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スリジエ 2nd ワンマンライブ

会場へ

ステラボールは映画館や水族館と同じエンターテインメントタウンの一角にあり、待機スペースが少ない。
その為、物販は開場の二時間前に始めて、入場も整理番号で切って目安の時間を示していた。
TPOより自分の楽しさを優先する人は一定数存在するのは仕方のないことであり、それを前提にして最悪の事態を想定しつつ、そうはならないように仕切ろうとしているのは見て取れた。

入場

入場すると前方5列くらいはい椅子席。 私の居た下手側の端は、椅子と共に車椅子などでも見られる場所として確保されていた。
猪狩ともかの件もあってか、こうした配慮が分かりやすくなされている点は評価されてしかるべきだと思う。
惜しむらくは、椅子席を着席観覧前提にして置かなかったため、ライブが始まると共に殆どの客が立ってしまった事。
こうなると目線が低い状態で見ることになる客の視界は遮られてしまう。

前から後ろまで床が真っ平らなステラボールの構造にも起因するのだけれけど、椅子席は着席前提にしておかないと、立ち見後方の視野欠けが生じる。
それを緩和するためにステージを高くし、段差を付け、階段やバルコニーを設置していたのだとは思うが、立ち見二列目でも既に見やすいとは言えない状態だった。

(※この辺りは開演前に採ったメモであり、終演してみれば瑣末な問題に感じられるような、素晴らしいライブだった。)

ステージ後方上手と下手にお城を模したバルコニー。
Y字型に階段が付けられ、背後の壁はスクリーンになってている。
中央から一本になって降りてくる階段にはレッドカーペット。
王道を征くセット。

立ち位置の事前告知を総合的に勘案して下手に位置取ったのだけれど、横幅の広いステージであり、中央から先の上手側は目が届かなかった。
よって「下手側から見た感想」になってしまっている事を先にお断りしておく。
上手側でも、素晴らしい何かが垣間見られたであろう事は、想像に難くない。

オープニングアクト

オープニングアクトとして、東西の候補生。
演り慣れている曲とは言え、きっちり揃えて来ているところに意気込みを感じる。
愛川りらのMC進行も落ち着いていつつ、痒いところに手の届いたもので、実に良かった。
今出来ることをきっちり遣り切って上を目指す姿勢を上に立つものが示す事は、候補生全体にも良い影響を及ぼすと思う。
何をすれば上がれると言う「正解」が無い中で、自分なりの「最適解」を求める。
これは今後の人生に於いても、幸せを手繰り寄せる為のヒントになる。

候補生の中で目を惹いたのが葉月らむ。
タメのある円の動きなので、スカートが綺麗に、意のままに翻る。
起点から終点までが長く大きな動きになっているのだけれど、スーっと動いてピタリと止められているので大袈裟には感じないし、タイミングも外れない。
単位時間内に処理できるギリギリの仕事を詰め込んでいて、ギリギリなようには見せない。
良く出来ているのだけれど、これみよがしではない。
「こんなに良かったっけ?」と驚く。

候補生の大人組は総じて丁寧、全体的には元気一杯。

下手の隅に移動した大神彩のソロパート、舞台中央では群舞。
ワンマンライブならではの、人数が揃っているからこそ出来る趣向。

夢ドリーム
恋は不思議さ
Treasure☆︎Green(※候補生用の新曲)

研究生はオリジナル曲のお披露目も含めて3曲で終了。
短い時間の中に「精一杯」を詰め込んでいた。

一旦客電が点いて仕切り直し。
扱いとして「前座」だったのだな、と、世知辛さを噛みしめる。

本編開演

再び客電が落ちて、本編開演。

セットリスト(※森崎志桜里さんのブログより拝借)

SE
春風プリエール
ミメミモメモミユメミモミ
You are No.1
MC
コノユビトマレ
ドラマティックな恋じゃなくていい
恋の呪文スリジエ
MC
ほろにがジャスミンティー(風組)
フライングサマー(雲組)
初恋とアレルギー(虹組)
真夏のカレの落とし方(宙組)
未来インビテーション
君のそばにいるよ
クジラの眠る星空に
MC
さくらエール(星組)
君は春でした(天組)
サマーシーサイドストーリー(月組)
MC
Berry Days
トレジャーハンター
叩き上げガール
憧憬れロマンチック
MC

〜アンコール〜
MC
スタートライン
ジョバンニ

新しいオーバーチュアに乗って、組ごとに入場。

全体曲は横長の舞台全体に広がりつつ4列。
最後列は一段高くなっており、虹組の年少メンバーが人混みに埋もれぬよう配慮。

一列目は納得の人選。 二列目も「居て欲しい人」がしっかり仕事をしている。
以前は後列に居た、例えば野﨑ゆりか。 表情も振る舞いも二列目としての貫禄が出ている。

後列で目を惹いたのは仲瀬カナタ。
4列目であり、目立つパートの割当も少ないのだけれど、的確な動きで年少メンバーの多い一角を引き締めていた。 振り付けの動きの終わりの「留め」の部分が美しい。
何と言うか、「誰かが自分を見ている」ことを確信している。
目立たない位置でも手抜き無し、悪目立ちするためのケレンも無く、誠実に確実に丁寧に、自分の持ち場で仕事をして居た。
メンバー内での評価が高いのも頷ける。

下手の要、英未希。
最前列だけれど、一番端。
しかし居ると居ないでは大違いで、場を締めつつ、華やかさを添える。
「叩き上げガール」の落ちサビも良かった。 澄んで良く通る、鈴を転がすような声。

「スカートの裾を持て余す」の歌詞の部分、スカートを引き千切る勢いの夏野りん。

アンコールへ

本編終了。
客電は点かないが、客の灯し続ける電池式の光る棒で完全には暗転しない。
これは光る棒を振る文化の負の側面だと、私は思う。

自然発生的な手拍子からのアンコール。
誰が始めるかの鞘当てとか、どの勢力がヘゲモニーを握るかの出し抜き合い潰し合いのような奇習に毒されていないのは良い。

アンコール一曲目の前にコメントを求められた青葉桃花。
オーディションに落ち続けている間に歳を重ねてしまっていたと言う話など。
ここまで出来る人でも落ちるオーディションが有ったのかと言う驚き。
禍福は糾える縄の如くあり、紆余曲折を経て「相応しい居場所」を得たように思う。

この人の為に書かれたような「クジラの眠る星空に」は勿論、曲ごとに見せる自分を変えて来る。
グループのために自分を殺しすぎたり、「可愛い」「綺麗」「凄い」のバランスがちぐはぐだった時期もあったが、今は曲ごと場面ごとに「必要とされる自分」を使い分けられているように感じられる。
もっと利己的でも良いのではないかと思うこともあるが、出来るけれどそうはしないところもまた美点。

アンコールの〆は「ジョバンニ」。
怪我もあってアンコールのみ出演の花咲ヒアラが落ちサビを担当。
見せ場を与えられるだけの力量もあり、花の持たせ方も良い。

〆の挨拶。 目標は「一年後に(埼玉)スーパーアリーナ」と中丸葵。
難しいことは十分解った上での提起。
「難しいこと」は、メンバーより大人の職分に於いて解決すべき事が多いと私は考える。
(それは別稿にて。)
立て板に水の能弁ではないが、ひとつひとつ言葉を選んで話すからこその説得力。
何を頑張るのか、改めて振り返るとよく分からないが、その時は「客も頑張らねば」と謎の使命感さえ覚えさせる。
劉備・宋江型の、「徳」で由らしめるリーダー。

以下雑感。

月組
見せ場をきっちり「自分の時間」にする山本あこ。 なるべくしてなっているセンター。
本日を以て休業期間に入る徳守野乃。 感情のゆらぎを欠片も見せず、飄々と。
明るく楽しく「だけではない」、しっとりした大人としての才川つむぎが見られたのも収穫。 
美南衣里が馴染んでいた。 「月組」としての色も定まってきたように思う。

星組
活動休止期間の有ったメンバーが三人居るが、ブランクは感じさせずにチームとして纏まっている。
大人(と「大人っぽい」10代)が揃っているので、全チームの中でも安定感は一番。
この面子に入った青葉桃花は、一と際見応え聴き応えがある。

虹組
「星木・夏野」「桜井・南・塩野」でセット。 この五人での振り分けとしてはしっくり。
ここに花咲ヒアラが入るとどう変わるか考えながら見る。

夏野りんの、あまり得ではないながらも必要不可欠な役回り。
二年後三年後の成長の肥やしになると思う。

風組
独特の空気感と時間を身に纏う加音綾那の強烈な個性を、下士官上がりの叩き上げが実力で中和。
独立愚連隊的な危うさはあるが良いバランスだと思う。
田中玲衣奈の楷書と言うか隷書と言うか、きっちりした振り付けに瞠目。

宙組
これみよがしな所はこれっぱかりも無いが、さらりと演って見る者を唸らせる吉井あずさ。
いつものショートボブに編み込みが入り、「意気込み」を感じさせる茜紬うた。
ゆっくりと、しかし着実に伸びている石原由梨奈。 小手先の変化に逃げずに真っ向勝負なところが良い。
欠けたピースの事をどうしても考えてしまうが、チームとして、今出来ることに対して誠実だったように感じられた。

スリジエWEST
予備知識無しで初めた見たので、誰が誰やらの状態だったが、上方ならではの話の回しと起承転結の上手さは流石。

新衣装
新衣装は白のツーピース。
上着はセーラーカラーのジャケット。
これまでのナポレオンジャケット調の上着は陸軍、新衣装は海軍。
これを脱ぐとデコルテの部分にレースの入ったワンピースになる。
採寸されて裁断・縫製された事を伺える、体型にフィットしたもので、これまでの衣装を踏襲しつつ、より清楚且つ華やかに。
スカート部分はチームごとに形が異なり、上着にもスカートにも差し色でピンク。
体型により差があるが、総じて膝上の短めの丈。
内側にはパニエがたっぷり。 クリノリンを入れたように膨らんでおり、回ると奇麗に翻る。
翻っても事故が起きない構造も継続。 細部まで考えられた良い衣装。

書いても書いても書くことが増える。
あっという間に感じたが、振り返ると濃密な上にも濃密な二時間半であった。
いつもなら会場雑感などを撮って帰ってくるのだけれど、そんなことすら忘れる程、感動の総量は多かった。

纏まらないなりに纏めて、一と先ず筆を置くことにする。

(2019.07.16 記)

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