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「SDGs(そこ)に愛はあるんか?」←ぇ

―西岸良平(サイガン リョウヘイ)氏の作品「三丁目の夕日」より―

※うろ覚えなので、実際の内容とはところどころ差異があるかもしれません。

その話の主人公は、青島という青年。「ヨドバシオモチャ」という玩具メーカー勤務のデザイナーである。

ある日、ライバルである「土井玩具」へ偵察に行くのだが、そこで目にしたのは小規模というよりも更に小さな個人の「おもちゃ屋」。いわゆる大手のヨドバシオモチャのライバルには、とても見えない店舗であった。しかし、土井玩具のオモチャには人々を魅了する、味わい深いものがあり、それが人気と売り上げに繋がっていた。

青島は、まず土井玩具のオモチャを模倣することから始める。そして、形は同じだが、色をよりモダンなものへとするなどの差をつけることで、人気を獲得、売り上げを伸ばしてゆく。しかし、そこは模倣品であるためか、なかなか決定打となるものは出せない。

そんなある日、青島は土井玩具の店主との会話から、あることに気が付く。

―土井玩具が作っていないオモチャがある―

それは、戦闘機といった、戦争もののオモチャである。

土井氏は「オモチャは子供たちの夢であり平和の象徴」と考えていたため、その分野には手を出していなかったのだ。

早速、青島は製造に着手する。零戦といった戦争もののオモチャは大ヒット、売り上げはうなぎ登りとなり、勢い付いた青島は、日本のものは出し尽くしたこともあり、ついにはB29のオモチャまで製造する。ところが……

ヨドバシ製のオモチャで子供が手を怪我する事故が起きてしまう。子供がオモチャを引っ張るなどしたことで、変形・破損し、オモチャの材料であったブリキの縁で手を切ってしまっていたのだ。新聞でも大々的に取り上げられる等し、次々と取引先からキャンセルされることに。

さんざん対応に追われ、自棄になる青島だが、壊れて捨てられたであろうオモチャを見つける。よく見ると、そのオモチャは安全のためであろう、ブリキの縁をしっかり処理してある。それは、あの土井玩具製であった。

青島は、自社のオモチャの危険と思われる個所をプラスティックへと変更、自ら営業に回り安全性をアピールすることで、事態を収拾する。

業績も回復し、経営が順調になった頃、ふと、青島は近頃、土井玩具製のオモチャをあまり見なくなったことに気づく。気になった青島が上司と共に土井玩具を訪ねると、土井氏は体調を崩し入院していたのだった。二人は土井氏に一緒に仕事をしようと誘うが、彼はここが自分の引き際だとし、これを固辞する。そして、見舞いに来てくれた二人に、自身の最後の作品である「料理する猫」を紹介し、贈呈する。その表情は、「我が子」への愛に溢れていた。

それからしばらくして、土井氏はこの世を去る。

月日は流れ、取締役となった青島のデスクには、あの「料理する猫」のオモチャが置かれていた。

部下にそのことを尋ねられた彼は、これは自分の宝物であり原点なのだ、と返すのであった。

―――――

土井氏が生み出した「子供たち」に込められたものは、見え難いものだが何よりも価値のあるもののはず。

そして、それを手にしたければ、私たち自身も、その見え難いものを見ようと努める必要があるのだろう。

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