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【美術ブックリスト】『朝倉摂の見つめた世界 絵画と舞台と絵本と』

神奈川県立近代美術館 葉山で開催中の回顧展「生誕100年 朝倉摂展」の公式図録兼書籍。展覧会は練馬区立美術館は6月26日(日)~8月14日(日)、福島県立美術館 は9月3日(土)~10月16日(日)に巡回する。

舞台美術家として大成した朝倉摂は、もともと伊東深水に学んで日本画として出発し、戦前の文展や新美術人協会にも入選、戦後も創造美術や新制作協会に出品していた。また絵本や挿絵の仕事も数多く残していて、舞台芸術以外の業績を掘り起こして紹介している。もちろん舞台装置の記録やスケッチも掲載されているが、舞台以外の資料が圧倒的に多い。いわば舞台美術家の舞台裏を覗くよう。ここまでが概要。

ここからが感想。
初期の日本画がいい。画家としても十分大成したと思う。しかし同時に、絵画の才能があるのは当然で、そこに留まっていなかったからこそ、舞台芸術の世界で活躍できたのだと思う。能力のある人ほど一箇所に留まっていないし、過去を振り返らずどんどん未知の領域に進んでいくものだとつくづく思う。

亡くなる前に、横浜のギャルリー・パリで朝倉さんの個展があったとき、行こうとしてなぜか行けなかった。あれは残念だった。

 280ページ B5変 2750円 青幻舎


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