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【美術ブックリスト】『知れば知るほどおもしろい女性画の秘密』 佐藤晃子著

西洋美術史を飾った女性像70点を、時系列で追って解説していく、コンパクトなガイドブック。
キリスト教絵画の聖母、神話画に登場する女神、王侯貴族の肖像画、市井の女性、女性画家の自画像など各時代の美術様式に応じた女性画を取り上げ、モデルの女性のエピソードや画家自身の半生も交えながら紹介する。
「モナリザ」「オフィーリア」「受胎告知」など有名作からあまり知られていない作品までいろいろ。ほとんどが西洋絵画だが、例外的に鈴木春信や上村松園の日本の絵画も挿入されている。
ここまでが概要。

ここからが感想。
女性画というと、無条件に「美人画」を想像するけども、この70点を通覧するとそうでもないことが分かる。必ずしも美しく描くことが作品の第一の目的ではないからだ。肖像画は実在の人物の人格を表し、宗教画は清廉や純潔といった美徳を表す。時代によっては、美しく描きすぎるのは欲情を惹き起こすという理由で好まれないし、逆にそれを逆手にとって女神たちをエロティックに描くこともある。いずれにしてもアイドルのブロマイドのような世間の理想像を反映した「美人画」は、現代に特有のものかもしれない。

描かれた女性を軸にした西洋絵画の入門書だが、例えばラ・トゥールは生前評判がよくなかったなど画家についての豆知識もあって、興味の赴くままにウンチクを学ぶにはいい本だと思った次第。

256ページ 文庫判 1000円+税 大和書房

はじめに
1章 15、16世紀の女性画
2章 17、18世紀の女性画
3章 19世紀の女性画①
4章 19世紀の女性画②
5章 20世紀の女性画
おわりに

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