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⑬ポールスミス

貴方の身につけているものの中で、1番多いアイテムがここのだった。


クリスマス。
サプライズプレゼントの中身のお話。

寝ている間に貴方のクローゼットを探ったら、あのカラフルなストライプのタグだらけだった。ワイシャツやスーツだけじゃなくて、下着や靴下までもがポールスミス。これはもう、この店で買うしかない。

アクセサリーを一切付けていなかった貴方。
洋服や鞄は、学生の私には、どれも高くて手が出せない。だけど、ここ以外に貴方に似合うものを見つけられる気がしない。
色んなデパートのポールスミスで、何かないか、しばらく探して、思い出した。そういえば、貴方と歩いた原宿の大通りに路面店舗があった。結構大きな店舗だったし、あそこなら何か見つかるかも知れない。
そう思い立って、あまり好きではない、渋谷で降りて、原宿方面へ歩く。貴方と歩いた道というだけで、好きではなかった街に親しみが湧いてくる。

お店の中に入ると、なるほど、貴方が好むのがよく分かる。迎えてくれた店員さんは、どことなく貴方のセンスと似ている気がした。
パンツや靴下は手頃だけど、クローゼットにたくさんあったし、、、。私がプレゼントしたら、アクセサリーくらいつけてくれるような気もした。だけど、私は何もつけていない貴方が好きだった。

困っていた私に店員さんが声を掛けてくれた。
正直に予算を伝えると、店員さんは
「彼氏さん、眉毛整えてますか?」
と聞いてきた。
一瞬、なぜ眉毛なんだろう?と思ったけど、いつもちゃんと整ってますと答えると、それならぴったりなものがありますよと言って、持ってきてくれた。
眉毛鋏と、毛抜きが入った緑の革の鋏ケース。
ポールスミスらしいマルチカラーのボーダーが縁どりにだけ使われていて、とても素敵なデザインだった。
貴方がちゃんと眉毛を整えていたり、お洒落に気を遣っていたり、そういうところが大好きだったから、こういう小物をプレゼントに選べることが嬉しかった。
お部屋はいっつも散らかっているのに、外で会う貴方はいつもきちんとしていた。
私の前で見せるだらしなさと、隣を歩くだけでドキドキする格好良さ。
私、貴方に恋してた。
そして、同時に…

愛していた。


今でもポールスミスの店舗を見ると、

貴方に直結する。

読んでくださるだけで嬉しいので何も求めておりません( ˘ᵕ˘ )