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島田中学校の音の森

1年以上前のことですが、静岡にある島田中学校 (静岡大学教育学部附属)
の音楽の先生である横山知代さんから「Forest and Trees」を授業に使いたいと連絡をいただきました。その成果発表として18年11月1日に行われた1年生対象の公開授業を見学してきました。

この授業は音楽のカリキュラムのひとつ「創作」の授業として組まれたものです。生徒の主体性を高める「教育研究」の取り組みとして、横山先生が創案されました。

その内容は私の映像作品「Forest and Trees / Table ver.」の「映像のみ」を題材にして生徒たちが音色を探し、リズム作っていく、というコンセプトのものでした。

「Forest and Trees」は12画面に分かれたアニメーションがそれぞれ動きながら固有の音を出し、全てが合わさるとひとつの楽曲/映像環境を作る、という作品です。

https://www.keitaonishi.com/forest-and-trees (詳しい作品説明)


見学した授業は、以下のプロセスで進行していました。

音を消した映像からひとつを選んで音色を探す
(ギロやトライアングルなどの楽器の中から)

二人組になり、選択した二つの映像を見ながら
一人ずつ4小節(2重奏)のリズムを作る

発表する

皆で映像を見て音を探している風景です。

見学時は一人ずつ発表でしたが、その後送って頂いた授業ビデオには二人組で作ったリズムの発表もありました。演奏方法を工夫していて面白いです。

カタチを音色と結びつけるだけでなく、動きの印象からリズムを新たにつくる創作プロセスが新鮮でした。

別の学年への展開

こちらは「二重奏リズムを作る授業」とは異なる展開です。見学後に行われた3年生対象の授業では、打楽器以外のモノ(梱包のプチプチ、ブラシ、足音や紙コップなど)による音を映像に合わせています。リズムを作るのではなく映像にあわせて表現していて、こちらもユニークです。よく見ると、どのアニメーションを表現しようとしているかわかります。

実はForest and Treesもハンドクラップや口で出した音を使っていますが、おそらく生徒たちは知りません。

また、楽器を使い、さらに多い人数で合奏している様子も。

Forest and Treesは「木を見て森を見ず」という言葉の裏返しで、部分としての木(個々の音)と、全体としての森(音楽)のどちらも体験することを志向した作品です。

今回参加して何より印象的だったのは、楽器を持った数十人の生徒たちが映像を見ながら音を探しているクラスの状態です。様々な方向から、色々な音が現れては消えるというランダムで多チャンネル音源の状態。これは元の作品を超えてForest and Trees的な音環境でした。

作者もわかっていなかった作品の可能性が顕れていることに驚きがありました。

なお生徒たちは一連の授業の最後に、種明かしのように実際映像につけられていた音を聞いたようで、その感想集もいただきました。

クラスの雰囲気自体も清々しく、本授業と関係ないですが合唱の発表も聞けたりもして、貴重な経験をさせてもらったなという気持ちです。

ありがとうございました。

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第64回教育研究発表会 研究主題 主体性を高める授業過程
〈公開授業〉1年B組 授業者 横山 知代 「創作」
~2つのイメージを重ねよう~    
様々な図形を用いた映像作品をイメージの素とし,
主に打楽器を用いた創作に挑 戦します。 生徒はイメージに合った音色や奏法を選択し、リズムを創作します。 本時では、2種類の音色やリズムを重ねていく活動を中心に授業を構成します。この 活動により、生徒は「音の重なり」が音楽を形づくる要素であることを実感していきます。 他者と関わりながら、音楽を形づくっている要素の働かせ方を試行錯誤していくことで,
思いや意図が深まる姿を期待しています。

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