『Four for you!!』vol.3(30.03.04)

知己が主宰するお芝居へ。
会場は高円寺の高架下にある、落語などをやっている「HACO」と言う箱。
凝った照明などはないし、舞台も低く狭いが、上手下手から入り捌けは出来る。
最低限+αくらいの環境は整っているが、のべつ電車は通るし、近隣の飲み屋で酔漢がオダを上げれば聞こえても来るのだけれど、芝居が始まると然程気にならない。
演者と観客の距離感としては申し分なく、心地よい空間。

1時間程度の尺、四人の作家による四本のシナリオ、四人の役者。 出てくるのは二人だったり、三人だったり、四人だったり。
白いシャツに、暗い色のボトムス(スカートだったり、スラックスだったり)、大道具は椅子程度、小道具も役柄を象徴する最低限のもの。
科白と演技で物語を紡ぐ。 現代の狂言のような感じ。

「変身」

スーパー戦隊のレッドに選ばれた女性と選んだ博士。
変身アイテムを渡されるも、変身の仕方が決まっていない、博士にも分からない。
敵が迫る中、ポーズと名乗りを試行錯誤しているうちに、焦りからどんどんおかしく成って行く。
(脚本:浦木 緋人 演出:谷口健太郎 出演:谷口健太郎、服部美香)

「絶体絶命(仮)」

友人が亡くなり、家族あての遺書から遺品整理を頼まれた幼馴染、学友、趣味友の「親友」3人。
部屋から出てきた「本当の親友」宛の遺書を誰が開封するか、始まる鞘当て。
(脚本:はつた すみ 演出:谷口健太郎 出演:井上麻美子、きむらゆうか、服部美香)

「Man-hole」

暗いマンホールと思しき深い穴の中。 落ちてしまって閉じ込められた二人。
抜け出すために頑張るべきか、頑張る価値のある明日なのか、振り出した雨に濡れながら救われずに終わ・・・ろうとする物語、初めての救いのない結末を書こうとする作家に、登場人物が意義を申し立てる。
(脚本:谷口健太郎 演出:谷口健太郎 出演:井上麻美子、きむらゆうか、谷口健太郎)

「TO」

小劇場の楽屋口、役者の出待ちをする三人の女子。
それぞれがそれぞれの思惑を抱えつつの駆け引き、出し抜きたい一人の暴露から「つながり画像」流出の連鎖。
出てきた役者へ詰め寄る三人、平謝りからの居直り。 詰むや詰まざるや。
(脚本:金巻 ともこ 演出:谷口健太郎 出演:井上麻美子、きむらゆうか、服部美香、谷口健太郎)

以下、思うところなど散文的に。

「変身」、暗黙の了解になっている設定が実は決まっていなかったらと言うお話。 梯子を外されたレッドになるべき人の懊悩からの狂乱。 やる気に満ち溢れた服部美香が徐々に壊れていくさまが楽しい。

「Man-hole」、まぁ生きていれば、10年から働いていれば、何をしていても閉塞感は出てくるし、そこから抜け出せる希望も薄らいでくる。 さらに厳しい状況に追い込まれたときに、希望を持てるか持てないか。
持ちにくくてもギリギリのところで突き動かしてくる何か。
人生消化試合でも、降りるわけには行かない。

「TO」、その前の三本の芝居を無理やり伏線にして、谷口健太郎を追い詰める脚本。 自虐的に自らを追い詰めていく演出を「強いられている」のか「率先してやっている」のか、「自棄糞」なのか「ノリノリ」なのか、谷口健太郎の社畜魂に震える。

「絶体絶命(仮)」、年代ごとにも、趣味道楽のジャンルごとにも、付き合いの深い友人は居て、友人同士のつながりは無いことの方が多い。
この世を辞するにあたって、なぜ不在の主人公は意味深長な遺書を残したのか。 仕掛けた悪戯の意味。

誰が開けるかで揉めたときに出る地金、そこから見える人となり。
形のない形見分け、友達と友達とを繋ぐことが目的だったのではないか、そんなことを考えた。

四本とも説明しすぎない、結末の解釈を見るものに委ねる。
観客を信じている、心地よい芝居だった。

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