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転生vol.2

昨夜の彼女は、一体何者だったんだろう?

僕は朝からそんなことばかり考えていたせいで、その日はたくさんミスをした──いつもミスばかりなので偉そうなことは言えないが、仮にいつもの5倍、小さなヘマをやらかしていたとしておこう──。その事で同僚達はいつにも増してハッキリと僕に分かるようにため息をついていた。

意気込んで「僕を辞める」なんて言ったけど、結局、夢だったんじゃないかな?

彼女は、別れ際、僕に勝手に名前をつけた。
「せっかく新しく生まれ変わるなら、名前も新しくしましょう?“新しい心“って意味を込めて、“しん“とか、いいと思うの。それじゃ、しんくん、またね!」
突然そう言われてしまったせいで、連絡先を聞くのを忘れてしまった。
またね、、、か。
もう二度と会えない気がした。



今日は飲まずにまっすぐ帰ろうと、改札を出て家路に向かうと、後ろから「しんくん!お疲れ様!」という声が聞こえた。自分のこととは気づかなかった僕はそのまま歩いていたら今度は腕を掴まれた。
「しんくんってば!待ってよ!」

真っ黒いビジネススーツに身を包んだ、彼女だった。

「あ、、、」

「あ、って何よ 笑  
    もう。何度も呼んだのにぃ。今、帰り?」

夢ではなかったようだ。
僕のことを耳慣れない名前で呼ぶ彼女は、着飾っていなくても、美しかった。
お酒って気分じゃないのなら、少しだけお茶していこうということになり、喫茶店に入った。

「で?何か変わった?」
昨日の今日で、そんなに変われるものじゃないと、僕が言うと、形なんてあとからいくらでも変わるのよ、まずは気持ちを変えないと、と少し呆れたように微笑んだ。

「気持ちか、、、。何をどうすればいいんだろう?」

自問自答するようにつぶやくと、そんな僕をニコニコとしながら見ていた彼女はこう言った。

「昨日聞かせてもらった話だと、ご友人の言う通り、しんくんは優しすぎるんだと思うのよ。しんくん、人のお話聞くの、得意でしょ?それって恋人としてはとても魅力的だけど、ビジネスでは裏目に出ることもあると思うのよ。上司からの理不尽な命令とか、後輩の考えの甘い愚痴とかは、話半分で聞き流さなきゃ。
まぁ、でもね。私はしんくんにビジネスのノウハウを教えたいわけじゃないの。

しんくんさぁ、バーテンダーにならない?」

100人いたら100人が同じように困惑するであろう、彼女の突然の提案に、僕は当たり前のように戸惑った。

「僕なんかが…ですか?」

「まずはその、なんか…って言うのをやめましょうか♪
   ねぇしんくん。あなたって、とっても魅力的よ?」


つづく


読んでくださるだけで嬉しいので何も求めておりません( ˘ᵕ˘ )