時間依存社会モデルver1.0(ミクロ編:組織の死と再生)

★追記あり(2018年4月15日更新)

前項までに、本モデルにおける自由と平等、そして戦闘と教化についての定義を行った。以下のnoteは、一度完成してしまった「最適完全組織」がどのように変化するかを考察したものとなる。「最適完全組織」は理想形の組織ではあるが、しかし人間の生命が永遠でないように、組織の寿命も永遠ではないことを示そう。

7.過剰平等と組織の死

さて、「最適完全組織」には一つの大きな欠点がある。それは、「一度最適平等組織を作ってしまった場合、更に追加で人員を入れてしまうことで、各人の効用係数が変化し平等化が崩れてしまう」事に起因する強固な排他性である。これは特に小規模な組織で発生しやすい。例えば、少し有名になった社会運動家が、大体仲間内で寄り集まって新しい社会運動家の登場を阻害する、と言った現象はよくあることだろう。人間の知覚能力が夢幻ではない以上、平等化の過程では局所最適化が極めて起こりやすいのだ。

ここで、人を増やすことなく更に効用を高める方法は一つしかない。それは、「組織の生命維持時間を減少させる」ことである。個人において生命維持時間を減少させてしまえば、それは速やかに餓死や病死を招く。だが、組織においてはそれは当てはまらない。何故ならば、組織は個人の効用方程式には全く意味をなさない要素である、次世代の育成を生命維持係数に含むからである。この部分は、少なくとも今日明日とか一週間というスパンで見た場合、削ってしまっても全く問題が発生しないのだ。こうして、「組織の生命維持係数から次世代の育成を排除することで、一時的に最適完全組織を上回る更に高い効用を得る」ことが可能である。この状態になった組織を「過剰平等組織」と呼ぶ。これはいわば腹が減った農家が来年の種籾まで食っているようなもので、到底長続きする様なものではないのだが、しかし最適平等組織の持つ強固な排他性から過剰平等組織への変遷は高確率で発生する。

そして、過剰平等組織は、組織の人間の死や脱退によって崩壊を始める。脱退に関しては組織内に規律を設けるなどでその場しのぎが可能だが、寿命や病気などによる死亡だけはどうしようもない。こうして、過剰平等組織の平等化は「平等化は崩れたがそれを埋める人員が組織内に居ない」という最悪の形で崩壊を始めることとなる。幾つかの過剰平等組織は、強引に埋める人員を探し出す、という形で対応しようとするが、それは基本的に上手くいかない。相手を教化するためにはまず過剰平等組織から最適平等組織に戻さねばならず、それには構成員の効用の減少が必要となるからだ。

こうして加速度的に平等化が崩れた果てに、組織は死を迎える。組織の死とは綺麗なものではない。構成員が得られる効用が、一旦個人で得られる最大効用に戻ることにより、構成員全てがその効用を大きく棄損されることになるからだ。それは自殺や暴行など、破壊的な終焉を得てして齎す。

8.組織の再生と再平等化

このような崩壊を迎えた組織は一旦死亡する。しかしそれでも、人類が存続する限り組織が消え去ることは無い。組織は死んでも構成していた人間は生きているからである。

殆どの場合、個人にまで戻ったかつての組織の構成員たちは、新しく寄り集まって再び組織を作り上げようと試みる。人は単独では生存すらままならない、そういう生き物だからだ。最も、元の組織が復活することはあり得ない。平等化には、どのような手順で行われたか、どのような人間が作り上げたかに依存する無数のパターンがあるため、一度使っていた平等化が再び発生することは原理的にあり得ないからだ。こうして、元の組織とは異なる新たな組織が誕生する。これを「再平等化」と呼ぶ。

なお、再平等化は組織を崩壊させずとも起こすことができる。人員の再配置や、新しいテクノロジーの導入などが主に再平等化を発生させる最良の手として使用される。最も、意図してそれを実行するには組織の意思決定者にそれなり以上の能力が必要となるだろう。意図せずに再平等化が起こる場合は、「最適完全組織」に至る前に組織の構成員が増減を起こした、などが考えられる。

追記①:単純に記述したが、「再平等化」とは基本的に残酷である。再平等化には、必ず「組織の生命維持時間(次世代の育成を含む)を増加させる」ことに強い効用が付与される。そうでなければ組織として再び成立しえないからだ。それはつまり構成員たちが「私の今までの効用関数は全て間違っていました」と認めることに等しい。構成員個人に取っては次世代の育成は得てしてやりたいからやるものだからだ。それは幾ら目を逸らしても避け得ない現実によって組織のトレンドそのものが変化することに等しい。「自由と平等を唱えていた正義の人が、ある日突然自己責任論を振りかざす分断主義者の狂人と呼ばれる」のが再平等化の本質だ。とはいえ、全てのものは移り変わるので、これもまたよくあることなのだが。

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