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【美術ブックリスト】『はるかなる「時」のかなたに: 風景論の新たな試み』辻成史編

文学、人類学、考古学、芸術学など専門も対象とする時代も異なる7人が、「風景」をテーマに提示する論文集。

美術に関しては第6論文の三木 順子「風景が行為になるとき――ポスト風景画の時代の自然と人間」が、ポロックのアクションペインティング、スミッソンのアースワークにおける「自然」の体験を風景の経験として摘出する。

また第7論文の尾崎信一郎「風景としての美術――抽象表現主義からミニマル・アートへ」は、グリーンバーク流のモダニズム理論で語られてきた抽象表現主義、ポスト・ペインタリー・アブストラクション、ミニマルアートを「風景」という全く別の切り口で分析する。
ここまでが概要。

ここからが感想。
風景とはこの場合、単なる空間や背景ではなく、時間体験を含む空間表象といった意味合い。人間が生きてなにかを行うときに、刻々と生まれてくる前提としての景色とでもいおうか。
専門書なので、記述が難しいのだけど、内容的にはそれほど難解なことは言っていないような気がするので、もう少し読み込んでみたいと思った次第。

400ページ A5判 4600円+税 三元社

[目次]

辻 成史
序論  7

上野 愼也
プラトーン『パイドロス』の空間  37

辻 成史
P・ファンニウス・シニストール邸(ボスコレアーレ)壁画と研究史再考  109

毛塚 実江子
神の顕現する終末の時空 中世黙示録写本の空間表現
――ベアトゥス写本モーガン本(MS M. 644)の「天上のエルサレム」を中心に  143

水野 千依
Theoriaへの「道」と鳥瞰的風景(kataskopos)
――サン=ヴィクトルのフーゴーからオピキヌスへ  187

ティム・インゴルド(川上幸子、古川不可知 訳/辻成史 監訳)
風景の時間性  235

三木 順子
風景が行為になるとき――ポスト風景画の時代の自然と人間  277

尾崎 信一郎
風景としての美術――抽象表現主義からミニマル・アートへ  311

補論 作家との対話
物語と徴し――三人のアーティストとの対話  346
赤松 亜美  350
安倍 安人  360
松谷 武判  370

謝辞  384

人名索引  I
事項索引  III
Abstracts  IV

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