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【美術ブックリスト】『ジェームズ・アンソール : 仮面と骸骨の幻想』 (自作を語る画文集)

同社の《自作を語る画文集》シリーズの一冊。著書、書簡、講演録、インタビュー、展覧会のコメントなど、画家自身が残した言葉を作品画像とともに編集することで、画家自身を語る画文集。

アンソールは、近代ベルギーを代表する画家の一人。表現主義やシュルレアリスムの先駆ともされる。仮面と骸骨を多用した画家で、なぜそんな不気味なモチーフを選んだかなどの謎に迫る。

幼少期の思い出、美術学校で何を考えていたか、コンクールへの野心など、その都度アンソールが考えたことを追っていく。ルーベンスを敬愛していたことや真のフランドルの源泉に立ち返る意識など制作に関する思索もあり、また大作《キリストのブリュッセル入城》の制作意図など、具体的な作家による作品解説もある。
ここまでが概要。

ここから感想。
画家の芸術と生涯を知るには、自伝によるか、後世の書き手による評伝・伝記によるかのどちらか。自伝のメリットは本人にしか書けない内容が分かること。デメリットとしては知られたくないことに関しては触れないか誤魔化されることだが、それ以上に、記述が面白くないことが多い。画家は基本的に文章が下手だからだ。だからこそ自伝には、編集者によるアドバイスや手直しが絶対に必要になる。

本書は自伝とは言えないが、同様の編集者によるフィルターがかかってるため断片的ではあるが、分かりやすくはなっている。ただ翻訳が硬くて読みづらさあるので、訳者にはもう少し頑張って欲しかったというのが正直なところ。

【画と文】ジェームズ・アンソール 【訳編】藤田尊潮 【訳】内野貴洋
144ページ A5判 2420円 八坂書房

はじめに
1860-84:早熟の天才
1885-93:グロテスクの誕生
1894-1949:名声を得て
私のお気に入り:1921年のインタビュー
「フランドル・リテレール(文学のフランドル)」主催のパーティーにおけるアンソールのスピーチ
ジェームズ・アンソール略年譜
掲載図版一覧
訳文の出典と主な参考文献
アンソール作品を所蔵する国内の主な美術館

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