食わず嫌いしてたアニメを見たので正直な感想を書いた

私は7年ほどフィギュアスケートオタク、とりわけ羽生結弦さんのオタクをしていた。試合は1度しか行けなかったけど、オフシーズンのアイスショーは何度も行った。平昌五輪の直後でかなりチケットの倍率も高かったのに縁と運に恵まれてその年は5回も羽生さんを生で見ることができた。翌年はサンクトペテルブルクに交換留学していて、そこでロシアの皇帝プルシェンコがプロデュースした超豪華アイスショーを見た。試合後は好きな選手のプロトコル(採点表)をチェックするくらいフィギュアスケートが好きな私が唯一手を出せなかったのがアニメ「ユーリオンアイス」だ。放送当時、1話だけ録画して見たもののフィギュアスケート選手の主人公(日本人)とそのコーチ(ロシア人)がなんだかやたら距離が近くあまり好きな雰囲気ではなかったのでそこで見るのをやめてしまった。時間が経った今なら素直にアニメの世界のフィギュアスケートとしてこの作品を楽しめるかもしれないと思って鑑賞した。
結論から言うと、ストーリーはかなり面白かったのでもっと広げて勝生勇利、ヴィクトル・ニキフォロフ、ユーリ・プリセツキーの半生をそれぞれ描いて欲しかった。この人たちがなんでスケートやってて今の立ち位置にいるのか気になる。特にヴィクトルなんか戦績くらいしか触れられてなくて謎すぎる登場人物。

よかったところ
①音楽
選手たちが試合で使う音楽のほとんどが書き下ろしっていうのがすごい。私はピアノの音が好きなのでお気に入Yuri on Ice(勇利のFS使用曲)とピアノ協奏曲 ロ短調 アレグロ・アパッショナート(ユーリのFS使用曲)。Yuri on Iceは兄見終わってから「そういえば平昌五輪でペアの日本代表が使ってた!」と思って動画見たら、音楽のテンポと連符とピアノの音色がスケートのスピード感にぴったりでまさにフィギュアスケートのための音楽だった。あと冒頭の連符と後ろで鳴ってる音の重なりがロシア正教の教会の鐘の音みたいだと思う。今住んでるところは目と鼻の先に教会があって部屋の窓開けてると時々音が聞こえる。ユーリのピアコンは出だしの1音からゴリゴリの「ロシア!」感。「これラフマニノフの曲だっけ?」と思った。多分あの曲は別な世界線のラフマニノフが作曲してて、本当は10分くらいの大曲。で、2010年代頃にモダンバレエになってマリインスキーで初演されてそう。「愛について エロス」は、フラメンコギタリストの沖仁さんが参加してる。まじかすごい。大学のクラブでフラメンコやってました。ギターとカホンとパルマがあるとやっぱりテンション上がる。沖仁さんのアルバムにこの曲のフラメンコバージョンがあって、私はこれがすごく好きです。この曲多分12拍子じゃないかと思うあとでカウントしてみる。
②スケートシーン
ちゃんとプロの振付の先生が関わってるのすごい。勇利のSPの冒頭とかめっちゃミヤケン先生感。ぬるぬる動いてて作画もすごかった。JJの4回転が5回転くらいに見える。飛びすぎやろ。作画とかどうやってるのか知りたい。でもGPFのSPの点数がおかしかったかな…当時の採点方法と現行のだとどれくらい出るのか調べたい
③登場人物のスケートの属性とか
このアニメにはリアルで見たことあるスケーターの皆さんがぞろぞろ出てきて、「あーこのキャラのモデルは○○(国)の△△さん」とかやってた笑。楽しい笑。
私の印象はこんな感じ。
勝生勇利→なんか羽生さんって言われてたときもあるみたいだけど羽生さんではないよな。羽生さんはむしろヴィクトル寄りだよね。日本のスケーターの特徴を集めて作った感じ。
ヴィクトル・ニキフォロフ→ステファン・ランビエール、エフゲニー・プルシェンコ、アレクセイ・ヤグディン、パトリック・チャン、羽生結弦。盛りすぎで草。スケートの雰囲気はランビで、スケーティングそのものはPチャン、戦績とか属性がプルシェンコヤグディン羽生系。作中で最も何考えてるのかわからない人。あとアガペーで「滝かな?」とか緊張しすぎてボロボロの勇利に「キスでもすればいい?」とかほんとにコーチ向いてないっていうか、勝生勇利のコーチしかできない人だと思う。振付師のほうが向いてるよ(マジレス)
ユーリ・プリセツキー→最もスポコンだった人。スケーターとしても登場人物としても1番好きです。スケートが羽生さん寄りかな。性別を超越する美しさにアプローチしてるところも羽生さんに近い。技術はエテリのところの女の子たち。たくさんいるんで名前書きません。苗字すごくない?マイヤ・プリセツカヤ(伝説的バレリーナ)と同じやん。そりゃバレエの先生はバレエゴリ押ししちゃうわな。生い立ちとかも含め、ユーリがこの作品で1番リアルな感じがする。おじいちゃんのくだり見て「ロシアはこういう選手多いよね」と思った。余談だけど、ヤコフコーチのモデルは絶対にアレクセイ・ミーシンコーチ。拠点もペテルブルクだし。ユーリがこういう天使っぽいビジュアルでいられるのはあと1年あるかないかくらいだと思うけど選手としてのピークは男子だとだいたい18歳~23歳頃なんだよね…恐ろしい子…振り覚えめちゃくちゃ早くて笑った。振付のミヤケン先生が浅田真央さんの振付考えてる時、横にいる真央さんが全部覚えちゃうから「どっか行ってて」って言ったエピソード思い出した。ユーリの振付の先生のリリアとかあのファーコートは絶対エテリ笑。バレエダンサーがフィギュアスケートの振付するのって現実でもよくある話。リーザが世界選手権で優勝した時のショートのボレロはマリインスキーのスメカロフが振付やってる。てかスメカロフはよくミーシンコーチのところの選手の振付やってるイメージ。
とまあ、こんな感じに完全オリジナルっぽい選手がJJとゲオルギー・ポポーヴィチくらいしかいなくてなんか不思議な感じでした。JJとゲオルギーはほんとに面白い。滑ってるだけで笑っちゃう。ゲオルギーのカラボス見て「何回見てもウケる」って涙流して爆笑してるミラたんめちゃくちゃ好き。ミラたんも頑張れ。

よくなかったところ
①カメラアングル
これはちょっとしょうがない気もするけど、ステップとかで足元までちゃんと入ってなくて、「ここはどういうステップやってるの!」ってすごく気になった。勇利はステップ得意な選手って設定なんだから足元ちゃんと見せて!あとスピンはちゃんと横からでお願いします。ポジションちゃんと取れてるかわかんないんで。
②BLっぽい場面
ちょっとくどいかな…と思った。なんもないところからそういう関係性見出したほうが楽しくない?私は普段BLはそんなに積極的に摂取しない派だからかな…

以下私の個人的なわがまま(怒らないでください)
私はロシアのユーリが主人公だったら結構熱めのスポ根アニメになってたかな…と思う。昭和のバレエ漫画っぽさもありつつ。ユーリは天才だけどなんだかんだずっと苦労しててさ、乱暴だし言葉遣いアレだけど根は良い子だと思う。19~20歳くらいの大人になりかけの時期に「俺はプリマじゃねぇって!」って、ユーリvsリリアとかめっちゃ見てみたい。2人で揉めつつユーリの希望のプログラムを作って「打倒ヴィクトル&カツ丼」とかやってほしい。成長したユーリがあの柔軟性をどこまでキープできるのか気になる。羽生さんもビールマンできるくらい柔らかかったけど途中から入れなくなった。背が伸びてジャンプ跳ぶのに筋肉つけたら柔軟性は多少は落ちる。二重関節設定はナシで。

ところで、GPFのユーリのSPはただのオタクの私ですら「絶対出ないって!」って思うくらい点数高かったので、当時の採点方法と現行の採点方法でどれくらい出るのか計算してみました。もう当時既にやってた人いそう。当時の採点方法だとGOE加点は±3ですが現行だと±5です。あと後半ジャンプ1.1倍もSPではラストジャンプ、FSはラスト2つになってます。また、現行ではジャンプで片手or両手挙げるのは加点対象外です。


以下余談。小学校3年から卒業までバレエ習ってて、最近また始めたんだけど、バレエって、自分が教わってる感覚だと肩は下げるけど頭は常に上に引き上げられた状態、脚(特に膝)は入ってないといけない、という感じ。フィギュアはやった事ないんだけど、見た感じだと滑るにはどうしても膝が曲がる。私の母はよく一緒にバレエ見に行ったけどフィギュアには行ってくれなくて、なんか理由聞いたらそんな事言ってた。上半身だけがバレエの動き、例えばポールドブラをそのまま振付として使われる可能性はありそう。バレエやってるユーリが少し猫背で頭が前気味なの作画細かいなと思った。

映画は一応制作中だけどこのご時世では公開を躊躇ってしまうよね…あとTwitterで相互さんと「現実のスケーターの技術が上がって、ヴィクトルの構成がわりと普通になったから映画が公開されない」みたいな話をした。スケオタやってた私は世界選手権も全日本も全ロもユーロも四大陸もやってほしいと思う。GPFだけじゃ物足りないですはい。最近モイセーエフバレエの来日公演ありましたけど後援が在京ロシア大使館なのでチケット買ってそれを見ることは遠回しにロシアの戦争に加担することになるのでは?という意見も出てるしその意見もわかるのでなんとも言えない気持ち。私がサンクトペテルブルクに留学してた3年前はちょうど日本とロシアの文化交流の年で、色々やってたのが遠い昔みたい。

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