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❼臍

貴方のメールの文章は、ふとした時に急に難解な記号になる。意味を解ろうとしても、追いつかず、でもどんな言葉も大切だった。
絵文字多用の軽い言葉はひとつもなくて。
文字から言葉から文章全体から…貴方であることが伝わってくる。

いつだったか、貴方がメールの文末に添えた字。

「臍」

この漢字が読めなくて、スマホがない当時、読み方の分からない漢字を調べるのは大変で、、、。

調べた結果、ようやく読み方が分かっても貴方の言いたいことが分からなかった。
何で、へそ?
返信に困った。

次に会った時に意味を尋ねると意味なんかなかったです、何となく…という答えが返ってきて益々困った。

小説や脚本を書いていた貴方の言葉は、難しい漢字も多かったし、概念的な表現や抽象的な言葉も多かったから、その度に意味を調べて、貴方の世界観についていくのに必死だった。
あれからというもの、私が使う言葉も変わったと思うんだ。最初は意図して真似っ子していたことがいつの間にか無意識に自分のものになっていく。そういうこと一つ一つが貴方と一緒にいた時間の存在を証明してくれる。

時代が流れて、携帯は何度も機種変して、スマホでLINEをするようになっても、その時使っていた携帯は日記のように大切にしていた。

貴方がくれた言葉たちが詰まっていた、その携帯電話を失くした日、すでに隣にいない貴方をもう一度失った気がして、うまく立ち直れなかった。
既に何度も読み返して、覚えてしまっていたとしても………。


貴方からのメールは、貴方そのものだったから。

読んでくださるだけで嬉しいので何も求めておりません( ˘ᵕ˘ )