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吉備サラブリトレーニングさんを訪れて

先日の10月7日に岡山県吉備中央町にある吉備サラブリトレーニングさんへ施設の見学を兼ねてお話を聞きに行ってきました。
そこで聞いたざっくりとした内容は既にツイッターの方に書いたのですが記録的な意味合いも含めてnoteにもまとめておこうと思います。
(吉備サラブリトレーニングがどんな施設なのかについてはこちらのHPをご覧ください)

・まず引退したサラブレッドのリトレーニングとは何かについて
吉備サラブリさんのHP内の活動内容の項目を見てもリトレーニングというものがどういった事をしているのかについて記述がないため、ぼんやりとしたイメージで「競走馬から乗用馬になるための再教育」「またはセラピー馬になるための再教育」という事しかご存じない方もいると思います。
ちょうどタイミングよく10月13日に行われるリトレーニングセールの告知動画が先日公開されたみたいで、その動画内にトレーニングの様子も紹介されていたのでご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=85o3pBWgI3Y

・最近よく耳にするグランドワーク
 吉備サラブリさんが行っているリトレーニングのひとつとしてグランドワークというものがあります。
これは馬にブルーシートをかぶせたり、目の前で傘をバッと広げたりしても動じない馬にするための訓練です。
文章にしてしまうと簡潔すぎてグランドワークの凄さが伝わりづらいのですが、本来、馬というのはとても臆病な生き物です。
物音や周囲の突然の変化に驚いてパニックになる事は馬に詳しくない人でも知っていると思います。
何も障害のない場所でとにかく速く走るという事を教え込まれて来た馬にしてみると、横たわった木でさえ最初は怖がるそうです。
ですが、このリトレーニングを根気よく行う事で子供が安全に馬に餌やり体験が出来たり、セラピー馬として触れ合える馬に生まれ変わるそうです。

・馬の再就職先は様々
 競争生活を終えた馬が種牡馬や繁殖牝馬への道に進む事についての説明は割愛。
一般的に今現在、引退馬支援の方向として大きく分けると「繁養牧場で穏やかに過ごす」「乗用馬や馬術の障害馬に」だと思うのですが、その他にもセラピー馬、観光地でのふれあい馬などがあります。
最近で言えば岩手のジオファーム八幡平さんの取り組みで知られてきましたが、馬の堆肥での野菜作りでの活用もありますし、福島県南相馬市で行われる伝統行事の相馬野馬追の馬達もその多くは元競走馬です。
そんな中で吉備サラブリさんから聞いた話で、これはと思うものがありました。

・災害救助馬について
 大雨や土砂災害等で道が塞がれてしまい、車は通れないが馬1頭なら通れそうだという道が出来た場合に
支援物資や人の運搬に馬が活用できないかと研究(リトレーニング)が吉備サラブリさんのところで行われています。
事務局の方とお話をしている中でさらっと出て来た話なのであまり詳しくは聞いていないのですが、馬場に障害物を置いて倒れた木に見立てて歩かせる等のリトレーニングだそうです。
この災害救助馬というものが実際に成功するのかどうかについては分かりませんし、まだまだ先の話だとは思いますが、色んな方向から馬の活用について考えてるんだなと印象に残りました。

・荒ぶる気性
 今回、吉備サラブリさんのところへ実際に訪れて聞きたかった話のひとつでもある元競走馬の気性について、というものがあります。
穏やかでのんびりと優しそうなイメージのある馬の姿、それはもちろん間違っていないのですが、サラブレッドという馬は非常にイライラカリカリしやすく人に噛み付いたり蹴ったり暴れたりすることも珍しくはありません。
競馬の調教に携わっている方からはそういった側面の話はよくツイッター等でも書かれていると思います。
そんな気性の馬について吉備サラブリの事務局の方に「これはちょっと手に負えないぞという荒くれ気性の馬が来たときはどうされてるんですか?」と質問をしてみたところ、こんな返答を頂きました。
「基本的に元競走馬って皆、もうどうしようもないくらいの気性ではあるんですけど(笑)ただ、そういった馬達をリトレーニングするのが仕事ですから。それに、リトレーニングをしていくと、あれだけ暴れてた馬がこんなに優しくなるの?あんなに人を寄せ付けようとしなかったのに、自分から頬ずりしてくるくらいになって、ほんとに同じ馬なの?という例を何頭も見てきました。馬には無限の可能性を感じます」と。
これはリトレーニングの現場でずっと馬の変化を見続けているから言える事だと感じました。

・吉備サラブリトレーニングの見学について
 先日、吉備サラブリさんのHPにて重要なお知らせとしてアナウンスされた内容の一部に見学についての改訂という項目があります。
その他にも吉備サラブリさんの現状などについても書かれていますので、是非みなさんご一読下さい。
「吉備サラブリトレーニング重要なお知らせ」

・NPO法人であるがゆえの苦労
今回、お話を聞きに行って驚いた事ですが
対応していただいた事務の方はボランティア。理事長の西崎さんとの実質2名体制でサンクスホースプロジェクトに関わる事務作業や色んな事を対応しておられるそうです。簡潔に言えば人手不足。そしてリトレーニングの施設(馬場、馬房、再教育を行うスタッフ)などは岡山乗馬倶楽部さんに委託のため、そのお金も毎月必要なのだそうです(吉備サラブリさんの事務局は岡山乗馬倶楽部さんの敷地内の一角にあります)
また、NPO法人は利益を上げてはいけない団体ですので資金難というのも常につきまとう問題だそうです。

・運営資金について
ツイッターでも軽く書いたことですが、おそらくTCCに入会すればサンクスホースプロジェクト全体に寄付金が渡ると思われてる方が多いと思います。
私も当初、この資金の流れがとても分かりづらく何をどうするのがベストなのかが分からないため、吉備サラブリさんに直接聞きに行きたかったというのも、今回、見学に向かった大きな理由でもあります。

まずこの図なのですが(吉備サラブリさんのHPから引用)

これを見る限りTCCさんへの寄付金が吉備サラブリさんに渡り、リトレーニング費用などが賄われているのではないかという印象を受けます。
そしてそれは厳密に言えば間違いではないのですが、その流れてくる金額というのは微々たるものであり、吉備サラブリさんを大きく支えるものではありません。
吉備サラブリさんの重要なお知らせの中でも書かれていたように、基本的に運営資金の大半は吉備中央町による「ふるさと納税」です。

そしてこちらの図(サンクスホースプロジェクトHPより引用)

サンクスホースプロジェクトHPの「私にできる支援」というページのトップに出てくるのですが、
引退馬ファンクラブTCCの記載はあっても、その他の団体名の記載はされていません。
どういう事かと言うと、「2 ふるさと納税」は吉備サラブリトレーニングの活動資金、「3 寄付」はホースコミュニティの活動資金となり、同じサンクスホースプロジェクトの中でも支援金の送り先は別々なのですが、団体名が記載されていないため、この部分だけを見るとTCCに寄付金が集まりやすいHPの作りになっているなと思います。
同じプロジェクトで協力していると言っても、それはパートナーであり別の組織なので寄付金の送り先もそれぞれ違うというわけです。

・まとめ
今後、引退馬のセカンドキャリアを考える際に吉備サラブリトレーニングさんのような「リトレーニングを行う施設」というものはとても重要になってくると思います。
今までのような乗用馬になるためだけの再教育ではなく、他にも色んな可能性があるのではないかとお話を聞いて実感しました。
スッタフさんも日頃から愛情を持って管理している馬と接しているのが伝わってきましたし、とても為になる体験でした。

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