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【第57回】実録!明晰夢を見たレポ。Vol.1

気がつくと僕は祖母の家の2階にいた。夜なのか外は暗く部屋の電気が灯されている。窓の外から顔を出すと今はなき懐かしい景色。何も疑問を持たずにぼんやりと夜空に浮かぶ月を僕は見ていた。

どれくらいそうしていただろう。月の表面に1つの小さな影が生まれた。その影は月の光を浴びながらこちらに向かってくる。ぐんぐんと大きくなっていく。目を凝らすとそれは戦闘機だった。

ドンッ。強い衝撃が家の一階部分に加わるとメキメキと音を立て家が崩れてくる。身の危険を感じた僕は、先ほどまで覗いていた窓と反対側の窓を蹴破り飛び出していた。

そして僕は空を飛んだ。落下しているわけではなくプカプカと。振り返ると無傷のままの家がそこにあった。

あ、これ夢だ。瞬間的に僕は悟る。いつ祖母の家に訪れたのか思い出せないし、戦闘機がぶつかってくる状況にどう考えても合理的な説明をすることができない。そもそも人は空を飛べないし。

夢の中で「これは夢だ」と自覚しながら見る夢のことを明晰夢という。明晰夢では訓練次第では自分の思い通りにすることができると言われているのだ。明晰夢を見るのはこれが初めてではないけれども、こんなにも冷静に「あ、これは夢だ」と思えたのは初めてだったので嬉しくなってしまった。

明晰夢を見ても上手く操れた覚えがないので、今回は慣れる意味でも少しずつやってみることにしよう。

そんなことを思っていると、場面が急に変わり暗い回廊の曲がり角に置いてある椅子に僕は腰掛けていた。自分の正面と右手に向かって通路が伸びている。さすが夢。不思議と怖さは感じなかった。夢だと自覚しているからかもしれない。

次第にあたりの景色もくっきりとしてきた。夢を夢だと自覚した時の視界の良好さの快感は計り知れない。さっきまでの靄がかかっていて解像度の低かった世界が一変する。

さて、まずは自分の手を見てみる。夢の中で自分の手を見た記憶がないからテストだ。結果は完璧で自由自在に動かすことができた。次は足。御誂え向きに運動靴を履いている。こちらもOK。

ついに立ち上がってみる。最初は腹部に圧迫感を感じたが立ってしまえばなんてことはなかった。もしかしたら現実の横になっている体勢と動きのズレか何かが原因で圧迫感を覚えたのかもしれない。けれどもそんなことはどうでもいい。さらに動いてみよう。

体は自在に動く。現実世界にいるときと全く変わらない。いや、疲れない分、現実より快適かもしれない。

そう思った瞬間、僕は走り出していた。

次第に周りが真っ暗になり見えなくなってしまった。もしかしたら僕のスピードに想像が追いついていないのかもしれない。あくまで僕の頭の中で起こっていることなのだから。

ふとまた場面が変わり実家のマンションの玄関前に僕は立っていた。僕が容易に想像できる場所とはいえ安直すぎないかと夢の中で苦笑する。先程よりも視界がクリアだ。それでいてマンションから見える景色は大都会の摩天楼になっている。カオスさに笑ってしまった。

せっかく夢の中で実家に来たのだから探索しよう。廊下を走って──走ってばっかりだな夢の俺──移動するとツタが腕に巻き付いてきた。どうして。俺の夢なのに。沸々と怒りが湧いてくる。せっかくの明晰夢なのに行動を拘束されるのか。芋虫に変われと念じるとツタはさやえんどうスナックみたいな芋虫に変化したのだ。なぜ

エレベーターの前にたどり着くと背面にあるはずの壁が無くなっていた。どうせ夢なのだからパルクールで1階まで降りたいなと思ったので、やってみることにする。イメージとしてはYouTubeに上げられている動画のような華麗な姿。結果としては段々に降りるだけだったけれども非常に気持ちいい。大都会の景色もわくわくさせてくれたわけで。

一番下にたどり着くとスーパーの中に僕はいた。なんだこれ。ぜんぜんせっかくの明晰夢なのにコントロールできていない。場所は断言できないけれども記憶にあるスーパーだった。トイレあるのかなと確認しにいったところで………プツン。

目が覚めた。

明晰夢。まだまだ奥が深そうだ。振り返ると全然操れていないけれども体を動かせるのは面白い。自分自身の想像力や体への意識の入れ方を工夫すれば、もっと楽しめるかもしれない。

ただ…。

どうせ自由にできるなら、ちょっとエッチな夢でも見ればよかった。

#エッセイ #夢日記 #明晰夢 #僕ノート

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