時間依存社会モデルver1.0(マクロ編:共感的組織2)

前項では、最も現実的に構成員の効用を平等にできる組織として、あいまいさに支えられる「共感的組織」という概念について述べた。本項では、共感的組織が戦闘を行う場合、如何なる方法を持って勝利を目指すべきか、そして共感的組織の勝利条件とは何かを述べる。

7.共感的組織の戦闘

独裁者不在の共感的組織(民主的なもの含む)において戦闘は珍しい。これは、内部的なものだけではなく、外部的なものであってもそうである。何故ならば、構成員のほぼすべてが(軍隊などの特殊な訓練を受けた構成員を除いて)例え圧倒的に有利な状況でも「数人の犠牲を出せば勝てるだろうが、だからと言って自分はその数人になりたくはない」という考え方をするからである。従って、共感的組織の戦闘は、主に「取りあえず生き残っておいて相手の自滅待ち」が基本戦法となる。そしてここから、共感的組織の勝利条件も必然的に「相手よりも生き延びる」で確定する。

これは共感的組織に限った話ではないが、あらゆる組織は常に過剰平等という崩壊へのリスクを抱えている。従って、次世代育成と共に、常に効率が悪い部分の平等化を崩し続けるというのは極めて理にかなった組織運営法でもある。現実の例としては、オランダの安楽死の法制化などはこのような視点から見ればとても有益であると言えるだろう。

しかし、相手のリソースを削れないのでは「生存能力が低い組織は確実に負ける」ことになってしまう。そこで、共感的組織における戦闘では「如何にして相手の次世代育成をできなくするか」「如何にして自分の次世代を育成するか」という二つの視点から、相手に対して攻撃を仕掛けていくことになる。

まずは「相手の次世代育成をできなくする」という方法を用いた攻撃について述べよう。一番簡単な、そして一番野蛮な方法は断種だ。つまり、相手の組織の構成員全員を不妊化・或いは殺害してしまえばいいのである……いうまでもなく、この方法は不確実である。周りから人を集めて来られたら終わってしまうし、そもそもどうやれば断種できるというのだ? 水に毒でも混ぜるか?

ということで、現実的な攻撃としては「相手に自発的に断種していただく」というのが最善の一手となる。……これはそう難しいことではない。なぜならば、相手を過剰平等状態に追い込んでしまえば、勝手に相手は次世代を受け入れることが出来なくなって数十年後には自滅するからだ。つまり、過剰平等になるように相手を支援し、過剰平等を避けるように動いている相手を蹴落とせば良いのである。なお、自発的な断種のバリエーションとして、相手の組織に自分の組織の構成員を送り込み、相手の組織をガタガタにしてしまうという手もあるのだが、これは特定の状況(既に過剰平等状態で教化不能な移民を受け入れた)とかでないと成立しない。

組織において、過剰平等を避ける動き、というのは得てして不愉快である。それはつまり、「全体の効用が過剰に増えそうになったからある程度効用を削る」とか「別に効用を高める必要のない相手の効用を維持する」という行為だからだ。表現の自由を考えてみればいいだろう。得てして、グロテスクな画像や性的な動画をオープンにすることは他者から敬遠されるし、ヘイトスピーチなど内容によっては明確に法で規制されているものもある。これらは他者の人権を棄損しうるからだ。だからこそ、そこを削ることには賛同を集めやすい。実際にはその先に待っているのは権力の安定と組織の崩壊であるのだが、少なくとも一時的には快適になるからだ。

次は、「自分の次世代を育成する」という方法を用いた攻撃について述べよう。ここで一番大切なのは「自分の組織の存在を相手組織の効用に組み込む」ことである。これは一見矛盾しているが、手順としてはそこまで難しいことではない。共感的組織は、共感という形で組織を維持するがゆえに、本質的に自身の組織の細かい構造があやふやなものである。あやふやなものを一つにまとめるためには、自身のほかに何か一つになるべきものが必要だ。故に、共感的組織は「大いなる物語」たる宗教や「調和ある対立」を行った敵対組織などを本質的に排除できないのだ。

つまり、「調和ある対立」の状態を作り、その状態で相手組織を平等化させることができれば、相手組織から致命的な攻撃を受ける可能性はぐっと低くなる。なぜならば、相手組織の効用を維持しているのは自分の組織の存在そのものだからだ。互いに争いあうことで、致命的な問題点や細かい平等化の問題を改善するための効用を押し下げるということである。ただし、この戦法は組織が生き延びるには極めて有益だが、自分の組織も相手の組織の存在から効用を得る共依存状態になって、いざという時に共倒れてしまう可能性がある。

8.共感的組織の搦手

さて、ここまでは共感的組織の戦闘について述べた。ここからは共感的組織が戦闘を行う前にすべきこと、所謂搦手について述べる。共感的組織の勝利条件は前述の通り、「相手よりも生き延びる」であるため、実のところ上記の戦闘ですらも最後の手段である。

搦手と言ってもテクニカルなことではない。要するに、ともかく次世代を効率よく生産し続ければよいのだ。つまり、次世代生産に高い効用を与える社会システムさえ維持し続ければ、後は殆どすべきことは無い。

しかしながら、次世代を効率よく生産し続ける行為には、「新しい人間を育成する」以外の一切の代用が効かない。加えて、生き延びれば勝てるという共感的組織の性質上、組織の構成人数はそのまま強者になることに繋がる。つまり、「共感的組織同士の戦闘では次世代生産を放棄すると主張に関係なく放棄側の敗北が確定する」のである。これは、得てして人道的でない組織が大手を振ってのさばったり、国家を持たない少数民族が大きな迫害を受ける理由となる。

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