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わたしたちは祈られるのを待っている

※『犬王』初鑑賞から10日ほど経ったときの自分用メモです。

映画『犬王』を観ました。

たいへん素晴らしくてずっと頭から離れません。

観終わった直後から
居ても立ってもいられない衝動に駆られて、

書籍をそろえたり応援上映に行ったりと、

久々に脳がビリビリする物語に出会えて
感無量のひとことに尽きるオタクになっています。

で、
そろそろ感想を残しておかないと

と思ったけどどうしよう、
なにから書けばいいのか全然わかりません!

とにかく心奪われ、
10日前の夜に映画館を出てからずっとポワ〜として過ごしています。

軽率な初鑑賞の思い出


そう、まだ10日前なのよね。


ここから書けばいいのか。


『犬王』という作品のことは
なんかの映画を観に行ったときの予告編で見かけて、

へー歴史モノねぇ映像もいい感じ、

と思って脳内の観たいリストに入れていました。

そして10日前、
公開から3週間あまりも経っているタイミングで、

なんで観たいと思ったかとかまったく思い出そうともしないまま、

とりあえず都合のいい水曜日が来たので映画でも…と思い
(わたしはなるべく水曜日に映画に行きます)、

19時すぎの回で鑑賞することにした、

ら、!!!!!

すっっっごいものを観てしまった、と、
いまだ衝撃のさなかにあります。

初見で観てる途中はだいぶ

なんだこれ???

だったけど、いまでは

なんだこれ!!!!!!!(すき)

です。

友人が数日前に観ていた旨のツイートを読んでおり、けっこう

考えるな!感じろ!系かと思っていて、

説明が最小限だったこともあり
(最後までみるとわかるようになってる)、

異形の理由から始まり室町時代に鳴り響くエレキギターの音まで、

えっやっぱこの映画ぜんぶバイブスで乗り越えろってこと……?

となっていました。

そうそう思い出してきた、
はじめだいたいわけわかんなかったね、、うふふ

でっかいでっかいでっかい鯨ってなによ?となってましたね。

(腕塚はだいたいこういう話かなー?がわかったけどでっかい鯨はまじでわからんかった)

率直にいえば初見では、

 そこそこ頭を使い、主体的な理解を求められることがうれしい。
平家物語と室町時代の歴史の両方についてなんとなく思い出しながら、
呪いの構造や歌詞の内容など状況を把握するむずかしさが楽しい。
(能における観客の自律的な理解についてはユリイカの誰かの文章にもあった)(確認してから書いて)

肉体的にも精神的にもたいっへん色気がある。
半裸姫カット能面マッチョ猿楽師と露出の激しいグラムロック琵琶法師が互いのために行動した結果彼岸と此岸に分かたれ、
猿楽師が琵琶法師を死後600年間探し続ける、のだ……(なにいってるかわかんねーと思いますが)。

という2点、
つまり否が応でも理性と本能を同時にフルスロットルで全開にさせられる、パワー!

みたいなものにボコボコにされたので、

興奮しました。

というか、いま言語化してはじめて気づいたけど
わたしは理性と本能を同時に揺さぶられるのが好きなんですね。

(だから歴史モノがすきなんだね、、)

①については、
追いかけようと思ったら
平家物語、室町時代、能楽の歴史、元ネタのロック、もちろん作品自体の絵や台詞や曲、など、
このあといくらでも追いかけられるのがよいです。

知的好奇心が旺盛なので
知らないことが多すぎる!となるのは
ワクワクします。たのしい

そしてオタクなので徹底的に調べてしまう。
やですね。

『天智と天武』(ていう漫画)のときもそうだったけど、
知るのに時間がかかるやつだと
二次創作に手を出さずに済み、比較的安寧。

ただし人生がいちばん狂うのもこのタイプのハマり方。
人生が狂わされてゆくことすら快感で、
たいへんタチが悪い。


②については、以下実際の鑑賞直後のツイートみてください。

日頃の行いによって誰も信じてくれないと思いますが、ほぼ情報入れないで行っちゃったのでこんなにエッチな映画とは思いませんでした!!見終わって2.5時間ぐらい経ってるけどずっとかんがえてしまいますね

出ていくとき前歩いてたおねえさんが歯並び悪いのよい、のようなことあったのであれはエッチ演出だったのか、、となりました 人には人の性癖 私は姫カットの面(??)が好きすぎてつらかったです

考えるな感じろ系かと思ったけど全然クソデカ感情だった

ボブカットはジェネリック姫カットなのかもしれないと思いながら帰った
出典 わたし

能面姫カットに食らいすぎている。

個人的にあの姿が至上の美すぎて、
でも作品的にはまだ美を得る過程にすぎない姿なので、
文脈理解できてるのに身体がついてってないというか、
ヘンタイはこれだからだめだな、とおもいました。

あと素敵なクソデカ感情への至上の褒め言葉は「エッチ」なのですね。(よくない)

「男が男を600年探した」事実に骨抜きになってるオタクの方のツイートとかみて、
ほんっとに、そうッ!!!
と叫んだりもしました。

(男同士の絆ソムリエとしては、このふたりは限りなく強い友情タイプの結びつきかなと思います。犬王氏はアセクシャルぽいし、友有氏はめちゃめちゃに女遊びしているんだろうなーと。てかしててほしいなーと。)

その後わたしは丸1日ほど魂抜かれたみたいな顔して生きて、

そして、
木曜日にメイキングブックをポチり、

聖典

金曜日に小説を買い、一瞬ですべて読み、

買いに行った足で読破

日曜日にマンガミュージアムの展示に行き、ユリイカ湯浅監督特集を買い、

終わる直前だった


月曜日に応援上映に行きました。

超〜たのしかった

怒涛!

こう、
いろいろインプットして解像度を上げることに執心し、

現在、まあそこそこ理解したわ!
となったあといちばんにいいなあと思うのは、


これが

報われないものたちへの鎮魂歌

だというところ……


くるしいです。
最高すぎて。愛。

ほんとにわたしは報われないで生きてきたと思っているし、

ある意味、その姿かたちの醜さ、欠落、
いろんなものに奪われて、打ち負かされてつらかったこと、

ああすごくわかる、と思うし、
たぶんだいたいのひとはそうなんだと思います。

報われないだろ。たぶん。

友有氏も「俺らに似てるアイツ(=犬王)」と歌ってるのでそういうことです。

そんなわたしたちに向かって呼びかけてくる彼らの声に涙のツボを激押しされては、

ふたりが生きること、祈ること、信じること、

すべて美しくて!
幾度でもふたりの物語を体験したくなってたまりません。

生きてていいよと言ってもらえたことがない(というより言ってもらえたと思えたことがない)ことに気づいたその日から、

除霊する推しをみて死を肯定されることが生を肯定されることでもあると気づいたその日から、

わたしはこういうものに出逢えばよかったのね、

と満ち足りて、

正直うっかり成仏しそうです。


わたしは、

わたしたちは、

祈られるのを待っていたのか……


こんな感じなので、
サウンドトラックでおおよそ映画の追体験ができてありがたいです。
聴いて、そして何度でも生きて、何度でも死んでいます。


報われないものたちの痛快なサクセスストーリーは所詮、歪なものたちの一時の成り上がりでしかなく、

諸行無常、栄枯盛衰、

儚く消えてゆきます。

悲しいけれど、
権力に踏みにじられて散った彼らを想うときの心の痛みはこの上なく甘美です。

オタクでごめん……

そもそもわたしがみずからの心が傷んでいる状態に

安定を、正しさを、
それゆえの心地よさ、までも

感じるのは虐げられて生きてきたからだと思ってるんですが。

(やっぱり救われるべきでしょう、こんな人間、、)


そう、あとですね、

なんでじぶんが京都に来たのかというこの3年半のつらさへのアンサーでもあって、運命。

去る前に彼らがいた場所をたくさんみたいです。

暑くなかったら好きなだけ行けるのに、
東北の女は西の盆地のなかでゆだっているのが心苦しい。

でも、行く!

あとわたし壇ノ浦に行こうと思ってます。
(すぐ好きな男(たち)の地元をみたがる女)

書きたいこと全然書ききれてません。

浮かぶたびにすくってゆきます。
また。
絶対

数年前に行った金閣

おわり

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