長ネギが道に落ちている理由を真剣に考えたら過去の恋愛を反省したくなった

なぜ、長ネギはよく道に落ちているのだろうか。

先日、夕食の買い出しでスーパーに向かう道すがら、ずっと心の中にくすぶっていたこの疑問を彼氏に初めて話してみた。

そしたら、

「え? なにそれ、落ちてるのなんて見たことないけど?(笑)」

と、半笑いで返された。

一度も見たことない、なんてことあるの? と、愕然とした。

まぁ、よく落ちていると言っても、私も週に一回とかそんなハイペースで見るわけじゃなくて、何回か見たことがあるくらい。

32年の人生の中で何回かって、そんなに多くはないんじゃないの? と言われてしまえば、それまでだけど。

でも、物心ついたときからずっと、「道によく落ちている食べ物ランキング」で、少なくとも長ネギは上位3位以内には入るんじゃないか、という認識でいた。

なのに、見たことがない、と……?

私の認識が間違っていたのだろうか。

もしくは、私がこれまで見てきた道端の長ネギは、無意識のうちに長ネギを求めていた私の脳が作り出した、まぼろしだったのだろうか。

不安になって、「長ネギ 道」でネット検索をしてみたら、「ネギが道に落ちてる画像 (@negi_street)」というツイッターアカウントを発見した。

ユーザーが投稿したネギが道に落ちている画像をひたすらリツイートするアカウントで、スクロールしてみると、「道にネギ落ちてたwww」というコメントとともに投稿された、道に落ちているネギの画像がわんさか出てきた。

まぼろしじゃなかった……と、すこしほっとした。
やっぱり、毎日どこかの道路に、ネギは落ちているんだ。

ここでまず考えたのは、「なぜネギは落ちるのか?」ということ。

この答えは簡単だ。
スーパーでネギを買ったことがある人なら、誰でもわかるはず。

そう。ネギは長くて、スーパーのレジ袋からはみ出してしまう。
だから、落ちやすいのだ。

ここまではいい。

私が次に疑問に思ったのは、「落ちたネギは、そのあとどうなるの?」ということ。

ネギに限らず、道路にはいろんなゴミが落ちている。
これって、誰が掃除しているんだろうか。

気になって、調べてみた。

どうやら、道路には管理者がいて、その人たちが掃除をしているようだ。

管理者は、都道府県であったり、区市町村であったり、道によって様々なケースがあるようだが、一般人ではなくて、自治体が片付けをしているそう。

でも、掃除しているところなんて見たことないけどなぁと思ったら、夜中に、路面清掃車が掃除をしてくれているらしい。

なるほど。
ということは、道に落ちているネギは、夜中に片付けられているということか。

でも、そこで更なる疑問が生じる。

落としたと気づいたあとに、すぐに来た道を戻れば、見つけられるんじゃないの?

スーパーは、多くの場合は家の近所のはずだ。徒歩圏内、もしくは自転車か。

家の近所にスーパーがない場合は、車で買い物に来ることもあるだろう。
先ほどの「ネギが道に落ちてる画像 (@negi_street)」の投稿をたどると、駐車場に落ちているネギの画像もよく見られるので、おそらくそれは、「車で買い物に来て、荷物を積むときに落としちゃった」で、間違いないと思う。

それならわかる。
車でわざわざ戻るのは面倒だし、車で来ているということは、ある程度食材をまとめ買いしているということだから、ほかの食材でもその日の夕食はまかなえるだろう。

でも、私は東京生まれ東京育ちで、これまで住んで来た場所はいずれも、徒歩or自転車圏内にスーパーがある場所だった。

つまり、その私が落ちているネギを目撃しているということは、「落ちたと気づいても取りに戻らない人が多い」ということなのではないか。

もちろん、落としたあと、気づいて取りに来るまでの短い間に目撃している可能性もゼロではない。

だが、「ネギが道に落ちてる画像 (@negi_street)」で大量の道端ネギ目撃情報が投稿されていることを考えると、やはり取りに戻らない人が多い、と考えるのが自然なのではないか。

さて、ここで生じる新たな疑問を考えてみたい。
それは、「どうして取りに戻ってこないのか」ということ。

どこぞの家庭の夕食を、シミュレーションしてみよう。

「ただいまー」
「あ、ママお帰り! 今日ごはんなに?」
「今日はねぇ、まぐろと長ネギたっぷりのねぎま鍋よ。最近寒いから、風邪ひかないようにネギをたっぷり食べようねー」
「つくるのお手伝いする! (袋ガサガサ)……あれママ、ネギがないよ?」
「え……あれ? あれ?? 買ったはずなのに(レシートを見る)……やっぱり、お会計してる……ってことは、どこかで落とした……?」
「えー? 今日はねぎま鍋でしょ? ネギなかったら『ま鍋』になるの?」
「ならない! ならないよーそれじゃ鍋が成立しないよーーーースーパー行ってくる!」

このように、ネギがマストなメニューの場合だと、スーパーに戻るだろう。
そのときに見つける確率も高い。

ちなみにねぎま鍋とは、まぐろとネギをがっつり入れる江戸時代に生まれた鍋料理のひとつ。

私の出身地・浅草には有名な店が何軒かあり、わたしも家族で外食するときに食べることはあるが、ほかのご家庭含め、家ではつくることは少ないであろうメニューだ。

ところで、シミュレーションのときに、家ではつくらないようなメニューを思い浮かべてしまったことで気づいたのだが、長ネギがマストな料理って、そんなに多くないんじゃないだろうか?

私の手持ちの長ネギレシピが貧困な可能性もあるが、鍋の具材、炒めものの具の中のひとつ、そうめんの薬味など、なくても成立する料理のほうが多いんじゃないか。(これを読んでいる人の中に、生かじりするくらい長ネギ好きですけど、みたいな人がいたら非常に申し訳ない)

ということは、おそらく多くの家庭ではこのようなやりとりがおこなわれているのだろう。

「ただいまー」
「あ、ママお帰り! 今日ごはんなに?」
「今日はねぇ、鍋よ。最近寒いからね」
「つくるのお手伝いする!」
「あら、ありがとう。……あれ、ネギがない? 買ったはずなのに(レシートを見る)……やっぱり、お会計してる。どこかで落としたのかな」
「え、ネギ落としたの? ママドジだなぁ(笑)」
「そうねー、まぁ、今日はネギなくてもいいか」

そして、道路に落ちたままのネギは誰かの手によって写真におさめられ、「道にネギ落ちてたwww」というコメントとともに世界中に向けてツイートされる。

そのままネギは一人(一葱)ひっそりと夜を迎え、「星があまり見えないな、ぼくが収穫された千葉の畑で見ていた空はもっと綺麗だった……」なんて故郷に思いを馳せていたら、ゴウンゴウン……と物々しい音を立てて近寄ってきた清掃車によってごみとして収集され、そして破棄されるのだ。

悲しい。涙が出そう。ネギ、かわいそう……。

なかったら物足りないかもしれないけど、まぁべつに、取りに戻るほどでもないな、というポジション。それがネギなのだ。

「いなきゃいないで物足りない気もするけど、まぁべつに、戻りたいとも思わないな」

あれ……?

同じようなことを、私はよく考えていた気がする。

そうだ。昔は付き合っていた人と別れたとき、よくそんなことを思っていた。

もともと、そこまで恋愛にのめり込むタイプではなかったけど、彼氏なんていらないとまで考えてはいなかったので、ほどほどに好きになれそうな人と、ほどほどに付き合ってはいた。

別れる瞬間はそれなりに悲しくはなるが、しばらくたてばすぐに忘れる。

ふることもふられることもあったが、どちらにせよ「毎週末会ってたから暇にはなるけど、元サヤに戻りたいと思うほどではないし、まぁいいかなぁ」なんて思っていた。

ほかの人に聞くと「土砂降りの雨の中、別れたくない! って泣きじゃくって止めた」とか、まるでドラマの中の出来事かのようなエピソードがわんさか出てくる。

いや、好きなんだけどなぁ、私も一応。
なのになんでこんなに冷めてるんだろう。
私の「好き」のMax値は、人よりも低いのかもなぁ、なんて思っていた。

しかし、違った。違ったのだ。

単純に、好きじゃなかっただけだった。

まったく好意がなかったわけでもないが、「絶対にこの人がいい」という感情は、どの人に対しても持っていなかった。
だから、去る者追わずでいられたんだと思う。

なんでそのことに気づいたかというと、いまの彼氏のことは、絶対この人がいい、と思っているから。

いなかったら物足りない。
もしもどこかに落としてきてしまったら、必死になって探しに行くだろう。
ほかの食材じゃ、代用できないのだ。

でも、ネギだって。
ネギが好きで、落としてしまったらあわてて探しにいくという人もいるだろう。

私にとって、ネギがなくてもいい存在だっただけで、誰かにとっては、なくてはならない存在であるはずで。

「いなくなってもまぁいいかな」程度の気持ちで私が繋ぎとめていた間、元彼たちはほかの「どうしても好き!」と言ってくれる女の子との出会いを逃していたわけで。

そう考えると、申し訳ないことをしていたな、と思うのだ。

スーパーの一角で、手に取られるのを心待ちにしながら立ち並ぶネギたちを見るたびに、今日も世界のどこかに落ちているネギの姿が頭をよぎる。

あぁどうか、ネギが好きで好きでたまらない人に買われて、無事に家に連れ帰ってもらい、美味しい料理になれますように。


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中村 英里

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