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おのみち

尾道に行ってきました。3日間、思い出がひたひたです。たっぷりです。

取り急ぎ、思ったことを書いておきたいと思います。ひとりだったので頭の中で考える時間が多くて、いま言葉が溢れてどこかへ飛んで行っちゃいそうなんです。どんなお店に行ったとか、何を食べたとかは今度ゆっくり書きますね。


1.

尾道に行った目的は、「観光」が2割くらい。残りの8割は「尾道で生活して、のんびりしたい」でした。

22歳、それなりに人生の岐路に立っていて、悩みもあります。その中でも大きいのが、「どこで暮らすか」。
わたしは東京で生まれて育ったから、東京での生活しか知らない。でもこれから先は、どこで暮らしていくかを自分で選べる。自立とはそういう意味もあるでしょう。


わたしはどうしても東京の時間の流れとか、雑踏とか、ビル群とかが好きになれなくて。東京の移ろいやすさや脆さを美しいと感じる心だってないわけじゃないけど、たまにどうしようもなく息苦しくなる。なんでずっと東京にいるのに、馴染めないんだろうね。変なの。

慣れちゃったから東京で生きていくこともきっと出来るのかもしれないけど、今簡単にそう決めてしまうのは何だかすごく勿体ない気がした。だから色んなところに行ってみたくなったの。地球一周とかも本気で考えたよ。1ヶ月くらい。


尾道に行きたくて仕方なくなったのは、一枚の写真を見てから。

写真家の濱田英明さんが撮影したものです。わたし、この写真を見てからというもの取り憑かれたように尾道のことばかり考えるようになっちゃって、何か嫌なことがあるたびネットで尾道のことを調べてた。

あの日どうして宿をとったのか忘れちゃったけど、ついに我慢できなくなった日があって、両親にお願いして誕生日プレゼントとしてひとり旅をさせてもらうことにしたの。

これが尾道に行ったきっかけと目的です。
前置きが長い。


2.

わたし、あてもなく歩くことが好きな性分なので、尾道でもその気まぐれを思う存分発揮しました。「惹かれる」って思った道に進むようにしたらいつのまにかお墓に着いたり、あじさい寺(通称)に出たり、ロープウェイで登ろうと思ってたところに徒歩で辿り着いてたりしました。とにかくいっぱい歩いた3日間だった。

お墓から尾道水道を見渡したときね、「ここで死ねたら幸せなんだろうな」って思ったの。
アーケードが連なる商店街の先に広がる海、さらにその先には緑深い島々。この眺めを毎日見られるなんて、最高じゃない。あちこちから聞こえてくる渡船の汽笛も心地がいい。生温く体を包む風も、じわっと流れる汗さえも愛せると思った。

「ここで死にたい」と思える場所で生きていけたら、わたしはもう十分だなあ。


3.

尾道ね、眺めが美しいこと、猫が沢山棲みついていること、時間の逃れがゆったりしていること、全てが好きなんだけど、中でもいちばん好きだと思ったのは「人が優しい」こと。

本当に、びっくりするくらい全員が穏やかで優しくて、涙が出ちゃうんじゃないかって思う瞬間さえあった。

わたし、自分の性格がゆっくりしていて、そのせいで生きづらさを感じちゃう日があって。だから尾道での3日間は天国のようだった。ユートピア。理想郷。探していた場所を見つけたと思った。

勿論、尾道の人たちにだって煩わしいことや悲しいこと、喧嘩すること、疎ましく思うことだってあると思うよ。でもやっぱりどうしたって、都会の風土とは全然違う。わたし尾道が好きだなって、すごく思った。


4.

「なんにもない」を求めて行ったんだけど、そうじゃないんだなって気がついた。

たしかに、「なんにもない」を楽しんだけど、なんにもないんじゃなくて、わたしの理想が全て揃っていたの。とてつもなく贅沢なことだと思った。少し恐ろしくすら感じた。


海と市街地と山とが、ぎゅっと近い場所に詰まっている。商店街には程よく人が少なくて、でも決してシャッター街なわけじゃない。ちゃんと観光地だけど、派手すぎずありのままの姿でいる地元の人たち。鳩が少ない。映画館がとても好みに突き刺さる。尾道で出会った人たち、自分の仕事や尾道での生活を「愛おしい」って思っていることがひしひしと伝わってきた。


尾道で暮らしたい、って思ったけど、多分それは東京で暮らすよりよっぽど難しいことだと思う。でもせっかくなら挑戦してみたいな。上手くいくかもしれないじゃない。そうしたら、わたし生きながら天国に住めるんだよ。


5.

ここからは、ただひたすらに尾道での楽しかったことを書いていこうと思います。


最初にも書いたみたいに、尾道での3日間は観光というより、普段の生活をした感覚に近いです。休みの日にふらっと自分の好きなことをしにいくのと同じ感覚で、ただひたすら行きたいところに行って食べたいものを食べました。

美術館、映画館、本屋さん、喫茶店。わたしの好きなところに入り浸ってばかりで、それがすごく幸せでした。


サイクリングとかも有名だから一瞬「やろうかな」って考えたけど、それより喫茶店で本を読んでいたかったし、好きだと思ったところにもう一度行きたいと思ったの。だから背伸びしたことはあまりしなかったな。たまには背伸びも楽しいんだけどね。


6.

尾道に来る前のニュースでは「台風直撃」みたいなことを言っていたから少し心配してたんだけど、全然大丈夫だった。

1日目は雨が降っていたから長い傘をさしてお寺を巡って、気づいたらすごい量の坂道を歩いたことになってた。

2日目はなんと、晴れたんです。午後からは雨模様かもしれなくて迷ったけど、荷物になるから傘は持って行かなかったのね。そうしたら渡船に着く直前から雨がざあざあ降りになっちゃって。濡れて宿に着いた。そのあとのお風呂すごく気持ちよかったなあ。わたし雨に濡れるの好きなんだよね。

3日目も晴れてたから傘持たずにぶらぶらした。しかもね、3日目はサンダル履いたの。ほぼ登山の街で!履き慣れてないサンダル!
ゆっくり歩くようにしたから痛くならなかったよ。夏らしさを楽しめて嬉しかったなあ。


尾道では雨も晴れも楽しめてすごく幸せだった。帰ってきても、雨の日も晴れの日も尾道のこと思い出せるね。


7.

尾道ね、あらかじめ調べてたから(もはやそれが趣味になりつつあった)、行きたかった場所にも沢山行ったんだけど、何となくその場で寄ったところが案外しっくりくるものだなあって思ったよ。
(調べて行ったところはやっぱり自分の好みに突き刺さるところばかりでした。)


2日目に迷った挙句、猫の細道に行くことにしたのね。本当はそのあと商店街にある喫茶店に行こうと思ってたけど力尽きて、細道を登ったところにあった「梟の館」っていうカフェに入ることにしたの。
そうしたら、そこがすごく好きな場所で。内装が好きとか、ケーキが美味しかった、っていうのもあるんだけど、何より店主の方がすごく面白かったの。お客さんわたしだけになったあとずっとお喋りしてた。明るくさっぱり話してくださるけど、すごく賢くて豊かな人だなあって思った。出会えてよかったな。また行きたい。


8.

梟の館でお喋りしたあと、商店街の方に降りていって水祭りや土曜夜店を楽しみました。

わたしお祭りはもう終わってると思ってたから、思いがけずタイミングが重なっていたみたいで嬉しかった。子どもたちがつくった人形ね、どれも本当に立派なの。感動したなあ。
夜店も楽しかった。屋台の灯りがキラキラしていて、生きてる感じがした。


9.

尾道で唯一、2回行ったのが「弐拾dB」っていう古本屋さん。商店街のアーケードを抜けた先にある、静かだけど温かくて愛のある本屋さん。

わたしもこの前の春まで古本屋で働いていたから、なんだか無性に懐かしくなって長居しちゃった。

わたしの働いていたところはチェーン展開しているお店で、マニュアルが決められていて、必ずしも本が好きな人が働きにきているわけではなかったから、あの時心のどこかで諦めて割り切っていたものを、ここは全部拾って大切に詰め込んだような場所だなって思った。


店主の藤井さん、優しく話してくださってすごく嬉しかった。お昼ご飯のおすすめ教えてくれて、地図も描いてくれた。
だから尾道の最後は、藤井さんが教えてくれたカレー屋さんに行ったよ。

カレー屋さんのおふたりもまた優しい人たちだった。店主さんはシャンデリアに頭ぶつけてて可愛かったし、女性の方はワンピース褒めてくれたの。オレンジのワンピース、「尾道に着ていこう」って選んだものだったから嬉しかったなあ。ブルベとかイエベとか、そういう呪文を無視して好きに選んでたから、「色が似合ってる」って言ってくれたのが本当に嬉しかった。


10.

尾道、楽しかったなあ。これ以上ない贅沢だった。きっと人生の中で忘れられない3日間になっていくんだろうなって思う。

今まで色んなところに旅行に行ったけど、他のどことも違う、「はまる」感じがした。
きっとまた行くと思う。我慢できなくて。

だってもう戻りたいもん。波の音聞きながら、電車の音聞きながら眠りたいよ。

時間に追われすぎず、地位とか学歴とか見た目とかそういうのばっかりが意味を持つんじゃなく、ただ慈しみながら生きる。本当の贅沢だと思う。わたしも贅沢に生きたいな。来年から社会人だけど、また尾道に戻ってこられるよう、がんばって生きてみよう。

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