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【第24回】スネ夫と僕は逆だったかもしれない。

「スネオの弟は誰?」と聞かれたとき、あなたは答えられるだろうか。

答えはスネツグである。

え?誰?と思った人がほとんどだと思う。

このスネツグ。藤子・F・不二雄氏の原作でも4回しか登場しない超レアキャラなのである。しかも一番読まれているであろうてんとう虫コミックスのドラえもんの単行本では1回しか登場しないのだ。

弟なのに出番が少ない理由は「NYに住むおじさんの家に養子に出されている」という設定があるためである。原作初期では何回か登場していたけれども作者が存在を忘れたので急遽こういった設定になったらしい。なんとも不憫なキャラだと思う。

しかも初期ではスネ夫と同じイヤミなキャラだったのに、原作連載後期に登場した回では兄思いに良いキャラに生まれ変わっている。ここでもスネツグに関して世界線が変わってしまった。

さて、この可哀想なスネツグが登場する最後の話に単行本40巻収録の「スネ夫は理想のお兄さん」という回がある。この回ではスネツグが日本にいないのをいいことにスネ夫は彼に大嘘を話しているのだ。

自分は成績優秀でスポーツ万能。女の子からはモテモテでジャイアンは自分の子分であると。

その話を信じている素直なスネツグは兄をとても尊敬しているのだけれども、そんな彼が真実を知らないまま日本にやってきたのだからさあ大変。どうなる?スネ夫!というのがこの物語の大まかあらすじになっているわけだ。

はてさてどうなってしまったのか?というのは今回は省くとして(原作ドラえもんもアニメと違う側面もあっておもしろいのでぜひ呼んでほしい)僕にはスネ夫の気持ちがよくわかる。

何しろ僕にも弟がいるからだ。

足の速さでは負け身長も抜かれた頃から文字通り背伸びはしなくなったけれども小学生のころまでは僕にとって弟の立ち位置は一緒に暮らすライバルにも近かったかもしれない。

さすがに僕の弟はNYのおじさんに養子に出されているわけではないのでスネ夫のように大嘘はつかなかったけれども、兄として抜かれまい抜かれまいとしていたと思う。

弟は僕と違って器用だし口も達者でゲームも上手く運動もできた。せいぜい僕が勝てるのは単純な腕力と勉強くらいだったのだ。

「兄より優れた弟なぞ存在しねぇ!!」なんて某世紀末漫画の有名な言葉が存在するけれども、まさしくそんな気持ちで「“兄”なんだから弟に全部勝ちたい!」という気持ちがどこかにあったような気がする。

まあ今になってはどうでもいい話だ。大学に入って特に思ったのだけれども年の差なんか全く関係ないわけで。優秀なやつは何歳でも優秀だ。

僕の場合は嘘をついても見破られる環境にあったけれどもスネ夫はそうじゃなかった。だからあんな誇大妄想をついつい垂れ流してしまったのだ。

スネ夫もまた弟より優れた兄でありたかったんだと思う。なにしろ弟は海外で暮らす英語が堪能で真面目な優しい人間だ。だからスネ夫が引け目を感じてても不思議じゃない。

スネ夫と僕はたまたま環境が違ったから、弟に見栄を張って無いことを垂れ流す僕はいなかっただけのことなのである。環境が変われば話は変わってくる。

スネツグを思い出すときスネ夫に対して僕はいつも思うのだ。

スネ夫と僕は逆だったかもしれない、と。

※ヘッダー画像はドラえもんのアニメ公式サイトよりお借りしました。

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