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早稲田大学表象・メディア論系講師(任期付)/Assistant Professor (…

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早稲田大学表象・メディア論系講師(任期付)/Assistant Professor (without tenure)/ミュージカル研究/Musical Theatre Studies. 演劇史やミュージカル研究の非常勤も。お仕事待ってます。

最近の記事

イギリスの紀要に論文が掲載されました。

ブリストル拠点の学術雑誌"Studies in Musical Theatre"のVol.14, no.2に論文が掲載されました。 『雨に唄えば』で知られる脚本家・作詞家ベティ・コムデン&アドルフ・グリーンが若い頃にコント・グループ「ザ・レヴュワーズ」の一員として取り組んだラジオ・ヴァラエティ『ファン・ウィズ・ザ・レヴュワーズ』について書いています。

    • 羽衣作品と仲良くなるための口パク〜FUKAIPRODUCE羽衣『スモール アニマル キッス キッス』

      実に5ヶ月半ぶりの劇場だった。9月3日、吉祥寺シアターにFUKAIPRODUCE羽衣『スモール アニマル キッス キッス』を見に行った。深井順子:プロデュース、糸井幸之助:作・演出・音楽、木皮成と根本和歌菜:振付という布陣である。 FUKAIPRODUCE羽衣(以下、羽衣)の作品とは水が合わないという自覚は常々持っているのだが、羽衣のキャッチフレーズである「妙ーじかる」を今回は口パク(リップシンク)で行うと聞き、これは見に行きたいと思って迷わずチケットを取ったのだった。

      • 森話社『演劇と音楽』に寄稿しました。

        森話社から刊行された論集『演劇と音楽』に寄稿しています。 所属している西洋比較演劇研究会30周年記念事業の一環です。 わたしは、ミュージカル作家コムデン&グリーンが1950年代半ばから1960年代半ばにかけて制作した二作品について書いています。 辻佐保子「コムデン&グリーンはいかにして「統合」と向き合ったか──『ベルがなっている』と『フェイド・アウト-フェイド・イン』の劇作術に見る美学」『演劇と音楽』森話社、2020年、pp.243-268.

        • 2020年上半期に見た作品リスト(演劇と映画中心)

          2020年も下半期に入ったので、1月から6月までに見た作品のリストを記録したい。 劇場に足を運び、肩が触れ合うほどの距離で隣り合い、音と光と動きと揺れを感じ、埃でくしゃみをしたりすることができない日々はしばらく続きそうだ。手垢にまみれた表現だけど、2020年が始まった頃には思いもよらなかった。 家に引きこもる日が格段に増え、上演の配信に触れる機会はありがたくも増えた。見て、見て、ある程度の額を劇場やファンドレイジングに寄付するの繰り返し。 どうか劇場や作り手が持ち堪えてほし

        イギリスの紀要に論文が掲載されました。

        • 羽衣作品と仲良くなるための口パク〜FUKAIPRODUCE羽衣『スモール アニマル キッス キッス』

        • 森話社『演劇と音楽』に寄稿しました。

        • 2020年上半期に見た作品リスト(演劇と映画中心)

          2020年度春学期「言葉とイメージ2」リーディング・リスト

          2020年度、早稲田大学では5月11日に授業開始となります。 それまでの間、自宅学習が捗るようにリーディング・リストを公開します。 この記事は、「言葉とイメージ2」を対象としたリーディング・リストです。今学期のテーマ「ミュージカルとアダプテーション」に即したリストとなっています。 なお、ミュージカルに関するリーディング・リストはすでに公開されているので、以下を確認してください。 ベンヤミン, ヴァルター.「翻訳者の使命」『ヴァルター・ベンヤミン著作集6』川村 二郎, 野村

          2020年度春学期「言葉とイメージ2」リーディング・リスト

          【5月8日更新】2020年度春学期「アメリカン・ミュージカル表現史」リーディング・リスト

          2020年度、早稲田大学では5月11日に授業開始となります。 それまでの間、自宅学習が捗るようにリーディング・リストを公開します。 この記事は、「アメリカン・ミュージカル表現史」を対象としたリーディング・リストです。 日本語文献を主とし、最後に英語でのミュージカル史および研究の入門書を書きます。 なお、「アメリカン・ミュージカル表現史」という授業の特性上、他言語・他地域のミュージカルや音楽劇についての文献は割愛させてください。 【5月8日更新】 オンラインで読めることができる

          【5月8日更新】2020年度春学期「アメリカン・ミュージカル表現史」リーディング・リスト

          翻案として半分巧み〜『アナスタシア』

          2020年3月20日、東急シアターオーブに『アナスタシア』を見てきた。 新型コロナウィルス感染症対策として開幕延期のあと、約一週間設けられた休演。わたしが見たのは再開初日だった。劇場ホワイエ(...をどこまで指すかが謎な構造なのだが)入り口ではアルコールスプレーの噴射と体温検知が行われていた。 この記事を書いている2020年3月24日現在、演劇を始めとしたあらゆる種類の「興行」の今後がどうなるかは分からない。政府による補償の保証はない、はぐらかされ自粛の要請でお茶を濁されて

          翻案として半分巧み〜『アナスタシア』

          自由さはあるが、手に余る〜『CHESS The Musical』

          2020年2月7日、東京国際フォーラムに『CHESS The Musical』を見てきた。 当初見にいくつもりはなかったのだけど、サマンサ・バークス大ファンの友人が大喜びしている姿に触発され、「ライヴでサマンサ見にいくか...!」という気分が盛り上がって気づいたら(ファンとは別の)友人にチケットを予約してもらっていた。 『CHESS』は、ティム・ライス原案・作詞、ABBAのベニー・アンダーソン&ビョルン・ウルヴァース作曲のコンセプト・アルバムから出発したミュージカルである。

          自由さはあるが、手に余る〜『CHESS The Musical』

          Why, Tom Hooper, Why〜映画版『キャッツ』感想

          2月1日に映画版『キャッツ』を見てきた。話題の、例の、件の、『キャッツ』である。 T・S・エリオットの『ポッサムおじさんの猫と付き合う方法』を原作に、アンドリュー・ロイド=ウェバーが音楽をつけたミュージカルである。ロンドン初演は1981年で、その時の演出はトレヴァー・ナンが、振付はジリアン・リンが担当した。 映画版はトム・フーパーが監督を務め、振付は『ハミルトン』で知られるアンディ・ブランケンビューラーである。 日本では劇団四季が定期的に上演を重ねている。ちなみに、わたしはラ

          Why, Tom Hooper, Why〜映画版『キャッツ』感想

          根のない「さりげなさ」〜You're a Good Man, Charlie Brown

          2019年芝居初めとして、1月10日にシアター風姿花伝に"You're a Good Man, Charlie Brown"を見てきた。 Sweet Arrow Theatricalsが昨年夏に同劇場で上演したものの再演である。 数年前にシアタークリエで別プロダクションが上演したのだが、見逃していたのでこの機会に、と思って見に行った。 Sweet Arrow Theatricalsは日本語ver.と英語ver.とがあり、わたしが見た回は英語ver.の最終日だった。ちなみに、格

          根のない「さりげなさ」〜You're a Good Man, Charlie Brown

          疾走しながら考え、語る〜二兎社『私たちは何も知らない』

          2019年12月12日に二兎社『私たちは何も知らない』を見てきた。作・演出は永井愛。 2019年12月22日まで東京で、その後全国各地での上演が予定されている作品であるため、ネタバレが気になる方は回れ右をしてください。 ↓   ↓   ↓   ↓   ↓ ↓   ↓   ↓   ↓   ↓ ↓   ↓   ↓   ↓   ↓ ↓   ↓   ↓   ↓   ↓ 平塚らいてう(朝倉あき)を中心に、「青鞜」の編集・発刊に関わった女性たちの議論と疾走の数年間を描いた作品で

          疾走しながら考え、語る〜二兎社『私たちは何も知らない』

          ダンスは超絶技巧で、ドラマは粗雑というバランスの悪さ〜松竹ブロードウェイ・シネマ『42ndストリート』

          9月半ばから年明けまで慌ただくなることが確定していたので、『ヘドウィグ』以降は演劇や映画のチケットを何も予約しないでいたのだが、みるみるうちに心がカラカラと乾いていったため、急遽10月19日に行ってきた。 松竹ブロードウェイ・シネマ第三弾『42ndストリート』。 1933年上映の映画『四十二番街』が、1980年にブロードウェイ・ミュージカルとして翻案され、2017年にウェストエンドでリバイバルされ、今回スクリーニングの運びとなった。 ちなみに、1980年のブロードウェイ版は

          ダンスは超絶技巧で、ドラマは粗雑というバランスの悪さ〜松竹ブロードウェイ・シネマ『42ndストリート』

          もっと野放図に、もっと緻密に、もっと大胆に、もっと戦略的であってほしかった〜六本木EXシアター『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』

          2019年9月5日、六本木のEXシアターで上演した『ヘドウィグ・アンド・んグリーインチ』を見た。ヘドウィグは浦井健治が、イツァークは女王蜂のアヴちゃんが演じた。翻訳・演出は福山桜子。歌詞は及川眠子。 『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は、ロック・ミュージシャンのヘドウィグが、自身のバンド「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のライブの中で半生を語るという形式を持つ。 東ベルリンで生まれ、西側世界のロックを聞いて育ったハンセルは、アメリカの軍人ルーサーと結婚して渡米す

          もっと野放図に、もっと緻密に、もっと大胆に、もっと戦略的であってほしかった〜六本木EXシアター『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』

          形式に対して解像度が粗い〜『ダンス・ウィズ・ミー』

          日常生活の中で突然歌い踊ってミュージカル・ワールドに没入しはじめたら、唖然とされる。かと思えば、ミュージカルに対する反発を熱弁したら、白い目で見られる。 結局、この世界はミュージカルをどう位置づけたいの? 『ダンス・ウィズ・ミー』は、「ミュージカルをやりたかった」けれど「ミュージカルに対して疑問を抱いていた」という矢口史靖監督の新作である。 8月31日に見てきた。 ミュージカルという形式の核心を作品の出発点にしていることで、楽しみにしていた。だが、肝心のミュージカルに対する

          形式に対して解像度が粗い〜『ダンス・ウィズ・ミー』

          「手に余るもの」が引き直す地図、外に出るか、屈するか、別の姿を聞き取るか〜東京芸術劇場シアターウェスト『福島三部作』

          2019年8月26・27日と二日間にかけて、東京芸術劇場シアターウェストにDULL-COLORED POP『福島三部作』を見てきた。26日は第一部『1961年: 夜にのぼる太陽』と第二部『1986年: メビウスの輪』を、27日に第三部に『2011年: 語られたがる言葉たち』を見た。 脚本と演出は谷賢一。すでに各所で述べられているように、福島の原発と浅からぬ縁がある谷が約三年間現地調査を重ねて作り上げられた大作である。 福島県双葉町に生きる穂積家の三兄弟。それぞれが各部の主人

          「手に余るもの」が引き直す地図、外に出るか、屈するか、別の姿を聞き取るか〜東京芸術劇場シアターウェスト『福島三部作』

          可能性を感じさせる作品〜TipTap『フリーダ・カーロ 折れた支柱』

          2019年8月6日、TipTapのオリジナル・ミュージカル『フリーダ・カーロ 折れた支柱』を見てきた。脚本・演出は上田一豪、音楽は小澤時史。彩吹真央、今井清隆、石川禅など、大劇場に立つことが多い俳優陣を小さな劇場で見られるのは贅沢だった。 タイトルの通り、メキシコの画家フリーダ・カーロの生涯に焦点をあてている。実在の人物の死から始まり、語り部によってその生涯が語り直されるという趣向は、『エビータ』や『エリザベート』を彷彿とさせる。 本作品での主な語り部は石川禅演じるレフ・ト

          可能性を感じさせる作品〜TipTap『フリーダ・カーロ 折れた支柱』