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日本-中冨記念くすり博物館 レポ

ここへ行ったのは2021年8月だが、記録としてレポを投稿する。

訪問日2021/8/22

中冨記念くすり博物館は佐賀県鳥栖市にあるくすりの民俗博物館である。
かなり辺鄙な場所にあり、訪れるのに苦労した場所であったが、実際にあったイギリスの薬局を移設したものが博物館内にあるのと、製薬機器が間近で見れるので、なかなか面白い博物館であった。

日本は鎖国時代、長崎の出島で外国と貿易していたが、佐賀県もその影響を強く受けている土地で、様々な文化の流入があった。貿易では薬や医療知識の輸入も行われていたが、薬の産業が勃興し発展したのはここ佐賀県の田代と言う土地である。この地では田代売薬という薬の販売方法が発展し、力を得た。この博物館がこんな辺鄙な場所に作られているのは、この田代という地域が薬との縁が深かった過去があったからである。薬産業は今や佐賀県の産業の一翼を担っているという。

まず展示室へ入ると現代のくすりについての展示が見れる。「病気を治すのはくすりではなく身体です」という現代人が忘れがちな一言が最初に添えられていた。
新しい薬ができるまで、9~16年の歳月、200~300億にのぼる投資が必要で、開発成功率は0.004%…と書かれているのを見た時は、多大なる努力をして人は薬を作っているのだなと製薬会社で働く人々に対して畏敬の念が湧いたものだ。製薬会社は金の亡者と揶揄されがちだが、多くの人を救ったからこそ製薬会社には富があるのである。

アルバン・アトキン薬局

このヴィンテージ空間は、実際にあったイギリスの薬局をそのまま移設したそうである。すごすぎる。約2万点の資料が残されているそうだ。古い薬の瓶やパッケージが壁一面に並べられており、ヴィンテージ好きにはたまらない空間である。舐めるように見た。

ちなみにこの薬局内にあるボタンを押すとプロジェクションマッピングが映し出される。私は何か薬局や薬について解説してくれるのかと期待していたが、ただきれいなだけで解説は一言も無かった…。(残念)

薬瓶たち、かわいい…
咳止めや胃薬などのパッケージ
このブルーとイエローのパッケージは確かトローチ。違う薬効成分の入った種類がいくつもある。
私はネットでコカインの入りのパッケージを見たことがある。
まだアヘンが解熱・鎮痛薬として往生していた頃の解熱・鎮痛剤。トコンは催吐薬。
どちらも現在では使用が制限されている。
薬としてバリバリ現役だったころのキニーネやヘロインの入った錠剤

製薬機械

この博物館には製薬機器がいくつか展示してあり、どでかい製薬装置も間近で見れる。ヴィンテージの顕微鏡も展示されている。

蒸留装置
粉の薬をタブレット状にする機械


日本のくすりの歴史・生薬

二階展示室は日本のくすりの歴史や生薬に関する展示。生薬が展示されていたり、日本の薬屋の道具やパッケージなどが見れる。

本草綱目(16世紀の薬の本で、薬の歴史を調べてるとよく出てくる)がここで見れるとは…!
しかも大麻草が載っているページを見せてくれるとは…ファンサか⁈
壁に所狭しと並ぶ生薬たち。覚せい剤の原料にもなる麻黄も。
動物の生薬にも効能がキャプションに書かれている。化学的根拠が無さそうなものが多いが…
動物の生薬は魔術じみていて、当時の文化に想像を巡らせるのも楽しい。
日本の薬売りの薬箱。重さは20㎏で、これを担いで薬を売り歩いていた。


外国から輸入された薬瓶の展示には、ドイツのものが多い。ドイツは近代医学の発展に最も大きく貢献した国であるので、やはり日本にも多くドイツの製薬会社の商品が輸入されている。

アスピリンやヘロインを開発したバイエル社のくすり。ヘロインの瓶は流石に無かった。
メルク社はドイツ発の世界的な製薬会社で17世紀から操業しており、現存する製薬会社の中で最も歴史がある。
ちなみにMDMAを開発した会社でもある。
モルヒネ硫酸のビン


他に子供向けの体験型の展示や、薬用植物が植えてある庭園がある。庭園は私が訪れた時は雨天だったのと時間が押していたため見ていないが、かなり広いようなのでぜひじっくり見て欲しい。


中冨記念くすり博物館

入場料:大人 300円

営業時間:火曜日~日曜日 10時~17時


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