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穴は掘らないよ!!!!!

錦鯉の漫才の破壊力に圧倒される。
「お笑いとは裏切りである」という松本人志さんの言葉を知ったのがおそらく2020年末。そこから1年。
不意打ちを仕掛けて笑わせる敏腕漫才師たち。
普通を裏切るのにもっともシンプルな手段は「バカ」を演じることである。

漫才師がごまんといる中で,今最もポピュラーな「バカ」のアイコンは錦鯉の雅紀さんであると思う。
亀の甲より年の功,といわれる世の中で,50歳にして「バカ」の筆頭なんて。シンプルにすごい。

そんな錦鯉の漫才を見ていて考えたことをちょっと聞いてください。

M-1の漫才を聞いていて,なんかひっかかる部分があった。

(渡辺) 「合コンに行くの!」
(雅紀) 「いいよ行かねえで。穴でも掘ってろてめえは」
(渡辺) 「穴は掘らないよ。」

ここで「ん?」と思った。
穴でも掘ってろ→穴は掘らないよ ・・・?

「穴の開くほど見つめる」
「鼻の穴を膨らます」
「穴があったら入りたい」

ざっと考えても「穴」の入った慣用句や諺はわりとある。
なるほど,突然出てきた「穴」という言葉に,何かひねった返しが出てくる予感がしたのか。

でも、返しは至ってシンプルな単純否定。
それこそ,何か期待した私にとってはでっかい裏切りだったけど,笑う場面でもない。むしろ,合コンのシーンにつながっていく静かな繋ぎなのである。
なんで,単純否定なんだろう・・・?

自分の中で彷徨う気持ちが落ち着いた答えはそのままだった。

おバカの象徴。

気の利いた返しができたらおそらくバカではない。
言われたことをそのまま言い直して否定する=頭の回転が追いついていない という想像を膨らませることができた。
漫才のやり取りは一言一言でどんどん展開していくことが多い。だからこそ「停滞」のやり取りは珍しいと思う。時間のスピードを操って「おバカ」を体で感じさせている。

ただ,これがわざと入れたやりとりなのか,自然とこうなったのかまではわからない。
敢えてこのやり取りを入れて,「自然体おバカ」を印象づけたのか?
「穴でも掘ってろ」に合う返しを試して辿り着いた一番の返しだったのか?

どちらにしても,笑いをとらないところで漫才師のキャラクターを植え付けたんだろうな。あ~すごい!
漫才ってネタの寄せ集めじゃねえんだな。やり取り丸ごと,笑いなんだな。
すげえ。




いいことありますように!