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11.23 勤労感謝の日

恥ずかしいから、顔を見ずに急いで家を出た。
お母さんは、私が小さい頃に煙になって空に昇ってしまった。
人の寿命はさまざまなのだと、おばあちゃんが私の髪を梳きながら言っていたのを時々思い出す。
私はずっと、そうなんだなぁと思って生きてきている。

お父さんは、寝坊やだから気づかないかもしれない。
でも、出来れば気づいて欲しい。
朝ご飯の目玉焼きの隣に、きょうは旗を振るタコのウインナーがあることに。

きょうだけは、特別。

「恥ずかしいから、ありがとうなんて言わないけど」
私のつぶやきは、鼻までぐるぐる巻きにしたチェックのマフラーに吸い込まれて、朝の空気までは届かなかった。

ありがとうと、頑張ってのサイン。
目を閉じて、思い浮かべる。
今頃目が覚めて、お父さんが欠伸をしながらリビングに入ってくる。
気づいて彼は、どんな顔をするだろうか。
学校へ向かう私の足取りが、少しだけ軽くなった勤労感謝の日。

11.23 勤労感謝の日
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