安全圏から抜け出したい
今までずっと、安全圏で生きてきた。
幼い頃から絵を描くのが好きで、親が美大出身だったこともあり、高校生ぐらいまで美大に進む気満々でいた。美大に行けなくとも、絵の道で食べていこう。本気でそう思っていた。
中学生ぐらいからパソコンを使うようになって、頻繁にインターネットを見るようになった。そこでよく目にした言葉は「絵の道で食べるのは厳しい」「美大 終わり」そんな言葉ばかりだった。
そんなことやってみないとわからないじゃないか、と思う一方で、だれが書いたかもわからない言葉にたくさん影響を受けていたのも事実だった。
結局私は当時、好きなことで将来を進む勇気がなくて、普通科の大学に進学した。
そして今。私は就職活動をしている。就活しなくても生きていける世の中で、私は漠然とした将来の不安から就活をすることを選んだ。
特にこれがやりたい!というものがなかったのもあるけど。とにかく私は、フツーに大学を卒業して、フツーに就職するという道を選んだのだ。
そんな中、私の周りで自分の夢を追いかけている友人が2人いた。
1人は私と同じ4年生大学に通う子。高校1年生から仲が良くて、もう5年以上の付き合いになる。
彼女は就活が嫌すぎて商業BLの世界で食べていくと決めてからは、コミケ時に得た人脈を生かして今連載に向けて頑張っている。
最近漫画がバズり、知名度も増え、夏から連載開始の話が進んでいるそう。彼女は今日、去年黒染めした髪の毛を青に染めるらしい。
もう1人も普通の大学生だった子で、同い年の服が好きな男の子。彼は高校年生の頃から服に興味を持ち始め、アパレルショップの店員といっても差し支えないほどに知識が豊富だった。そんな彼は来月、服に興味を持ってからずっと通っている店の面接を受けるらしい。
ふたりを見ていると、すごく眩しい気持ちになった。だって普通に考えて、漫画家もアパレルの店員も、一般的にお金がどうとか恵まれているわけではないと思うのだ。漫画家は不安定だし、アパレルは休みも少ない。それでも彼ら彼女らは、自分のやりたいことに正直になって、しかもその道に進むためにちゃんと努力もしている。
”普通”に縛られて、自分のやりたいことがわからなくなっていた私にとって、二人はめちゃくちゃかっこよかった。
就活をしていると、いや、していなくても、「一般的なこと」と「本当の自分の気持ち」の区別がつかなくなってしまう。
”普通”から外れるのが怖くなるのだ。
確かに「やりたいこと」をするのには勇気がいる。やりたいことを探すのも大変だ。しかし、私は本当はどう生きたいのか。何をしたいのか。そこから目を背けずに向き合って、そこで出てきた本音こそが、本当の「やりたいこと」なのだろう。
先月、就活を始めた時からずっと行きたかった企業に落ちた。それから一か月後ぐらいに、私はある夢を見た。
その夢の中では、私以外にもその会社に落ちた人がたくさんいて。夢の中の私もやっぱり、落ちていた。
だけど、夢の中の私はなぜかケラケラと笑っていた。
そして起きた時に思ったのだ。
別に高い車に乗れなくてもいい。大きな家に住めなくてもいい。リッチな生活ができなくても構わない。
それでも、自分の好きなことをして、生産性とかそういうことを気にせずに生きたい。自分がずっと好きな、アニメとか映画とか服とか、そういうサブカルチャーへの愛を捨てたくない。
そして死ぬときに、案外私の人生って悪くなかったなって思って死にたい。
今までずっと安全圏で生きてきた私。だけどこれからは、自分のやりたいことにまっすぐ飛びついていけるようになりたい。
いつか死ぬときに、「私の人生、結構良かったかも」って思えるように。
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