「大切な人に愛を表現して、それが周りから祝福される世界を創りたい」大学を休学し、起業を考えている中西高大さんの想いとは

誰でも理想を掲げることはできるが、それを実現しようと行動する人は果たしてどれだけいるのでしょうか。中西さんのSNSに掲げられた「あと10年までに、僕が生きたい未来を創る」の言葉通り、現在は起業準備中だそうです。自分のセクシャリティに葛藤し、無情とも言える現実に対して、果敢に挑戦していく中西高大さんにお話を聞きました。

プロフィール
中西高大 1996年5月18日生まれ。大阪府出身。 今年度より大阪大学を休学し、関西の教育機関で性の多様性に関する出張授業を行う学生団体「あのね、」を立ち上げる。 また海外インターンシップを主幹事業とするNPO法人アイセック・ジャパンにて、アフリカ起業家輩出プログラムを開発している。 現在は「誰もが自分を、そして大切な人を堂々と愛せる世界」を目指し、起業準備中。

──中西さんのSNSを拝見してセクシュアル・マイノリティの方だと知りました。自分がそうかもしれないと思ったきっかけはあったんですか。

僕は高校2年生の時に、初めて男の人を好きになったんです。当時は、パンセクシャルという言葉を知らなかったこともあり、自分のセクシュアリティに関して少し違和感がありました。バイセクシャルについて書かれた記事を読むと、共感できる部分はあるけれど、あんまり自分にしっくりこなくて。LGBTサークルのコミュニティに入ってても、自分と似たようなセクシャリティの人に会えず、共感できる部分があんまりなかったんです。それから、ずっと自分のセクシャティって何だろうってモヤモヤしていたんですね。

──その後、セクシャリティは何であるか分かりましたか。

僕はパンセクシャルに近いのかなって思っています。以前、パートナーシップについて語り合うという交流イベントに参加したことがあったんです。その時に、Palette(セクシュアリティやジェンダーの多様性の理解を促すウェブメディア)の編集長の方にお会いして、自分のセクシャリティの話をしました。話をしたあとに、その方から「パンセクシャル*の部分があるね」と言われて、自分の中で腑に落ちた部分があったんです。それ以後は、自分のセクシャリティの説明をするときは、パンセクシャルに近いセクシャリティと言っています。

パンセクシャル:男性/女性の性の分類に適合しない人々も含め、あらゆる人々に恋をしたり、性的願望を抱いたりすること。(引用:Wikipedia)

「パンセクシャルが僕のセクシャリティに一番近い」など、何回か出てきたその「近い」という言葉に、筆者は納得した。あるセクシャリティの定義が、その人にすべて合致することはないし、セクシャリティは変化していく場合もあるからだ。つまり、自分はパンセクシャルであると断定してしまうことは、不自然なことかもしれない。

カミングアウトするハードルはまだまだ高い。それは、無意識にある差別や偏見の存在によって。

──周囲の人に、カミングアウトをしたことがありますか。

自分が活動しているアイセックの団体の人には、自己紹介のときにカミングアウトをしたこともあります。アイセックのメンバーはグローバルな思考や、LGBTの知識もあるなど、リベラルな考えを持つ人が多かったので、カミングアウトしてもいいかなって思ってたんです。

──その時の反応はどうでしたか。

その時の反応よりも、僕の場合はカミングアウトしてからの方が大変でした。カミングアウトをすると、まず相手の中にLGBTに対する先入観が浮かぶと思います。LGBTの先入観とは異なる言動が僕にみられると、僕が嘘つき呼ばわりされたことがあるんです。例えば、バイセクシャルだとカミングアウトしたあとに女の子と仲良くしていると、「中西は女の子と仲良くしてるから、バイセクシャルじゃない」とか。

あと、LGBTの人としては、どう考えているんですかって、必要以上にLGBTに固執した質問をされたりしたことありますし。LGBTといってもその人その人によって考え方や捉え方は違うのに、まるでLGBTの代表としての意見を求めてきたりとか、ですね。言わなかった方がよかったと思ったことも何度かありました。

──カミングアウトをした後、他者との関わり方に変化があったんですね。

そうですね。でも、それ以前にカミングアウトしない人もいるんですよね。身近な人にカミングアウトするのってまだまだハードルが高いことだと思うので。なぜカミングアウトできないかというと、これまでに身近な人やメディアから差別的な表現を見聞きしてきたからこそ、それに恐怖や抵抗を感じてしまっていることがあるからです。今、日本でもLGBTに対して差別をしないよって声をあげる人は増えてきたけれど、無意識的なところで差別や偏見があるのを感じますね。

──無意識的なところにまで差別や偏見があるのはなぜだと思われますか。

それは、LGBTは周りにいないものだと思われている状況があるからです。88.5%の人が、LGBTの知り合いがいないって答えたアンケート結果があるんです。実際には、11人に1人の割合、つまり左利きと割合と同じでLGBTがいるわけで。そこに矛盾を感じるんですよね。左利きの人は周りにうんといるのに、LGBTはいないと思われている状況がある。LGBTは周りにいないものだという意識が、LGBTへの差別や偏見になってしまう。

もし、LGBTの友達が周りにいたら、LGBTに対して、はたまたその人に対して、差別や偏見をすることにはならないと思います。


原体験から生まれた憤り。それは、社会をよりよくしたいという想いに繋がった。

──大学を休学して、さまざまな活動をなさっていると思うんですが、そこに共通する想いはありますか。

自分の原体験が根底にあります。僕は、置かれる環境によって人生が左右されることに対して、憤りを覚えるんです。その原体験と言うのが、僕が小学6年生だった時に100万人に1人の確率で発症する難病、ギランバレー症候群になって入院したことです。当時入院していた小児病棟には、僕以外は白血病の子だったんですよ。そのうちの1人の子は6歳で、4ヶ月後の手術でその子が生きれるかどうかが決まるっていう淵に立たされていて。

自分で病気になりたくてなったわけじゃないのに、病気になってしまった。そうした環境によって、人生が左右される現場を数多く見てきました。セクシュアリティも同じで、自分で選べたものではないにも関わらず、それによって生きづらさを抱えてしまう人が僕も含め、たくさんいるという状況を何とかしたいって思ったんです。

──ウェブサービスを立ち上げるそうですが、それはどのようなサービスですか。

自分の最も近いセクシャリティが分かるというウェブ診断サービスです。セクシャリティは基本的に、心の性、恋愛的指向、性的指向、そしてファッションなどで自分が表現したい性という4軸があります。その4軸に基づいた質問に答えていくと、一番近いセクシャリティが最終的に診断されるというものです。

その4軸の質問のうち、特徴的に表れている部分は人それぞれ違うし、すべての質問結果が合致する割合は少なくなるので、どんな人も少なからずセクシャルマイノリティの当事者であることを知ってもらいたい。その診断結果を、最終的にSNSでシェアしたくなる仕組みを作っています。

──その診断結果は何のためにシェアされるんでしょうか。

LGBT当事者以外がその診断結果をシェアすることで、それがアライ*の証明になって、カミングアウトしやすい空気がSNS上で広がっていくと思っています。カミングアウトする相手がアライ*だと表明していれば、カミングアウトする方も、落ち着いた気持ちでカミングアウトできるようになるのかなって。

アライ:LGBTなどの当事者では無いが、LGBTなどの人々が社会的に不利な立場に置かれていると感じ、異性愛を標準と捉える価値観に対する解消活動や異議の表明を行っている支援者。(引用:Wikipedia)

──ウェブサービスの配信しようと決めるまで、どんなストーリーがあったんですか。

2つの問題点を解消するために、このウェブサービスを展開しようと決めました。その問題の1つ目は、LGBTとそうではない人の構図が甚だしいことです。そうじゃない人に関しては、そもそも何がLGBTの問題なのかも分からなくて、無関心なところがあると感じています。2つ目は、身近な人にカミングアウトできないために、苦しむ状況があることです。この2つをどうやって解消できるのかを考えたときに、セクシャリティの診断がウェブでできるという、だれでも手に取れるカジュアルさや、診断サービスという面白さを使おうって決めました。

──「あと10年までに、僕が生きたい未来を創る」という宣言が、SNSに書かれていたのを見ました。そのためにこれからは何をしていこうと考えていますか。

僕が常にやらなければいけないなって思っていることは2つあります。1つ目は、誰を笑顔にしたいのかを意識し、身近な人に寄り添ったり、その人のために何かをしたりすることです。2つ目は起業して、それを大きくさせることによって、発信力や影響力を持つことです。社会に対していいことは会社を立ち上げなくても、今すぐできるけれど、自分が作りたい世界を創るときは、日本の資本主義社会の中で戦う必要があると思っているので。

だから、自分が幸せにしたい人を幸せにし続けながら、事業を続けていかなければなと思っています。そして、どんな環境に置かれていても、どんなセクシャリティでも、自分のことを好きでいて欲しいし、自分の大切な人に愛を表現して、それが周りから祝福される世界を創りたいなってすごく思っています。

中西さんは、環境によって人生を左右されることに対して、仕方ないと諦めるのではなく、その現実に向き合いながら手段を講じている。LGBT当事者だからLGBTに人一倍関心があるという理由だけではない。どんな人でも自分を好きでいて欲しいからといった、社会全体が幸福であって欲しいとの想いがあるからだと筆者は感じた。

理想を掲げながらも、問題を指摘し、冷静に現状を分析する。そして、改善策を立てて実行に移していく。そんな中西さんのような人が社会をよいよいものにしていくのだろう。

「あと10年後までに、僕が生きたい未来を創る」

中西さんが想い描く10年後に、筆者も生きてみたい。

取材/執筆:大瀧真優
編集:河崎美里

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