時間依存社会モデルver1.0(ミクロ編:序論)

本noteの目的は、小説を書くにあたって「如何にリアリティのある人間社会を作るか」という命題に対する現時点における終着点として、時間依存社会モデル作成、言語化を試みた結果を言語化することである。なおこれは、先日投稿したnoteのブラッシュアップ版となっている。

1.個人というシステムの単純モデル化

さて、人間社会は無数の人間たちが構成する組織であるが、構成する無数の人間が取れるであろう行動・人間の数は共に無数ではあっても無限ではなく、数理モデルを作成可能なことが知られている。社会を数理的にモデル化可能であることには、数理社会学において既に様々な前例があるため証明を省略する。

人間をモデル化する際に、最も必要なものは「人間の行動を説明可能であること」だろう。人間の行動とは、即ち生きる営みであるのだから、人間の定義もそれに従う必要がある。最も素朴な人間の定義、それはすなわち「人間とは、生きるシステムである」となるはずだ。

では生きるとは何か。マシーンに繋がれてただ生命活動を続ける様なモデルは、一般的に生きている人間を表しているとは言い難い。そこには生きている人間が行っている選択行為がないからである。しかし、全てを自由意志のままに選択するというのもやはり生きることではない。人間は食事や洗濯、睡眠など、率先して選択こそしないが生命維持に不可欠な行動を取る必要があるからだ。そして、個人の人間が単独にて選択を行うものである限り、その選択を実行している間は他の選択は原理的に選択不可能である。本を読みながら自転車に乗るとか、スマホを弄りながら車に乗るとか、そういうことは(やれるかどうかは別として)満足にはできない。

ここで人間というシステムは常に時間を消費して動くものであるという事実から、時間を共通の行動リソースとしてみなすことができると考える。そしてこの際、同じ行動であってもその行動に対して個人の得る効用は異なることは直感的に自明である。同じことをやっていたとしても、好きな本も趣味もまるで違う、と言うのが人間だからだ。これを効用係数として代入すれば、時間というリソースを自由行動と生命維持に振り分け、最大限の効用を得るのが人間である、というモデル化が可能となる。

即ち、個人の人間というシステムは、もっとも単純に考えれば以下の二つの公式に従っている。

「経過時間=生命維持時間+自由行動時間」

「効用=生命維持時間×生命維持係数+自由行動時間×自由行動係数」

さて、ここで自由行動について考える。人によって何を志向するのかは違うし、その行動に対する効用にはそれぞれ順列がつけられるだろうし、それには。つまり、無数の自由行動係数は、一つの効用関数として定義することができる。この自由行動の係数を示す効用関数を、「自由効用係数関数」と呼ぶ事にしよう。それにより、自由行動によって得られる効用も同様に定義でき、以下のように書き表せる。

「効用=生命維持時間×生命維持係数+自由行動時間1×自由効用係数関数1+自由行動時間2×自由効用係数関数2+……+自由行動時間n×自由効用係数関数n」

これを、「個人の効用方程式」と定義する。

さて、ある一日を考えた時、最も個人が満足できる、最大の効用を得られるのはどのような状態だろうか。経過時間は一定で、生命維持係数が変動しない限り、生命維持時間も一定だ。もし、本当の意味で個人が自由であるならば、このモデルにおいて最大の効用を得る方法は、生命維持時間を限界まで削り、余った自由行動時間を全て自由効用関数が最大値となる行動につぎ込むこととなる。これを「個人の最適自由行動」と定義する。

2.複数の個人に対する「個人の効用方程式」の拡張

上記モデルにおいて、人間の目的は「個人の最適自由行動」を実行することである。しかし、複数人の人間が協力することによって、「個人の最適自由行動」は変化することとなる。

例を挙げよう。もしも、複数人の集団の中に料理が趣味の人間が居て、その人間がその集団の料理番を行った場合はどうか? その人間は趣味を満たせて効用を得ると共に、他の人間は料理にかかる時間、つまり生命維持時間が減ることで自由行動時間に余剰が生まれることになるはずだ。別の例を挙げると、服を作るのが趣味の人間が既に作り上げた服を買ってくれば、服を作成するよりもずっと少ない時間で服を手に入れることができる。やはり生命維持時間が減ることで、自由行動時間に余剰が作れるのだ。このように、個人の趣味に合わせて自由行動係数を上手く組み合わせることで、生命維持係数や自由効用係数関数の数字が拡大できるのである。これが第一の変化、「人数の増加にともなう生命維持係数と自由効用係数関数の増加」だ。ただし、単純に人数が増加すれば係数が増える、と言う訳ではない。人数が多いほど係数の増加はマイルドになっていく。モデル化する場合は人数の乗数は0<x<1の範囲に収まるだろう。このxを「人効用乗数」と定義する。

別の視点から見てみよう。例えば、対戦ゲームをするのが趣味の人間が二人いたとする。仮にこの二人をうまくマッチングさせれば、二人の予定が合う限りは、彼らは対人ゲームをひたすら遊ぶことができるだろう。だが、それは現実的に可能であろうか? 言い換えるなら、対戦ゲームが好きだからと言って、常に相手は居るだろうか? 無論、答えは否である。相手の都合があるからだ。複数人の人間が共に一つの行動に関わる場合、あらゆる自由行動には、それを実行可能な最大時間が生まれる。これが第二の変化、「自由行動時間の配分を個人の自由意思のみでは決定できなくなる」である。

これにより、複数人が関わる場合の「個人の最適自由行動」は「自由行動時間を、可能な限り効用が高い自由行動に対して上から順番に最大限実行する」となる。一般的には、「人数の増加にともなう生命維持係数と自由効用係数関数の増加」の効果は甚だ大きいため、「個人の最適自由行動」は複数人が関わる場合が多い。ゆえに、これを単に「最適自由行動」と定義しよう。

複数の人間が関わりあうことによって、「個人の効用方程式」の効用係数と行動時間の最大値を変化させ、「最適自由行動」自体の最適化を図ってゆく。これこそが本モデルにおいて、人間が群れを成し、組織を作り、社会を生む最大の理由である。

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ねーぴあ

時間依存社会モデルver1.0

社会のモデル化を試みた物その1
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