割を果たした曲だったと思います。アップテンポで勢いのある曲と、双方声量がありライブ慣れした剣持と加賀美さんのデュオ。画面越しにも、会場の熱が急上昇したのが分かりました。ライブならではの組み合わせって感じで良かったしね。
 大人の男性である加賀美さんと並ぶと、剣持の少年体型が強調されて良いですねえ。彼の身長は172cmと決して低くないのですが、182cmで成人されている加賀美さんと並べるとやっぱり小さくかつ幼く見えます。めっちゃ良いな。あと、加賀美さんに引き摺られたのか動きがちょっとスタイリッシュになっていて笑ってしまいました。1番サビラスト「忘れさせてよ」の後の腕の振り下ろし方めっちゃすこ。
 それから、この曲で改めて剣持の歌唱力の成長具合を感じました。加賀美さんって、多分お歌ガチの方だと思うんです。いろいろな方のボイトレを引き受けていらっしゃって、「にじさんじの歌唱力を底上げしている」なんて言われているし。ライブの慣れ方も明らかに頭一つ抜けていた。歌唱力は言及するまでもない。その彼に剣持がガッチリ食らいついて並び立っていたのが本当にびっくりしました。これに関してはクロノワール(葛葉君と叶君の公式ユニット)のお2人もそうなのですが…。元々歌ガチの人に、そうではない剣持とクロノワールが遜色なく並び立っている。リスナーの見えないところで、きっと途方もない努力をしてくれたんだろうな。そう思うと、大盛り上がりでペンライトを振りながらも涙が出そうでした。というか泣いた。

 「ねえ、どろどろさん」のラップパートは剣持が担当していたのですが、凄いかっこよかった!がなりが凄え。歌だけじゃなくてラップもどんどん上手くなるなあ。
 「その血は誰のなんだっけ」「ご褒美は何処に行ったっけ」の色っぽい歌い方、「魅惑の白昼夢に沈めアンダーグラウンド」「でも手が届かない」等サビのパワフルな高音、自然とノってしまう煽り。勢いの中にきっちりメリハリが効いていて、あっという間に熱狂の渦へと巻き込まれてしまいました。ハモりも綺麗なんだこれが…。技量と勢いの両方を備えている感じ。2人ともライブ慣れしているからでしょうか、観客を巻き込む力はこのデュオが1番だったなと思いました。
 大人の加賀美さんと一緒だからか、少年感の強い剣持が見られて新鮮でした。彼自身も「加賀美さんくらい大人の方と一緒だと安心して任せられる」と言っていましたしね。また見たい組み合わせ! 相性も良さそうだし、いつか歌以外でもコラボしてくれたらオタクは死にます。
 ライブの良さと剣持の成長が1番感じられる曲でした。あと剣持の華奢さが分かりやすくてオタク的にとてもよかったです。


16曲目「Peacock Epoch」 全員

 某歌い手4人組様のお歌です。詳しい説明は省きますが要するに女オタクが皆死ぬやつです。しかしピコエポのイントロが流れた瞬間、私は不安になりました。「剣持、お前とうとう媚びるのか…?」と。
 この不安自体、実は福岡公演のメンバー発表がされたときからありました。クロノワールに女性ファンが多いのは言うまでもなく、加賀美さんも乙女ゲームに出てくるような容姿に声と超絶歌唱力をお持ちです。当然女性ファンも多いとお見受けする。
 一方剣持。甘い言葉を吐いてみればコメント欄は「は?」で埋まり、(自称)イケボを出せば「ヴォエ!」で埋まる。ASMRはしねえ。ボイスは出さねえ。女性ファンの割合が特別低いとは思いませんが、「きゃー!剣持く~ん!」的な需要は他のお三方に比べかなり低いように思います。本人も「媚びない」と公言してはばからないし。
 私は剣持がいわゆる最推しですが、抱いているのはアイドル(異性)に向ける好きではないのです。私の中で彼の分類は「一番好きなエンターテイナー」で、向ける感情は面白いなあとか、尊敬とか、そういう類いのものなのです。もちろん推しがライブに出るのは本当に嬉しい。ライブに出る度に彼は心地良い興奮と最高のかっこよさを見せてくれるから。でも、いわゆる媚びと呼ばれる行為をすることは、普段の配信も含めて一度もありませんでした。私が好きになったのは、「媚びない」を信条としエンターテイナーたる姿のみを見せてきた剣持刀也です。この福岡公演で万が一「媚びない」という彼のアイデンティティが失われたとき、私はまだ彼のことを変わらず好きでいられるだろうか? ライブを心から楽しみにしつつ、そういう不安をずっと拭えずにいたのも事実でした。
 そして来たPeacock Epoch。叩きつけられた「俺にしとけ」。そしてトドメのウインク。


 や………………あれで興奮しない剣持のリスナーいますか?????
 分かっていました。分かっていたんです。彼が曲やその場の雰囲気に合わせて変容するのが上手いことは。自分の魅力がどうすれば最大限に引き出せるのか、誰より理解していることは。剣持刀也は「剣持刀也」を演じさせたら右に出る者がいないということは。直前の配信でも言っていましたのもね。「演じる」と。「かっこつける」と。

 最速感想放送での加賀美さんによれば、剣持は当初ピコエポを歌うのをちょっと渋っていたそうです。そりゃそうだ。媚びないが信条な上、彼は高校生でお年頃の少年。バリバリのオタク殺す系かっこつけ曲に気恥ずかしさを感じても当然でしょう。
 正直、「俺にしとけ」のターンで「俺はやめとけ」とかなんとか言ってふざける選択肢はあったと思うんです。剣持のキャラ的にある程度面白くなっただろうし、リスナーが「剣持媚びろや!」と笑って終わったでしょう。それでも歌ってくれた。全力でかっこつけてくれた。我々リスナーに媚びへつらうためではなく、リスナーが熱狂し興奮できるように演じてくれた。オタクの喜死ポイントをよく分かっていらっしゃる。スナイパーかお前は。天才だよ。
 媚びるとは「他人に気に入られるような態度をとる」という意味。あの時「みんなが喜んでくれるなら」と恥ずかしさを飲み込んでくれたあれは、決して媚びではありませんでした。あれはファンサ、あるいは愛です。
 剣持刀也は常々言っていた。「媚びとファンサは違う」と。
 あの言葉の意味を現実として叩きつけられたのがピコエポだった。「俺にしとけ」? は? 俺にしとけも何も最初からお前だけなんだが…?

 それはそれとして剣持のサジェストが「媚び」「束縛」で埋まっているのは面白すぎるので加勢します。
 剣持! 媚び! 束縛! ボイス出せ!! ちゃんと体調労れよカス!!

 「エンターテイナー・剣持刀也」の気概と本気を見せてくれた曲でした。刀也、俺と太平洋になろう。


アンコール「Virtual to Live」 全員

 泣いちゃった。言葉にならない。Virtual to Liveのオリジナルメンバーに剣持がいたときも馬鹿ほど泣いたのですが、今回のライブではその倍泣きました。Virtual to Liveを歌う剣持の声が頼もしくて頼もしくて。「大丈夫と明日の誰かに言えるように」でボロボロでした。
 反して動きがわっちゃわちゃで可愛かったですね。あれはほとんどアドリブらしい。誰かの前を通るとき、必ず中腰で小走りに駆けていく剣持が可愛い。小動物かな?
 男性だけのVirtual to Liveは新鮮で良いなあ!オリジナルは女性9人、性別不詳1人、男性2人なのでだいぶ雰囲気が違いましたね。オリジナルは軽やかで華やか、雨上がりの虹って感じでしたけど、福岡公演版は安定感が強かった。虹というよりは大樹だったな。オリジナルの剣持は女性(同期の森中花咲さん)と歌っていることもありかなり優しい声でしたが、福岡公演では力強さが際立っていたように思います。前述の通り頼もしかったし、やっぱりかっこよかった。それぞれに違った良さがあります。

 それから、Virtual to Liveを語る上で外せない、Cメロの「遠く遠くに叫ぶ」という歌詞。オリジナルバージョンでは月ノ美兎さんと樋口楓さんが担当されている、この曲の肝と言って良い歌詞。根拠もないのに剣持がこの歌詞を歌うと確信していたのですが、本当に歌われたらめっちゃ心がダメでガチ号泣してしまいました。
 しかもこの歌割、スタッフさんが「ここは剣持君しかいない」と言って割り振ってくださったそうです。感謝…。それを剣持が「嬉しかった」と言っていたのも印象的でした。上手く言葉に出来ないのですが、このことについて嬉しかったと素直に話せるところが、剣持が大勢の人に愛されている大きな要素なのではないかと思います。
 月ノさんに憧れてにじさんじに応募した、月ノさんと樋口さんが両国で歌うのを後から見ていた、ずっと男性V界を引っ張っていた剣持がここを歌うの、本当に…言葉にならないよ…。そうだね、ずっと叫んでいてくれたもんね。ありがとう。しっかり聞こえました。きっと一生忘れないからね。
 剣持の「遠く遠くに叫ぶ」が映像として残らないと思うと気が狂いそう。運営さん、各公演のVirtual to Liveのみを収録した円盤とか出しませんか? 絶対めちゃくちゃ需要あると思うんですけど…。
 アンコールにふさわしい、ありがとうの気持ちで満たされる歌でした。



 本当に、本当に最高のライブでした。ライブ当日から何回タイムシフトを振り返ったことか。剣持だけでなく、叶君も葛葉君も加賀美さんも、それぞれ最高にかっこよくて魅力的なパフォーマンスを見せて下さいました。
 透明で優しい空気のまま見る人皆を魅了した、叶君の「純情スカート」。
 かつて「歌は苦手だ」と言っていたにも関わらず、急成長した歌唱力と綺麗なハイトーンで熱狂を巻き起こした葛葉君の「The Day」。
 初披露曲のはずが圧倒的な歌唱力と言葉を失う完成度で、すぐさま会場を掌握した加賀美さんの「Pierce」。
 ライブならでは。この2人でなくちゃ! どちらも味わえる数々のデュオ。
 どこをとっても、最高以外の言葉が見つからない時間でした。

 MCパートも良かった。最早当たり前のように剣持が司会を務めていましたが、それが「当たり前」になるまで剣持が積み重ねてきたものを想うとオタクは泣いてしまいます。相変わらず喋りがうめえんだ剣持は。


 コール&レスポンスでの

剣持「ロリー!」
会場「…………」
剣持「は?」

 のくだりで咳き込むほど笑った。その後帰ろうとして3人に止められたのも笑っちゃった。あれを恐れずZepp福岡でやるの剣持くらいでしょ。ライブでロリを求めるな。ヴォエ!

 即興劇パートは地獄の名産地・緑仙さんを崇めることしかできない。「剣持さんがZepp福岡で東京○3みたいなコントの入りとツッコミをするのが見たかった」と仰っていましたが、マジでそれ通りのものが見られて本当に良かったですね!オタクも良かったです。緑仙さん、「ツッコミに剣持さん置いておけばなんとかなるでしょ」って思ってませんか? たぶんその通りです。剣持は世界一の名レシーバーなので…。
 あとはアンコール後のMCパート! ピコエポで「禁忌を犯した」と恥ずかしがる剣持にはたいへん趣がありましたね。自分で媚びって言ってるの笑っちゃった。オタクは誰も媚びだとは思ってないぞ。媚びそれ自体より照れててるその後の反応に興奮してるんだぞ。分かってるのか剣持。
 MCパートも、全て書き切れないほど笑いと見所で溢れていました。




 ライブ終了後、剣持はTwitterでこんな呟きをしていました。

 最初から最後までずーっと楽しかった。
 本当に良い時代になりました。

 そうだね。
 私は2019年夏頃から剣持を追いかけ始めた新参ファンだから、本当に理解できているわけではないでしょう。でも、アーカイブを追ったり、古参ファンの友人の話を聞く中で、VTuber黎明期はだいぶ男性Vの肩身が狭かったのはなんとなく理解しています。その中であなたが努力してきたことも。あなたの努力で築かれた物があることも。私がにじさんじを追い始めたとき、既に男性Vが当たり前に各所で活躍していたことが、少なからずあなたの功績によるものであることも。推しの贔屓目かもしれませんが、私はそう思っていますし、少なくない先輩にじさんじリスナーの方があなたに感謝しているのも見てきました。
 だから、あなたが「良い時代になった」と感じているなら、それはあなたの努力が一つの礎になっているのではないかと思います。良い時代に「なった」のではなく、あなたが、あなた達が、良い時代にしてくれたんでしょう?
 本当にありがとう。感謝してもしきれないくらい、あなたにありがとうと伝えたい気持ちでいっぱいです。




 剣持刀也は不思議な少年だ。ロリを求めているときは本当に気持ち悪いし、配信で敗北している様を晒してリスナーにゲラゲラ笑われていることも多い。彼は二期生出身というにじさんじのなかでもかなり古株の方だが、わりと頻繁に後輩からいじりを受けている様を見るし、剣持リスナーもそれを当たり前のものとして受け入れている。本人がそういう扱いを受けるように立ち回っている節もある。平たく言ってしまえば、普段の彼はヨゴレ側の立ち位置にいる。

 でも、剣持刀也はそれだけでは終わらない。彼は重度のロリコンで、敗北者で、弄られ役で、トークが上手くて、聡明で、可愛らしく、でも最高にかっこいい男の子なのだ。

 始まったばかりのVTuber界・男性V界を引っ張って、その成長に大きな貢献をし、様々なイベントで所属企業の顔として役割を果たし、2019年年末に行われたにじさんじの両国ライブでトップバッターを務め、続く全国ツアー福岡公演───にじさんじ初の男性Vオンリーライブでもトップバッターを務めて。何千、何万人の人間を魅了し続けている。優等生らしくきっちりブレザーを着込んだ「普通の男子高校生」が、だ。なんてワクワクする話だろう。なにしろこの少年は現実の存在で、あの日我々の前で圧倒的なパフォーマンスを見せてくれたのである。

 きっと、並大抵の努力では為し得なかったことだ。彼は全然、努力している様を私達に見せてはくれないけれど。歌一つ取ってもそう。何もしないまま、たった2年であんなに歌が上手くなるだろうか? 何一つ語られていないから断言できないけれど、きっと少なからず練習を重ねてくれたのだと思う。
 そうやって努力して、私達リスナーを喜ばせたら、彼は満足げな顔をするのだ。「皆さんが喜んでくれたならよかったです」と。これを愛と呼ばずして何と呼べば良いのだろう。剣持の魅力の1つはこういうところだと思う。誰かを喜ばせたことを喜んでくれる。根っからのエンターテイナーだなあと、尊敬せずにいられない。


 にじさんじ唯一の男子高校生で、にじさんじから放たれた最初の弾丸で、最高のエンターテイナー。そんな剣持刀也の「かっこよさ」と「愛」を最大限に感じられるのが、2020年2月13日 にじさんじJAPAN TOUR Shout in the Rainbow Zepp 福岡公演だった。剣持リスナーのあなたにも、そうでないあなたにも、是非見て欲しい。全て見終わったその時、あなたはきっと、あの少年のことが好きになると思うから。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?