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出戻りCB奮闘記

アトランタ・ブレーブス、22年振りワールドシリーズ進出!!!
アトランタファンの友人が歓喜していた。歓喜と言ってもヒャッハーしていたわけではなく、「よくぞここまで」と感慨に浸っていたから、彼のアトランタ愛は結構重い。チームの顔、アクーニャJr.が前十字断裂で今季絶望、主砲オスーナもDVで逮捕。前年度に不安視されていた先発投手陣をオフに補強していただけに、今度は外野か!とファンは頭を抱えたのではないだろうか。
ところがどっこい、離脱しまくった外野陣の穴を夏場のトレードでせかせか埋めて、それが案外大当たりした。件の友人が「多分4試合で負ける」と言ったドジャースとのリーグ優勝シリーズでトレード加入のロサリオが馬鹿みたいに打ったわけだし。
そして新加入の先発陣もなんやかんやでいいお仕事をしてくれた。二人とも二桁勝ったし、MLBニワカでNPB脳のわたしからしてみれば大成功の補強だと思う。中でもモートンは左の本格派エース、フリードと並んでチーム最多の14勝をあげた。
スリークォーターから独特な軌道のボールを投げる選手だ。体の後ろからしなって巻き付くように腕を振っているから、球の出どころは見えにくいだろう。タンパベイ時代の動画を見ると変化球もよく動いていた。後半戦2完封のフリードのせいでやや活躍が霞むが、シーズン通しての安定感は流石ベテランというところである。そして彼、なんといってもメジャーデビューがアトランタなのだ。生え抜き選手はなんかいい。そのチームで育ったというだけで応援しがいがある気がする。例え途中、離れている期間があったとしてもだ。

戻ってきたい場所であるというのは、ある意味クラブの価値だと思う。モートンが古巣愛で戻ってきたかどうかは知らんが、そういう選手は知っている。というかJリーグにはとりわけ、そういう選手が多い気がする。地域密着型コンセプトの功績か、地元出身のアカデミー育ち選手が多いからだ。
菅沼駿哉がガンバ大阪に戻ってきたのは2018年。2011年のシーズン途中にガンバファンになったわたしは、2009年にトップ昇格し、11年から期限付き移籍でロアッソ熊本にいた彼のプレーを知らない。ただしこの移籍が「便利な控えCBの獲得」に過ぎないことはなんとなくわかっていた。復帰した頃はキャプテン三浦弦太とファビオがコンビを組んでいて、期待の若手枠に野田裕喜(現山形)がいた。実際最初の2年間は、それほど出番がなかったと記憶している。
実際今も出番が多いわけじゃないしね。CBに怪我人が相次いだことによるスクランブル。日韓代表CBを3人揃えたのに、そのうち2人が怪我しているからまぁそうなる。韓国代表のキム・ヨングォンとルーキー佐藤、そして菅沼。どちらと組んでも安定しているからか、今は菅沼が出ずっぱりだ。最初は色々言われたけれど、ここ数試合は抜群の安定感で試合を締めている。

オフシーズンには毎年他所のクラブから関心を持たれるモテモテの選手だ。『獲得か』の飛ばし記事が出なかった年はないぐらいにストーブリーグの人気者になっている。1家に1台菅沼駿哉。下のカテゴリーならすぐにスタメンを張れるぐらいの選手ではある。控えに置いておくにはやや勿体ないと思わなくもない。
そんなモテモテの菅沼だが、なんやかんやで毎年きっちり漢気残留してくれている。在籍4年目。3年かけて35試合しか出られなくとも、今年柏レイソル戦でガンバ大阪初ゴールを決めたとき『夢が叶いました』と言ってくれた。こうしてチームを愛してくれる選手の存在は、クラブの財産だと思う。海外移籍をしても『戻ってくるならガンバ以外考えられない』と言った宇佐美がいて、生え抜き10年選手の倉田と藤春がいて、戻ってきてくれた菅沼がいる。選手が愛するチームを、ファンが愛せないはずがない。

先日のサガン鳥栖戦では久々の無失点。神様仏様東口様の出番も少なく、チーム全員で1点のリードを守り切った。途中キム・ヨングォンの負傷交代もあったが、菅沼はスクランブル出場のルーキー佐藤に指示を出し、危ないシーンでは体を張り、勝利後には満面の笑顔がこぼれた。ヨン様のコンディションは不安要素だが、何ともない可能性もあるし、嘆いたとて怪我は仕方がない。『今はない物について考えるときではない、今あるもので何が出来るのか考えるときだ』とヘミングウェイも『老人と海』で言っている。
とはいえメンバー編成はコーチ陣のお仕事である。ファンにできるのは祈るだけ。チーム愛溢れる出戻りCBがきっとチームを勝利へ導いてくれると信じるばかりだ。

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