時間依存社会モデルver1.0(マクロ編:序論)

いよいよ本題に入る。本稿では、時間依存社会モデルのミクロ編で記述した理論をマクロな規模、つまりある程度以上の大組織(大企業や社会など)同士の関わり合いに適用した場合、ミクロの時とどのような差が発生するのかを述べる。

1.大組織と小組織(個人)の行動の差

まず、最も異なる点について述べよう。それは、大組織同士の平等化において、教化が発生することは特殊な例を除いて殆どゼロに近いという事だ。その理由は、組織の自由効用係数関数が、各個人の自由効用係数関数の和であることに起因する。つまり、「組織全体としては確かに最大効用は見えているが、実際は誰をどのように教化するべきなのか」いう全貌を外から見ることができないのだ。加えて、大組織の自由効用係数関数は個人とは比較にならないほど大量の自由行動に対応するため、組織全体で見れば戦闘に敗北しても問題がない場合が多々ある。

次に異なる点は、大組織は構成員を排除しにくいという点だ。大組織になればなるほど、現実的には個人ごとの自由効用係数関数を評価できなくなり、極めて非効率的な自主退場を求めるしかないからだ。リストラの例を考えてもらえばわかるだろう。構成員の自主退場を求めた場合、最初に止めていくのは何時も「ダメだと分かっている会社の現状についていけない人間=得てして最も退場されては困る人間」だ。従って、大組織は問題解決に対して大きく二つの行動しか取り得ない。

一つ目は対外的に問題を解決するための戦闘だ。大組織は必然的に大量の攻撃側人数を用意できるため、「これなら攻撃できるだろう」という発想になりやすいのだ。そしてその発想は、大組織故の敗北への強さにより、戦闘によって概ねそれなりの成果を出す形で成功する。

二つ目は内部的に問題を解決するための教化だ。上記と同様、大組織が大きく変化を起こす場合、それは「学習すべきことがこんなにある」という発想に繋がることが多いのだ。この発想も、非効率的だった部隊が効率化されることにより、やはり概ねそれなりの成果を出す形で成功する。

大組織においては、主に前者を実行する方法を外交とか戦争とか価格交渉と呼び、後者を実行する方法を宗教とか立法とか内部規則と呼ぶ事が多い。

2.大組織における局所的被差別者

当たり前だが、大組織は大量の人数が同時に行動するものである。従って、極めて短時間であっても消費時間と人数、そして人効用乗数の恩恵により、莫大な効用を生み出すことができる。ところが、莫大な効用を生み出せる、ということは一部だけ見れば多少非効率的でも、全体としては問題なく効率的であるという事が発生してしまう。

即ち、大組織内においては、大組織に属する「ある自由効用係数関数について満足できない人間」を集めた小組織を見れば「差別」を受けているが、大組織全体ではその人間たちは「差別」されていないという人数差による局所差別が発生しうるのである。これを「局所的被差別者」と呼ぶ。彼らは差別されている小組織に属するがゆえに大組織に不満を持っているが、しかし大組織から離れれば効用を大きく失うために大組織から離れることもできない。学習を行う場合は自身の効用が減少する可能性が高く、攻撃ではそもそも勝ち目がないため「愚者」であり「弱者」でもある。即ち、彼らは本来平等化を求めるべき立場なのに平等化を求めることができないのだ。得てして彼らはマイノリティである……そもそもマジョリティならば、大抵の場合は既に教化により自由効用係数関数を最適化済みだからだ。彼らは自身の救済を求め、大組織の教育を試みることが多い。

しかしながら、彼らの平等化には、大組織的に見て極めて大きな問題点がある。それは「得てして彼らの所属する大組織は十分に効率的である」という点だ。即ち、大抵の場合は「局所的被差別者の効用を改善するためには、その他の大部分の人間の効用を削るしかない」のである。これにより、彼らの平等化は概ね悲劇的な結論に終わる。即ち、「大部分の人間が、彼らの教育をまともに取り合わずに黙殺される」か、「誰の効用も削れないので生命維持係数を削り、大組織自体が過剰平等に陥って数十年後に皆で仲良く不幸になる」かである。

大組織が過剰平等に陥った場合もまた、小組織と同様に組織としての死の運命からは逃れられない。だが、大組織は他の大組織から戦闘を仕掛けられる立場にある他、その規模故に地理的要因が無視できないことが多く、人数の減り方も緩やかなため、組織として崩壊する前に強引な人員増加や内部的学習による再平等化が発生することが多い(勿論ローマ帝国のように崩壊することもあるが)。そして極めて重要なポイントとして、大組織もまた再平等化の宿命、即ち「組織の生命維持係数(次世代の育成を含む)の増加に強い効用が強制的に付加される」ことからは逃れられない。故に、次世代の育成よりも個の自由を優先する自由効用係数関数の持ち主は、長期的に見た場合、大組織においてはほぼ確実に安定して局所的被差別者になってしまうこととなる。

この性質は、現実においてはいわゆるリベラルやLGBT(どちらの自由効用係数関数も次世代の育成に大きな効用を持たない)が大組織に教育を行った場合、過剰平等による次世代不足が発生し、それに対するバックラッシュ(という名の再学習)が発生する原因の大きな一つである(当然実際にはこれだけの問題ではないが)。

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