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4.29 昭和の日

シナモンの風が香って、私は昭和のあの時代にタイムスリップした。

ラジオから流れる歌謡曲に、どうしてこんなに私の気持ちが分かるのかしらとワクワクしたあの頃。

春には列車のホームまであなたを見送りに行ったわ。

夏には色とりどりのアイスキャンデー、私の好きなイチゴ味。

秋には落ち葉を集めてお芋を焼いて、私たち今時じゃないわねって笑った。

冬になるとスキーは欠かさず、ゲレンデ効果でいくつものカップルが生まれたの。

携帯電話もポケベルも持ってない。
公衆電話の上、集めた十円硬貨のタワーを建てた。
それが緑のボックスにすいこまれていくほど早口になったものよね。

今ほど日本も世界も狭くなくて、離れたら半年だって会えないことの方が多くて、顔だってなかなか見られなかったけど。

近くにいた
そばにいた
本当の愛しか残らなかった。

アールグレイの風が香ると、また平成の世に意識が戻る。

手を繋いだ可愛いカップルが私の席の目の前を通った。

次の時代には次の時代の
新しい愛の形があるのね。

きっとそう。
だからもう振り返らずに
それぞれがそれぞれに
進んでいけるのだと思うのよ。

4.29 昭和の日
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