「スケジュール通り」で自分にマルをつけていく

「先ほどの取材の構成案を送ります。ご確認お願いいたします」
金曜日の夜7時半。メッセージを送り、パソコンを閉じた。返事がくるのは、おそらく週明け月曜の午前中になるだろう。構成の戻しをもらい次第、月曜中にざっと記事を完成させる。火曜AM中に最終の見直しをして、15時までには提出できる予定だ。

今月から始めたフルリモートのライティング案件は、事前に立てたスケジュール通りに進められることが多い。クライアントの間に立ってくれているディレクターとやりとりをしながら記事を書き進めるのだけど、さくさく仕事を進めてくれる人なので、だいたいこの位に原稿が戻ってくるな、という予測も立てやすい。

仕事を終えたあとはスーパーに買い物に行き、夕食を作った。今夜はグリーンカレーと、プチトマト&モッツアレラでカプレーゼもどきを作った。「もどき」なのは、正式な作り方をよく知らないから。とりあえずオリーブオイルとハーブソルトをかけてみたけど、これで合ってるのだろうか。

料理を終えてふと、最近なんだか調子がいいな、と思った。体調じゃなくて心が。心の調子が悪い時は、家事をまったくやる気にならないので、部屋は荒れるし、食事も買ってきたものばかりになるし、何ならお風呂に入るのすら面倒に感じる。でも、ここ最近はわりと人間らしい生活ができている。

ライター業を始めて10ヶ月。最初の内は仕事がなくてメンタル激弱りで、仕事が増えたら増えたで、ちゃんとできるかなと心配になったり、締め切りが重なってしまってストレスを感じてしまい、胃痛で夜眠れない、なんてこともあった。
暇すぎても忙しすぎてもストレス、って難しいなぁ。そう思っていた中でフルリモート案件を受け始めてから、心の平穏は訪れた。

自分で引いたスケジュール通りにきっちり物事が進むと、なんだかとても心が整うような気がするのだ。
いつまでにこれを完成させたいから、そのためには何日までにここまでいっていないといけない、と逆算してスケジュールを立てる。それをひとつずつ、自分が想定したペースできっちり進めていく。物をあるべき場所にストン、ストンと収めていくような感覚。

同じ「ライティング」でも、普段書いているような取材記事は、想定通りに進められることは稀だ。「この二日間で仕上げよう」とスケジュールを引いても、書き出しに迷ったり締めの文がどうもひねり出せなかったりして、結局もっと時間がかかる。こっちは、粘土のかたまりを前に「どんな形にしようかな」と考えて、ウンウン唸りながら理想の形をつくっていくような感じ。書いてて面白いのはこっちなんだけど、「果てが見えない不安」のようなものを感じてしまい、しんどくなることもある。

文章は、「昨日より今日、これができるようになった」というはっきりとした大きい変化は、あまりない。「いつもよりするっと書けたな」と思うこともあるけど、次にまた書くと今度はめちゃくちゃ苦労したりする。
「さくさく書けるようになる」なんて日は来るのだろうか。「生みの苦しみ」なんて言ったら大げさかもしれないが、この苦しみにはおそらく終わりはない。確固たる正解があるわけじゃないから、どんなものを書いても100%満足はできない。出来うる限りのベストは尽くすけど、「もっといいものが書けたんじゃないか」と、いつも思う。自分に満点を出せないのだ。

「元気がでないときは、終わりがわかりやすくて、達成しやすい低めの目標を立てるといいですよ。たとえば、『お皿を何枚洗う』とか、そんな簡単なことでいい」
というのを、何かの本で読んだことがあるが、まさにこれだ。スケジュール通りに物事が進むと心が整うのは、わかりやすい達成感を得られるからだと思う。「いつまでにこれをやる」と決めて、それが達成できたことで、自分にマルを付けられる。「ちゃんとできてる、大丈夫」と思えるのだ。

もうすぐ2時になる。今週は、やるべきことも、やろうと思っていたことも、たくさんできた。大丈夫、と自分に小さなマルをつけてから、眠りにつこう。

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中村 英里

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