キヌアのサラダ

ピクニック的な物へ手料理や弁当を持って行って「皆で食べましょう」となると、大体に於いて万人向けのもの。 例えばおむすびであったり、唐揚げであったり、そういう物を持ってくることが多い。
けれども、その子が持ってきたのは、密閉容器に入れた「キヌアのサラダ」だった。

キヌアというのは南米原産の雑穀で、丸い粒状。
水で洗ってから炊いたり茹でたりしたものと、細かく刻んだ生野菜と混ぜて味を付けてある。
咀嚼するとキヌアがプチプチと弾けるのが面白い、酸味とタマネギの辛み、クミンの香りが鼻の奥に抜ける。

食べ付けないからか、皆すこしずついただいて、残りは持ってきた子が食べていたが、自分の好きなものを持って行って皆に食べて貰おうとする善意と、その善意が上手く伝わらなかった寂しさのようなものが、食べている姿から漂っており、見ていて一寸切なかった。

控えめで上品な味付け。 一寸癖があって分かりにくいけれど、噛みしめると意外なおいしさがあり、爽やかな後と口。

作ってきたその子によく似たサラダだった。

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