第351回サニーホール落語会 『三本の矢 ~ズッコケ三人組~』

その後色々有って別々の師匠の元へ分かれたが、元々は同じ一門だった三人の、年に一度の会。
二ツ目になって始めた会なので、もう十年になるのだそうな。
一番「色々あった」立川吉幸も、この春真打ち昇進。

「寿限無」縄四楼
「短命」吉幸
「花見の仇討」志ら玉
<中入り>
「崇徳院」左平次

小体な会場で且つ、コンサートホールだけあって響きも良い、なのでマイク無し。
前座の芸をどうこう言っても仕方がないのだけれど、声が通らないのはいただけない。
上下が振れていないとか、細かく言えばキリが無いが、巧拙以前に声が出せていないのはよろしく無い。
「うーむ・・・」と思いつつ客席を見渡すと、瞑目したり俯いたり。 通り過ぎるのを待つ形。
入門して丁度一年とのことだったが、その一年は納得の行く一年だったのだろうか。

閑話休題。
三人三様、それぞれの「らしさ」が出ており、楽しく聴けた。

「短命」
例に依ってマクラでたっぷりボヤいて、笑いやすい空気を整えてから本筋へ。
寄席ではなく、気心の知れた客の多い会とあってか、クスグリもこってりと。
カラッと明るいので、こってりしつつもクドくはなく、この人ならではの噺。

「花見の仇討」
芝居掛かった科白と見得の切り方、これみよがしにならない程の良さ。
素でどうかしている人の「どうかしてる」っぷり、それに振り回される人の吐き捨てるようなボヤきが楽しい。

「崇徳院」
奇を衒うような演出もなく、淡々と進むのだけれど、可笑しい。
噺の筋に身を任せてヘラヘラ笑っているうちに終わる、草臥れない芸。
都市対抗に絡めたクスグリなどは、意味が通ずる客も減ったと思うが、なんだか良く分からない可笑しみのようなものは伝わるのではないか。

高座には出たり出なかったりするが、三人が三人とも、芸人になるべくしてなった或る種の狂気のようなものを身に纏っている。
初めに選んだ師匠が誰なのか、それが芸人としての芯の部分を作っている。
(2019.03.24記)


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