サムネ

【第74回】私は幻覚剤乱用者です(タイ王国旅行記Vol.4)

子供にぶん殴られて見が覚めた。

何が起こったのかわからず飛び起きて通路を覗き込むと去っていく子どもの背中と「こっちに来なさい!」と手招きする母親の姿が見えた。

辺りを見回してみると、この列車にあるほとんどのベットは椅子に戻っていたので大半の乗客は目を覚ましたのだろう。

きっとあの子供は、その中でカーテンが閉まっている僕のベットを見て、なんでだろうと疑問に思いカーテンを開けてしまった際に、意図せず僕を殴ってしまったのではないだろうか。

やれやれ、とんだ災難だ。子どもがやったことなので別に腹は立たなかったのだけれども急に眠りを中断されたので頭がぼーっとする。

スマホの時計を見てみるとだいたい9時頃だった。

いい頃合いなので食堂車に朝食を食べに向かう。

食堂車とまさかの再開

食堂車で給仕らしきおばさんからメニューを受け取ると、席に着くように促されたので窓際の座った。

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昨日見たメニューと全く同じだったので、別に自分の席で食っても良かったと思いつつ、適当にガーリックチキンと書かれた定食らしきものを注文する。値段は190バーツ(当時のレートで約670円)。多少高いが食堂車で食べる経験には変えられない。

この食堂車は僕がいた2等車と違ってエアコンが付いておらず窓は開けっ放しになっていて窓から景色がよく見える。

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天気は曇っていたので、そこまで気温は高くなく、むしろ風があたって気持ちがいい。

しばらく窓際を眺めているとすぐに定食が出てきた。

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見た目は弁当みたいだ。タイ米の白米。その上に乗ったターンオーバー(両面焼き)の目玉焼き。焼き春巻き。メインのガーリック風味の煮込んだ鶏肉。デザートのパイナップル。付け合せにスープもあるのが嬉しい。飲み物がオレンジジュースなのはどうだと思うけれども。

スープはお湯を飲んでるかのようで全く味がしなかったのだけれども、付属の個包装調味料を加えたらかなりおいしい。海外の食べ物は、どう食べたらいいかわからない時があってちょっと困る。

タイ米の白米は少し癖があって、そのままでは食べにくかった。どうやら水分が少ないので炒飯などに向いているらしい。そりゃ平成の米騒動も起きる。

朝からかなりガッツリとした食事になったけれども、あまり味に期待していなかった分、美味しく感じた。。

流れ行く車窓を見つつ風情を感じながら朝食を食べていると、なんと昨日、僕に座席に朝食を持ってくると進めてきた、あの青年が目に入った。

相手は僕のことは全く眼中にないようだけれども、あれだけ強く断った手前、気まずい。

できるだけ相手の視界に入らないように身をかがめ、そそくさと食べ終えると会計と、ついでに水を買って食堂車を後にした。

しかし、その青年は席に戻ってしばらく車窓を眺めていると、僕と通路を挟んで反対側の席で横になって寝始めたのだ。

なんだか気にして損した…。タイ人は、かなりおおらかだ。

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ベットメイクが解除された2等車。

到着!チェンマイ駅、そして散策へ

車窓を眺めたり、隣席のタイ人のおじさんと言葉の通じないコミュニケーションを楽しんでいると時間はあっという間に過ぎ去り、定刻通りの12時10分にチェンマイ駅に到着した。

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タイの電車は遅れるのが当たり前と聞いていたので、定刻通りに発車し到着したのには拍子抜けしたが旅行者としてはありがたい。

チェンマイ駅はバンコク駅に比べてこじんまりした駅だけれども車窓から眺めていた、田舎駅よりは立派だった。

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ツーリストインフォメーションなのに誰もいない。
お昼時なので、もしかしたら昼食を食べているのかも。

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タイなのになぜパンダ?

駅舎を抜けるとソンテウというタクシーの役割を果たしている相乗りバスの運転手が客待ちをして集団になっていたので、その脇を抜け街に出た。この地域ではタクシーやトゥクトゥクよりもソンテウの勢力が強いらしい。

このチェンマイはかつてタイに存在したラーンナー王国と呼ばれる1229年に成立した王朝の首都だった街である。王国が無くなった今でもタイ北部の文化・経済の中心でありバンコクに次ぐ第二の都市としてや「北方のバラ」という二つ名も有名だ。

街の中心地である旧市街と駅は3〜4キロ離れているので移動にソンテウを使うのが一般的ではあるけれども、朝食がガッツリしてたこともあり、腹ごなしにとりあえず歩いてみることにしたのである。

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昼食で食べたいと思っていたタイ北部で有名な麺料理カオソーイの美味しいお店「カオソーイラムドゥアン」も旧市街からは若干離れていて、駅から2キロほどの場所にあった。ホテルのチェックインが14時から(タイのホテルの大半はそうらしい)なので、そのお店まで歩いていき、食事を済ませホテルまでタクシーで移動、そこからチェックインを済ませて旧市街の散策というプランでいくつもりだ。


Beef or Chicken or Pork?

歩くことだいたい45分で目的地であるカオソーイラムドゥアンに到着した。

ここまで歩いてきて、僕が思ったのは「バンコクよりチェンマイの方が好きだな」ということだ。

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なんというか程よい田舎なのである。第二の都市と聞いて都会的なイメージをしていたのだけれども、古都らしく景観を損なうような高層ビルなどはなく「東南アジアだなぁ」と思わせるようなのんびりとした街並みが広がっている。

観光地はまだ一切回っていないし中心部には全く行っていないのだけれども、歩いているだけで好きになってきた。

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これまでの街歩きでご機嫌になった僕はさっそく店内へと入る。

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店の面構えもローカル感が強く、店内もなかなか趣がある。少し現地感が強く入りにくい印象を受けるががネットの口コミでは「少し入りにくいかもしれませんが人気店で店員も外国人慣れしているので大丈夫です!」といった内容を見たので多分大丈夫だろう。

店の中に入ってキョロキョロしていると僕のことを察した店員の女性が座席に案内してくれたので、さっそくメニューを見てみる。

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英語の表記と写真もついているので外国人でも安心だ。

肝心のカオソーイは50バーツ(当時のレートで約180円)である。人気店なのに安い。ちなみに更に10バーツ払えば大盛りにできるようである。

具材の肉を牛肉と鶏肉と豚肉を選ぶことが出来たので僕は迷わず牛肉を選んだ。なんでも詳しいことはわからないが牛肉のカオソーイは珍しいという情報を見たような気がしたからである。

ただ、あとになって調べてみると具材として珍しいのは豚肉だった。その理由はカオソーイが中国系イスラム教徒の食文化から影響を受けた料理であるため(イスラム教では豚肉を食べることが禁止されている)らしい。ぜんぜん違う。

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カオソーイとはココナッツミルクをふんだんに使ったカレースープにゆで麺と揚げ麺の2つが入った麺料理である。付け合せとしてキャベツの酢漬け、エシャロット(玉ねぎの一種)、ライムがついているので自分の好みでトッピングしたらいいようだ。

食べてみると、ココナッツミルクの風味やカレーの匂いがとてもいいアクセントになっている。味はマイルドだけれどもスパイシーな辛さもあって箸が進む。多くの日本人の舌にも合いそうな味だった。

あっという間に完食すると、持参した水が空になってしまい(タイの食堂は基本的に持ち込み可)のどが渇いたのでジュースを注文。ライチジュースを飲もうとしたら無いと言われたのでスイカジュースを頼んだ。

日本では高級品のスイカもタイでは結構簡単に、しかも安く買うことができる。スイカジュースも至るところで飲める。

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このスイカジュースがタイに滞在中で一位二位を争うくらい美味しかった。一口飲んだ瞬間、とっても甘かったのだけれども決して不自然な甘さではない。スイカ本来の甘味を味わっている感じがした。南国ということもあってシャーベット上になったスイカジュースがエアコンの効いていない店内で体を冷やしてくれる。

ぜひとも「カオソーイラムドゥアン」に行ったらスイカジュースをお試しあれ。

初体験!バイクタクシー

カオソーイとスイカジュースに大満足した僕は会計を済ませると、さっそくホテルに向かうことにした。

タクシーで移動するつもりだったのだけれども、せっかくならとバイクタクシー(以下、バイタク)を使ってみることする。バイタクとはその名の通りバイク版のタクシーだ。バイクに2人乗りをして目的地まで運んでもらえる。日本にはないが東南アジアではよく見られるそうだ。

一般的にバイクタクシーのほうが4輪車のタクシーの方が安価なことに加え渋滞をすり抜けられるというメリットもある。ただ車通りの多いところだと排気ガスがものすごい量になり、それを直で浴びることになるので注意が必要だ。現地のバイタクの運転手はマスク代わりに目出し帽を被っていたので、初めて見たときはぎょっとしたのを覚えている。

このバイタクもGrabで呼ぶことができるので本当に便利だ。

しばらく待っていると、さっそくやって来てくれた。ヘルメットを手渡される。安全面には些か問題がある乗り物なので、こういったサービスはありがたい。

ちなみに僕は普通二輪免許は所持していないのでバイクに乗るのは初めてである。そのせいでヘルメットを被るのに苦戦したが、運転手の人が教えてくれたのでありがたかった。

ヘルメットの着用をなんとか終えるバイクの後ろに乗り込む。日本のバイクでは運転手に後ろから抱きつかないと二人乗りはできないが、タイのバイクには持ち手がついている。なので女性の人でも安心して乗れるだろう。

バンコク市内ではかなりの女性がスカートを履いているからか横乗りをしてバイタクを利用している光景を何度も見た。器用だ。

僕が座ったことを確認するとバイクは発進した。

…速い。

速い速い速い!

速い速い速い速い速い速い!!

僕がバイクに乗ったことがないのもある。それにしても速い。まるでジェットコースターだ。

ちらりとメーターを見ると壊れてて0を指したまま。このあと何回かバイタクに乗る機会があったのだけれども、みんなメーターが壊れていた。なんで?

でも、その速さになれると、なんか楽しくて笑ってしまった。

タクシーから眺める車窓よりも異国を肌で味わっている感じが強いので、バイタクは結構おすすめだと思う。

約4キロ走って57バーツ(当時のレートで約200円)。10分程でホテルに到着した。

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私は幻覚剤乱用者です。

「ねえ、あなた英語話せるかしら?」

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バイタクから降りてホテルの前のベンチでチェックイン前に荷物の整理をしていると、そんな風に声をかけられた。振り向いてみると白人の女性が僕の背後に立っていた。更にその奥には夫と見られる男性もいる。

「少しだけ…」

と僕が答えると

「フラワーマーケットに行きたいんだけど、どこかわかる?」

と聞かれた。英会話教材でよくある道を聞かれるシチュエーションだなと思う。

「ごめんなさい、私は幻覚剤乱用者です。だからフラワーマーケットはわからないんだ。」

そう答えると女性は残念そうに「ありがとう…」と呟くと去っていった。

ここで何が起こったのか解説したい。僕は自分が観光客でフラワーマーケットなる場所を知らない旨を伝えるときに「tripper」という単語を使用した。

この単語、イギリス英語で短い観光客という意味があるが軽快に歩く人やつまづく人、そして口語で幻覚剤乱用者という意味があったらしい。

ニュアンスは伝わっただろうけれども、僕の置かれた状況なら「tourist(観光客)」という単語が適当だっただろうに。

あとで調べてみて、その事実に気がついた時、ものすごく恥ずかしくなってしまった。そもそも相手が通信手段を確保していなかった可能性もあるので、スマホでササッと調べて教えてあげれば良かったという気もする。

悔やんでも仕方ないのだけれども、英語をもっと勉強したいと思った瞬間だった。

願わくばあの女性がイギリス人であることを願うばかりだ。


計画性がないんだね

はっ!

気がつくと16時を過ぎていた。ホテルにチェックインしたのが14時半過ぎだったので1時間半も部屋でダラダラしていたことになる。

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泊まった部屋。
海外のホテルは人数ではなく
何人泊まっても部屋単位で料金が計算される。
つまり僕はベットはダブルだけれども1人だ。

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ウェルカムドリンク。
嗅いだことのない香りのする甘い飲み物だった。
ちょっと塩が入っている?
付け合せのお菓子は食べたことのない味がした。
例えるなら砂糖でコーティングされた皮の少し硬いなごやん。
近未来の人工的に作られた果実みたい(?)

あまりにもホテルが快適すぎてダラダラしてしまった。今までほとんどプライベート空間がなかったので、ホッとしたというのもある。

しかし、このチェンマイには今日と明日の午前中までしか滞在できないのだ。その後、チェンマイ国際空港から飛行機に乗って14時25分発のバンコクに戻ることになっている。

そうなるとこれ以上、時間を無駄には出来ないと思い街歩きに出ることにした。

チェンマイではレンタサイクル屋があちこちにあり安くレンタルできるようなので、さっそくホテルの近くにあったレンタサイクル屋に入ってみる。

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ちなみにチェンマイを自転車で走るツアーもある。

しかし店員に聞くとレンタサイクルは17時半までしかやっていないとのこと。しょうがないので自転車に乗ることを諦めることに。

探せば多分17時半以降も自転車を借りられる店はあったのだろうけれども、そもそもここでガイドブックを確認するとチェンマイ市街にある有名な観光地の寺院はどれも17時から18時に営業終了してしまうそうなので、しかたなく徒歩で回れる範囲の旧市街の中にある有名な寺院を回ることにした。

残りの寺院は明日に回そう。

計画性の無い旅が好きで、その場でプランを組むのが好きなのだけれども、こういったことがあるのが玉にキズだ。別に後悔はしてないが。

こうして僕はチェンマイ市街へと向かって歩みを進めたのである。


最後に

すみません、体調を崩しがちで更新が滞ってます。

のんびり楽しみながら更新していきます。

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>>次の話はこちら:【第75回】幸せになるお湯と不幸になるお湯(タイ王国旅行記Vol.5)

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