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【美術ブックリスト】『マグリット400』ジュリー・ワセージュ著

著者は美術史家、キュレーターでブリュッセルのマグリット美術館に在籍する。
生涯に残した作品の中から、研究者である著者が400点を選んで収録した作品集。

その生涯を7つの時代に分けて、時代を追って作品を追う。各章のはじめにその時代のマグリットの状況を記していて、伝記としても読める。

キュビスムや抽象絵画の影響が見られる初期から、次第に独自のシュールな画風へと変遷し、それと同時に描写が写実的になっていく様子がよくわかる。
ここまでが概要。

ここからが感想。
言葉のような意味作用がイメージにはある。それを絵画に導入して、概念や常識を疑わせる作品を発表したのがマグリットと言われる。既成の概念の言葉による更新が詩だとすると、マグリットの作品はその意味で詩的である。

それが一般に謎っぽいとかミステリアスという評価になっているのだろうが、マグリットの意図するところは謎を秘めることではなく、何を描いてもそこに意味を感じ取り、謎があるはずだと考えてしまう人間の思考に気づかせることではないかと私は思った。

さてサイズ感といい装丁といい、マグリットの全体像を知るには過不足ない本だと思う。本棚にあるとかっこいい。

480ページ A5変 3500円+税 青幻舎

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【目次】
1919-1925年 抽象画、シュルレアリストになるまでの試み
1926-1930年 暗黒時代
1927-1930年 言葉とイメージ
1931-1942年 選択的親和性
1943-1947年 陽光のシュルレアリスム
1948年 「牝牛(ヴァッシュ)」の時代
1947-1967年 日常の中の詩



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