寺嶋由芙2ndアルバム『きみが散る』リリースイベント(ららぽーと豊洲)


他所へ行こうと思っていたのだけれど、散歩をしているうちに道に迷うという失態で断念。 間に合いそうだった寺嶋由芙リリイベを素見。
運河沿いの道からイベントスペースに廻ると、既に始まっていた。

寺嶋由芙は相変わらず挙措が綺麗で、これみよがしではない形で解りにくく歌が巧い。 高いレベルで均質なので生歌感は強くないのだけれど、しっかり歌っていて、張り上げないので耳に優しい。 

吐き出す言葉は甘い声でありつつ仄かな毒があり、その毒で飼い慣らされた客が意のままに操られるさまが観ていて楽しい(が、その輪の中には入りたくない)。

「撮禁」「コール禁」「奇声禁」など規制アリアリの会場でどう盛り上がる(盛り上げる)かについての演者側と客側の阿吽の呼吸。
寺嶋由芙がヒントを与えると、客は輪になって「世界一ゆるいサークルモッシュ」でぐるぐると。
さながらお釈迦様の掌の上で踊る一遍上人の末裔。

客と演者、互いの距離の計り方、取り方が上手い。 
オープンスペースでのイベントは、演者と目当てで来ている客だけで成り立っている訳ではなく、通りすがった買い物客に見て貰う知って貰うことに意味がある。
そして通りすがりの客には「演者と客をひっくるめたもの」が見られており、「作り出された賑わい・祝祭感」が通りすがりの客を引き寄せる。
それを解った上での客の振る舞い。 良く出来ている。

客としては楽なのだけれど、選択の自由の幅は狭いような気がして、好意的には見つつも、その輪の中には入りたくない。
良くは出来ており、破綻もないのだけれど、その分曲が無いと言うか、何と言うか。
我ながら贅沢なものだとは思うが、雑味が無い分、一と味足りない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?