見出し画像

smc PENTAX-FA MACRO 100mmF3.5について

 表題のレンズなんですけど、なんかやっすく売ってて「なにこれ?」と思った一本でした。
 いやわかるんです、マクロの安い方ですよ。ミノルタにも50mmF2.8等倍マクロと50mmF3.5ハーフマクロがありました。
 PENTAXのFAマクロ100mmF2.8はがっちりした600gもある大型レンズで、ワンスペック落としても小型軽量化したのもラインナップしたいと、それもわかる。
 これはF3.5のハーフマクロに落としたおかげで、重量は220g。軽い。

 写真を見てもわかる通り、なんというか他のFAレンズと佇まいがぜんぜん違う。鏡筒の材質もそうだし、絞り輪のA位置ロックボタンなんかPENTAXはこんなのにしない……というかこれコシナっぽい。
 OEMみたいですね。コシナ版を紹介するblog記事がありました。2005年頃に実売二万円の格安マクロとして、コシナDIGITAL MACRO AF100mmF3.5と名を変えて再発売されたようです。

 PENTAXは最近でも時々他社レンズをOEM供給してもらってPENTAXブランドで売ってるんですが、それにしても鏡筒デザインとかはPENTAXに寄せるのが大抵で、見た目だけじゃよくわからない。この頃だとこれだけPENTAXっぽくないデザインのままで売るんだなあ。
 他にもたまにあって、輸出向けのsmc PENTAX-FA 28-80mmF3.5-5.6 ALというのはタムロン277Dっぽいし、FA 28-105mmF4-5.6[IF]も見たところ179Dっぽいのが見た目で隠れてない。

画像1

 ただ、タムロンは機能に応じたデザインをしてるから、ズームリングをかなり幅広に取る癖からタムロンっぽいだけで、別に不自然じゃない。
 ところがコシナときたら、ズームリングなんかないのに、ピントリングとは別の謎の滑り止めを切ってある。うーん、まあ、レンズ着脱時の指掛かりかもだし、実際そのように機能するっちゃするんですが……なんか、ここがローレットになってないとズームじゃない単焦点だとバレるから装飾つけたって気がしなくもない。
 昔の安物の家電とかって、機能と特に関係ない装飾を施してしまうのがよくあったでしょ。あれっぽく見える。

 つやっつやのチープな質感のプラ外装といい、見るからにチープだし実際安いんですけどね。コシナのだったら新品二万円しなかったそうです。PENTAXブランドだともうちょっとするのかな。

画像2

 で、使い始める前に軽く清掃してたら、レンズ先端のパーツが外れた。
 ねじ込みが緩んだのかな? と思ったら、接着剤で止めてあるのが劣化で剥がれてました。Oh……。
 外れた下にネジが3本あって、多分分解清掃ならこのネジにアクセスできなきゃいけないな、と思ったんですが、私は分解とかほとんどやらないので、再度接着剤で止めておきました。

スペックなど

画像3

 最大径68mmの全長71.5mm、重量220gと軽快。
 PENTAXのAFレンズには105mmF2.8あたりがないので、軽快な中望遠がほしいとコレってことになっちゃいますね。

 レンズ構成は4群5枚とシンプル。
 小構成レンズは、完璧に収差を補正し尽くしたパリパリの写りってなものにはなりませんが、抜けがよかったり、光学的欠点が味わいになったりするもんで、ちょっと期待高い。

 マクロといってもハーフマクロなので、倍率は0.5倍。ライカ判で72x48mmが、APS-Cで48x32mmが画面一杯に写ります。
 最短撮影距離は43cm。
 まあ私は等倍マクロのFA50mmF2.8を持ってるんで、特に100mmF3.5を使うならワーキングディスタンスを長く取りたい場合なんで、そこで使い分けができるかな。

 発売は1998年で、フィルム用にしてもかなり後の方。
 あんまり力が入った製品とは思えないんですが、軽量マクロとお手軽ポートレートレンズを兼ねる、すぽっとラインナップの穴を埋める感じもしますね。当時の人はタムキュー買ってた気がするけど。

実写

 最初、室内で1mくらいの距離で撮ってたらずいぶんピントがずれてて、カメラ側のピント補正でかなり調整したんですが、それから昼間に外に持ち出したらなぜかまだ怪しい。
 で、ピント補正をし直したら、初期値でだいたい良いくらいに見える。
 なんだか機嫌が読めないレンズで、ちとピントが甘いカットが結構出てるかもしれません。

 それから室内でちょっと試し撮りして、開放近くでは少し軸上色収差が出るようで、白黒の文字とかを取ると色ズレがありました。
 F5.6でだいたい解決するようだったので、今回の撮影もF5.6が多いです。

画像4

 FAレンズだからデジタル補正は効かないんですが、APS-Cでは微妙に隅が甘いかな、と思うくらいでまずまず整った写り。歪曲もほぼ感じない。
 カリカリにシャープだと思える感じではないんですが、F5.6だと全体がソツなく安定した写りですね。

画像5

 最短ではないですが、近接のF3.5での写り。
 近接なら開放でもなかなかシャープに写ってます。
 前ボケはどうやらリングボケになるみたいですが、その分後ボケがスムーズ。扱いやすいボケかも。

画像6

 口径食は開放だとある程度出ますね。
 F5.6なら欠けはなくなるんですが、見事に八角形の玉ボケになっちゃいます。

画像12

 それから、他の方の作例を見てたら、かなり強烈なぐるぐるボケが出てるカットを見かけました。ということはコマ収差があるはず。
 試しに絞り開放でこういうカットを撮ってみると、たしかに隅の方でちょっと彗星型に流れてるのが一応わかる。大したことはないと思うけど。

 Helios 44とかでわざとぐるぐるボケを出すときは、「絞り開放、ピントはできるだけ近接で、背景は遠い」という状態を作るもんですが、同じようにやれば出るかも……というか、マクロレンズなんだからわりとよくやっちゃいそうなシチュエーションですね。そのうち遭遇しそう。

画像7

 公園の野良猫には中望遠がいいんですが、APS-Cでライカ判換算150mmは余裕のワーキングディスタンス。
 白黒の猫って、軸上色収差が出るレンズで撮ると、黒地のところに飛び出す白い毛に色がつきまくっちゃったりするんで、このレンズだとちょっと警戒が必要ですね。F5.6だからちゃんと抑えられてますが、開放だとちょっと厳しいかも。

画像8

 ちょい絞りでもカリカリにシャープになりすぎず、猫にもポートレートにもよさそう。
 いやマクロレンズはカリカリに写るくらいがよいのでは、というのはさておき。

画像9

 曇りの日の撮影だったとはいえ、ちょっと色があっさりしててコントラストも低めかなあ。
 なんかその、コレはいい加減な印象の話ですけど、レンズを後ろから覗き込んで部屋の電灯に向けたりしてると、妙に白く曇るように見える瞬間がある気がして。
 もしかして内面反射の処理が甘いとかそういうのがあるのかな。

 ちなみにCOSINAブランドのものより、PENTAX自慢のSuper Multi Coatingのおかげでそのへんの性能は上がってる……という説もあります。

画像10

 カスタムイメージ鮮やかで、ファインシャープネスに変えてあるのが私のデフォルトで、今時のレンズを使うとだいぶ派手に写るんですけど、このレンズだとたまに眠い感じになっちゃう。原因がよくわからない。

画像11

 夜にも使ってみてますが、ちょっとハレーションが気になっちゃうことがあるかな。これはまあ被写体の方が厳しすぎますが。
 夜だと結構目立つゴーストが出る場合もあります。まあこれも、他のレンズに比べて明確に酷いって感じでもないですけど。

まとめ

 APS-Cの2400万画素でも十分いけるくらいの写りはあって、ハーフマクロなのもAPS-Cなら正味3/4倍なんで、あまり困るシーンは多くない。実用品としちゃなかなかいいんじゃないでしょうか。
 色が浅くてコントラストが低めな感じは……SATOBIとか使えば似合ったりして(適当いってますが、一応逆さまの椅子の作例はSATOBIです)。まあデジタルならそのへんは好きに調整できますし。

 しかし後群の2枚の間が曇る持病があるそうで、分解したところで2枚が分解不能な形に固定されちゃってるそうで、掃除のしようもないとか。貼り合わせは前群だから、バルサム切れとかでもなさそうだけど。
 現に今手元にあるやつは見た感じそれほど曇ってもないので、個体差か、ロットによるのか、PENTAXが対策したのか、なんでしょうね。


 レンズ構成は4群5枚のクセノター型ということで、PENTAXレンズだと他にM50mmF2とか、M100mmF2.8とかもそうですね。あんまり明るくしない分には、小枚数で低コストに、十分な性能で作れる構成です。

 今見つけた、各社マクロレンズの歴史をまとめたblog記事(すごい!)によると、クセノターの100mmマクロは70年代くらいに流行ったようです。
 ある意味、オールドレンズをAFで使えるようなレンズですねえ。
 タムロンのマクロ90mmF2.5は、カリカリすぎないほどほどの柔らかさで「ポートレートマクロ」と大ヒットしたもんですが、コシナ100mmF3.5もカリカリ過ぎないレトロな写りってことで、結果的に近いキャラのレンズになってるような。タムロンの人は怒るかもしれんけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?