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古のお笑いオタクが見る旧どついたれ本舗のワンチャン生きてる感

なぜか2021年に入ってヒプノシスマイクというコンテンツに目覚め、2nd DRBおつかれさま~~ポッセおめでとう~~~オタ活楽しい~~~!!のテンションのままこの記事を書いています。

興味を持って閲覧してくださった方、ありがとうございます。

これは古のお笑いオタクがヒプマイに登場する漫才師、通称「旧どついたれ本舗」について、「この現実に存在してたら」のIFを考察するまとめです。

前提として、コンテンツ本筋とは別領域のオタクが自己解釈強めのマジレスをするナンセンス満載の記事なので、お手にとってくださった方、まずはじめの注意書きを一読いただけると幸いです。

ネタバレを多分に含むため、コンテンツ未履修の方は要注意。

0. 注意書き

0-1. 筆者の背景、履修済みコンテンツ

ブラマヨ・チュートリアル(それぞれ2005、2006年M-1グランプリ王者)からお笑いにハマり、ゆるゆるとコンテンツを見続けていたふんわりオタク。

お笑いにおける推しは記憶に新しい2020年M-1王者マヂカルラブリー。野田さんがガリガリタンクトップだった頃からのファン。早くKOCタイトルとって真のお笑い王になってほしい。

また生まれも育ちも関東の人間。まさかのお笑いの聖地、大阪の劇場に足を運んだことがないので、コロナが落ち着いたら行ってみたい。

ヒプマイはオオサカ推し。キャラ単位で肩入れしているのは盧笙。

履修済みコンテンツは以下の通り。本記事では、旧どつの芸人時代に焦点を当てたコミカライズをメインに考察を進めます。

ドラマトラック Aikata Back Again
ドラマトラック Aikata(s) Back Again
コミカライズ オオサカ&ナゴヤ(Side D.H & B.A.T) 4巻まで
** 付属のドラマトラックについてはあらすじのみ把握

ヒプステ(舞台)および公式ファンクラブは未履修

0-2. 考察に使用する参考資料について

上述の通り筆者の出自の関係で、旧どつがオオサカに軸足をおいた漫才師であるにも関わらず、関東圏を主戦場とする芸人さんの証言を元に考察している箇所がいくつかあります。

またTwitterとかで拾った、筆者がソースを確認できていない情報をもしかしたら使ってしまうかもなので、公式と異なる記載を見つけた場合は指摘いただけると嬉しいです。

文章の埋め込みリンクは概ねテレビ、ラジオ、大会の公式サイト、インタビュー記事、および芸人さんたちのYouTubeから引用しています。

更にはM-1に肩入れしている人間でもあるので、M-1系の情報が多いです。引用する実在の芸人さんに関しては、敬称があったりなかったりで記載します。前もってお詫び。旧どつ好きにはリアルの芸人さんも好きになってほしい。

1. 旧どつ基本情報おさらい

1-1. メンバーと実績

Wikipedia風味に説明するなら、旧どついたれ本舗とは、オオサカディビジョン(どついたれ本舗)に所属する白膠木簓と躑躅森盧笙によるお笑いコンビの俗称。DRBのチーム名が同じ(芸人時代のコンビ名から踏襲)しているため、区別するためにこう呼ばれることが多いです。よく見る略称は旧どつ。主な芸風は漫才。

爆笑王*1での準優勝実績あり。お笑いコンビとしては現在解散済み。

*1 「お笑いの頂点を決める」という煽り文句がつく賞レースなので、筆者はM-1、もしくは後述の理由で賞レース時代のTHE MANZAIのオマージュと見なしています。爆笑王はもしかしたら漫才に限った大会ではないのかもですが、公式での旧どつの説明が「漫才コンビ」なので、芸風は漫才決め打ちでよいと思っています。もしかしたら単独ライブでコントもしてたかも。

メンバーは下記の通り。二人のビジュアルは名前のリンクからどうぞ。

白膠木簓(ぬるで・ささら)
ボケ担当。立ち位置は向かって右。糸目の方。
現在はピン芸人。冠番組持ち(水曜日のヌルサラ)。
ピン芸人ぐらんぷり*2での優勝実績あり。

*2 筆者はR-1のオマージュと見なしています。現実では似たような実績保持者に霜降り明星/粗品(M-1 2018年, R-1 2019年優勝)、マヂカルラブリー/野田クリスタル(M-1, R-1ともに2020年優勝)がいる。

躑躅森盧笙(つつじもり・ろしょう)
ツッコミ担当。立ち位置は向かって左。丸メガネの方。
現在は芸能界を引退し、私立高校の教師。担当教科は数学。

切り出すまでもない小さい余談ですが、ファミレス(or 喫茶店)で簓がコップを掲げて盧笙に「これ何に見える?」と問うシーンで、盧笙がコップの構成物質名を答えたところに彼の理系みを感じました。工学部なのかな。

Twitterでどちらも芸人男前ランキング*3で上位に食い込んだことありとの情報をちらほら見かけますが、確実なソース元は不明です。もしこの情報が確定なら、彼らの所属事務所は吉本が有力かなと思ってます。

ちなみに簓のキャラソンの導入はかの有名な吉本新喜劇のテーマ「Somebody Stole My Gal」がベース。

*3 「芸人男前ランキング」は雑誌マンスリーよしもと発祥の吉本芸人限定イベント(こちらにそこそこ昔のアーカイブ)。筆者はこの雑誌で読めたピース又吉さんのコラムが好きでした。まさかほんとに芥川賞とるとは。

オオサカディビジョン実装当時に簓の属性とビジュアル(芸人、細身、派手な柄スーツ)がCOWCOWの多田さんに似ていると話題になりTwitterでCOWCOWがトレンド入りする珍事が起きてましたね。

1-2. 本記事における旧どつ年表

旧どつコンビの経歴を考察するにあたり、サザエさん時空を生きる2人の時間を無理やり現代時間に置き換えて考えます

現実軸でのオオサカディビジョンのデビュー:2019年 10月30日

これが本記事の基準点。実装当時の簓・盧笙の年齢が26歳で同い年(どちらも10月30日以降に誕生日があるため、この2人は同学年)、コミカライズでNOC*4入学が8年前と明記されているため、ここでは単純計算で18歳(2011年)に養成所に入学しているとします。

*4 ここはご存知NSC (New Star Creation/吉本が創立・運営するタレント養成所)のもじりでよいと思います。在校期間は原則1年。大阪校1期生の代表格は言わずとしれたダウンタウン、トミーズ、ハイヒール。

これを前提にコミカライズに明記されたイベントを整理すると下の表になります。

盧笙は現在オオサカにある私立高校で数学の先生をしていますが、現代軸の募集要項をざっと確認する限り、常勤であれ非常勤であれ教員免許が要求される様子。高等学校かつ数学の教員免許を取得できる大学は文科省から一覧が出ていますが、4年制の大学でかつ数学系/情報科学系/工学系/教育学部系がほとんどです。

なので彼は(休学だったり入学のタイミングに揺れがある気はしますが)芸能活動に軸足を置きながら、同時に大学に籍をおいて最低限の単位を確保していたと考えるのが自然かなと思います。お前すごいな。

ちなみに教員免許を持っている芸人さんとしてはかまいたち/山内さんやあばれる君が有名どころ。アメトークでも特集されており、該当回はこちら。アメトークは芸人Wikiとしてめちゃくちゃ優秀。

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本記事における旧どついたれ本舗年表

2. 養成所時代と同期たち

2-1. 旧どつを取り巻く世代

前章を踏まえ、旧どつはオオサカのタレント養成所に2011年に入学していると仮定。現実ではNSC大阪校34期生に該当します。この年の代表的な大阪NSC出身者は以下の通り。

■ 大阪NSC 34期 ------------------------------------------------------------------
蛙亭:2021年 KOC 決勝6位

さや香
:2017年 M-1 決勝7位、2021年準決勝 
2017年のM-1後しばらく経ってボケとツッコミが入れ替わっている

トニーフランク

旧芸名 馬と魚、アニメ「オッドタクシー」の挿入歌「壁の向こうに笑い声を聞きましたか」で知った人も多いはず

滝音/さすけ
:2021年 M-1 準決勝(ワイルドカード枠で進出)
一人称があたしのジャケットが青い方。ちなみに恐妻家

ちなみに1期先輩(大阪校33期)は以下の通り。また霜降り明星は(主にせいやの)芸歴の扱いがたびたび話題に上がりますが、概ねここと同期扱い。

■ 大阪NSC 33期 ------------------------------------------------------------------
コロコロチキチキペッパーズ:2015年 KOC優勝

男性ブランコ
:2021年 KOC決勝2位、M-1準決勝進出

滝音/秋定
:業績は前述済み
滝音の身長が高い方でオリックスファン

ニッポンの社長/ケツ
:2021年 NHK新人お笑い大賞 優勝、2020/2021年 KOC それぞれ決勝5位/4位 
相方の辻さんはさらに1期上。ケツの見た目が与沢翼氏に似ているという理由からこのコンビ名

ビスケットブラザーズ:2021年 NHK上方漫才コンテスト 優勝

マユリカ
:2021年 M-1 準決勝進出 
コンビ名は各々の妹さんの名前を合わせたもの。何かに付けて気持ち悪いといじられがち。また運がないことで有名で、地震の影響で出演予定のアメトークが放送延期になった際にコンビ名がTwitterのトレンドに上がるという珍事が発生。気になった方は「マユリカの呪い」でググってみてください。

ZAZY
:2021年 R-1 決勝ファイナル2位

同様に1期後輩(大阪校35期)はこんな感じ。

■ 大阪NSC 35期 ------------------------------------------------------------------
からし蓮根:2019年 M-1 決勝6位

ゆりやんレトリィバァ
:2017年 NHK上方漫才コンテスト/THE W、2021年 R-1 いずれも優勝 
彼女はこの年のNSCを首席で卒業している。

コウテイ:2020年 NHK上方漫才コンテスト 優勝

濱田祐太郎
:2018年 R-1 優勝

コミカライズの回想とオオサカディビジョンリリースの時期に多少のギャップがあったとしても、この辺りの芸人さんと同期になるかと思います。東京NSC勢、他事務の著名な芸人さんを含めると下の表*5ができあがります。

*5 非吉本勢はおおよその位置として見てください。そもそも「同期」という概念はNSC出身者が多く所属する吉本勢が強く意識している印象。

一覧からわかる通り、旧どつは現実でいうところのお笑い第7世代とほぼ同期。順当にいけば、2人は今ごろ同期同世代の実力者たちと一緒にメディアや舞台でわちゃわちゃしてたはず。

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現代軸における旧どついたれ本舗の同期たち

余談1 - 華の95年デビュー組 - 

余談タイトルの「華の95年デビュー組」をご存知でしょうか。これは1995年デビューの芸人さんの多くが平成中期以降の賞レース・テレビシーンを席巻したことから、これに該当する芸人さんたちをたびたびこう表現することがあります。筆者の記憶が正しければ、アメトークで特集されたこともある。

旧M-1計10回の優勝者のうち、5組8人(フットボールアワー、アンタッチャブル、ブラックマヨネーズ、チュートリアル/徳井さん、パンクブーブー/哲夫さん)がこの95年デビューに該当。シンプルに実力がやばい世代。代表的な芸人さんは下の表の通り。

各地方でデビューした同期の芸人さんたちが賞レースでバチバチやりあったりバラエティでわちゃわちゃしたりするのを見る、あえてこの記事で言うならヒプマイと似たような楽しみ方もできた黄金世代です。

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華の95年デビュー組

2-2. 養成所時代の生活

NSCはそこそこ歴史の長い芸能人養成所なので(特に大阪校/1982年~)、時代によって授業内容だったり講師の雰囲気だったり在校生を取り巻くイベント(例として主席制度のあるなし)が変わったりします。

なので年表に即した、旧どつが在籍していた頃のリアルな養成所事情を知りたい場合は、33~35期生あたりのエピソードを掘り起こしてみると、彼らの養成所生活の解像度が上がるかと思います。

筆者の個人的なイチオシはコロチキのYouTube。コロチキは下記リンク1本目の動画がバズった経緯もあり、たびたびNSC時代のエピソードをメインに据えて動画をあげてくれます。

大阪校34期のドンピシャを知りたいなら、蛙亭のトークを参考に。NSC時代についてすこしだけ触れています。

また少し視点は変わりますが、ニューヨークのYouTubeにあるこちらのコンテンツもおすすめ。

動画カテゴリは芸人さんのYouTubeコンテンツではかなり異質な「インタビュー形式のドキュメンタリー映画」。舞台は東京NSCになりますが、世代は本記事計算の旧どつと同じ2011年入学の東京校17期。

この映画はNSC在校生を取り巻くカースト制度に焦点を当てて展開されます。映画なので多少の味付けはあるかと思いますが、養成所生を取り巻く人間模様だったり芸人さん独特の自意識みたいなものが垣間見えるとてもいい資料。

またコミカライズ内の描写で印象的なのが養成所の入学前面接(簓と盧笙の初対面)シーン。面接官の態度がだいぶ印象悪く描かれていますが、筆者的にNSCは入学前は優しくて入学後に厳しいイメージ(現役の芸人さんの証言を元にしているので、生存者バイアスも多少なりあると思います)。面接で落とされたエピソードはあまり聞かないですが、中退者は割といる。ナインティナイン、若手ではランジャタイなどが有名どころです。

ただし面接で落ちた例がないとは言っていない。宮下草薙がこのエピソードに触れるとだいたい聞いてくれた芸人さんたちにどよめきが走ります。旧どつコンビ、氷筋さんがいてくれてよかったね。

3. 賞レースと戦友たち

3-1. 旧どつ活動期の漫才賞レース

おそらくヒプノシスマイクに今一番ホットに触れている世代(10~20代)にとって、漫才の賞レースでまず一番最初に思いつくのはM-1だと思います。しかし当記事の時系列に即するならば、旧どつが漫才コンビとして芸能活動していたときにM-1はやってません(旧M-1が2001~2010、新M-1は2015~)。その代わりとして始まったのが、今は年末のネタ見せ特番THE MANZAI

ただ、個人的にTHE MANZAIが今後賞レースとして復活することはほぼないと思うので、もしM-1に出ていたらのIFと、THE MANZAIに出ていた場合のIFどちらも併せて考察しようかなと思います。

余談2 - 賞レース「THE MANZAI」の評価 - 

前置きなしに、まずはこちらの動画リンクを紹介します。

動画投稿者は旧M-1大会初回(2001年 この大会の優勝は中川家)において2位を獲ったハリガネロックのボケ、ユウキロック氏。現在ハリガネロックは解散し、ユウキ氏も吉本を退社されていますが、現在はフリーとして養成所の講師や構成作家活動をされています。今年のM-1準決勝に関する記事も書かれています。漫才師として賞レース最前線で活躍された経歴を持つ現裏方。ちなみにケンドーコバヤシ氏の元相方でもある。

かつてユウキさんがM-1戦士であり、M-1に思い入れがある方という背景を加味しても、賞レースTHE MANZAIの評価がM-1に一歩及ばないのは概ね共通認識かなと思っています。

この大会で千鳥が3年連続決勝進出する大会の顔的な存在だったり(2011~2013年出場 すべて決勝3位以上の成績)、地下出身で瀬戸際だったアルコ&ピースの芸能活動を続ける理由になったり(2012年 決勝3位 ググれば決勝進出通達後の平子さん号泣動画が出てくる)、博多華丸・大吉がタイトルを取っている(2014年 優勝)ことをどれくらいの人が知っているんだろうか。。。

動画内でTHE MANZAIの仕組みについても触れているので、視聴いただければ以降の解説がより理解しやすくなるかと思います。M-1と比較してだいぶ複雑。

3-2. M-1出場のIF

旧どつが結成されてから爆笑王で準優勝するまで、本記事の年表では期間を濁していますがそれでもだいぶ早いなというのが感想です(約2~3年ちょい)。創作物ならではの生き急ぎ年表とも見れますが、実は旧どつとほぼ同じスピード感で賞レースで結果を残した漫才コンビが実在します。キングコングっていうんですけど。

キングコング **西野さんが吉本を退社された関係で公式プロフィールがないため、Wikiのリンクを引用

NSC大阪校22期 1999年入学
M-1 2001年 決勝7位 2007年 決勝3位 2008年 決勝8位
だいぶスピード感のある漫才をするのが持ち味。けっこう古い動画も見つかるので、気になった方はググってみてください。とても若手とは思えない肝のすわり方をしている。

キングコングはNSC在学中にNHK上方漫才コンテストで最優秀賞を獲っており、結成わずか2年ちょっとでM-1決勝の舞台に上がっています。2001年のM-1初回大会に関しては、大会の重要度がまだ十分に認識されてなかったり(総エントリー数初回1,603組、比較として2020年大会は5,081組)、新旧M-1で登録可能なコンビ歴制限が違ったり(旧10年以内、新15年以内)諸々の但し書きはありますが、それでもこの芸歴でのM-1決勝進出は未だ破られないプロ最短記録。梶原さんはYouTuberカジサック、西野さんは絵本作家と、今やお笑い分野以外の肩書きが目立つ2人ですが、実績に裏付けされた若き実力派漫才師でした。

また島田紳助氏プロデュースの元、WEST SIDEとして歌ったり踊ったり、いわゆるアイドル的な活動をしていた時期もある。

キングコングのように若くして賞レースで結果を残した例はあるのですが、旧どつの賞レース考察で外せない要素として、爆笑王決勝までの過程における盧笙の状態の変化があります。以降の小章では、彼らの賞レース結果をこの要素に着目して考察してみようと思います。

旧どつは漫才の役割が固まってから堅調に人気と評価を伸ばしていきました。しかし簓がコンビの方向性を決め如実に成果を出す一方で、貢献度に負い目を持った盧笙が漫才中にうまく喋れなくなる(賞レース漫才でネタを飛ばしかける)、簓に合意ない形で違うネタをやりだす(あまつさえピンネタ、恐らく劇場のシーン)という描写があります。

A. M-1における「ネタを飛ばした」漫才の評価
M-1は決勝に上がれば芸人人生が変わるとも言われる大会。参加している芸人さんのプレッシャーが半端ないことは想像に難くなく、本番でとちってしまったエピソードは割とでてきます。よくある例で言うと噛んでしまうパターン。見取り図の20192020年ファーストラウンドはその後のリカバリを含めてもはや名人芸の域。

ネタを飛ばしたパターンもそこそこ出てきます。漫才のスタイルやだれがどのタイミングで飛ばしたかにもよりますが、その後のリカバリによって結果を残すことは十分に可能というのが筆者の所感です。

今ホットな例を挙げると、まずは以下リンクから真空ジェシカのネタをどうぞ。M-1公式YouTubeは次年度のプロジェクトが走り始めると前年の動画を消してしまいますが、まだしばらく見れるはず。

真空ジェシカは今年2021年の決勝進出が内定しているコンビ。川北さん(ボケ)が3回戦でネタを飛ばしていることをラジオで白状していますが、相方のガクさん(ツッコミ)がリカバリし、そこまで違和感なくネタが進みます。まじで凄い。漫才中の不和を持ち直しつつ、ウケ量をしっかり確保し、審査員に十分評価される形でネタやり切っている一例です。

決勝でネタを飛ばした例でいうと、2018年決勝の霜降り明星(せいや)と2019年決勝のインディアンス(田渕さん)。どちらもボケ数の多い(制限時間内に笑うポイントを多く設け、ウケの総量を稼ぐタイプ)、いわゆる賞レースに強い漫才スタイルという点で共通しています。霜降りはツッコミ(粗品)で笑うポイントが来て、インディアンスはボケ(田渕さん)が笑いの主軸となる点が異なるかなという印象。

ここで、2019年のインディアンスの漫才と、その評価に着目。田渕さんが主導するパートで飛んでしまい、いつものテンポを取り戻そうと(焦った結果)だいぶ早くなってしまったと引用のインタビュー記事で回答されています。中川家\礼二氏の審査員評では「人間味を出してほしい、淡々とボケているのが少し寂しい」との言葉。

筆者の主観強めにはなりますが、この礼二氏の評価は、だいぶかかった状態でボケを畳み掛ける田渕さんに対し(ウケと漫才の流れが止まらないよう)ずっとボケ続ける姿勢が、少し機械的に見えたと言い換えることができるのではと思います。
思うようにできなかったと吐露する2019年大会のインディアンスと、2020年大会の絶好調インディアンスを比較すると、テンポや掛け合いの多さがけっこう違うことがわかります。2021年も決勝進出が決まっているので、どんな漫才をするかめちゃくちゃ楽しみ。

旧どつの考察に戻りますが、決勝の舞台では盧笙が喋れなくなったリカバリとして簓がひたすらにボケ続けたんじゃないかなと想像します。霜降りみたいにツッコミで区切りをつけ切り替えることもできず、結果2019年のインディアンスに似た観点でマイナスを受け、準優勝に至る。

M-1で2位を取るためには初戦上位3組に入る評価を受け、かつ決選投票で審査員から表を入れてもらう必要があります。こと新M-1では和牛(2016-2018年 決勝2位)、かまいたち(2019年 決勝2位)の完成度で手に入る難易度。2020年時点で見取り図ですらまだぎりぎりとどいていない*6。

*6 決選投票で得票数が同じだった場合はファーストラウンドの点数が順位に反映されます。2020年見取り図はおいでやすこがと同票2票獲得、かつファーストラウンド3位のため、最終順位は決勝3位

なのでM-1基準で話すなら準優勝(2位)でもだいぶすごい漫才を披露したことに変わりはなく、十分誇れる業績だと思うのですが、旧どつ2人のストーリーにおいて賞レースは「テッペンを獲る(しかし、いいところまで行って獲れなかった)」ことが重要なので、解散という選択はほんともったいないなと言うのが感想。

筆者の中で、賞レースで結果が思うように残せなかった系のエピソードでのお気に入りは東京ダイナマイト(2004年 決勝8位、2009年決勝6位)。リンク先はラストイヤーでネタが飛び、準決勝敗退を喫した際と、その後の話。

B. 「相方に合意を取ってないネタを始めた」場合の評価
さすがにこれは賞レースでやってないと信じたいのですが(該当シーンは予選を含めた賞レース漫才中であるとは明言されていない)、ここでは盧笙のこの態度が審査員側にばれていた場合どうなるかを考察します。同じエピソードを持っている芸人さんを存じ上げないのでだいぶ妄想強めにはなりますが、筆者の結論は「ストレートで決勝には上がれない(=敗者復活戦の投票結果で決勝上がれるかも)」

この評価の参考資料として、以下2つの動画を紹介します。

** 2017年M-1(この年マヂラブは決勝10位)で上沼恵美子氏評後に野田さんが上半身裸になったくだりの裏話。

** 2020年のユウキロック氏による準決勝評。ここの動画では6:00~ あたりの金属バットのネタについて話している箇所をご覧ください。ただしユウキ氏は準決勝審査員ではないので、あくまでいち有識者の見解。

そもそもM-1グランプリは一番面白い漫才師を決める大会というスローガンはあるものの、同時に全国ネットで生放送される注目度の高いテレビ番組でもあります。特に新M-1になってからは関東圏で15~20%、関西圏に至っては20~30%の視聴率を誇る一大特番。

これらを踏まえた上で、賞レース時の旧どつは全国ネットの生放送で何をしでかすかわからないやつを舞台に上げられない、という点で不本意な減点を受けてもおかしくない状態だったかなと思っています。

動画1はエピソードトークとしてはめちゃめちゃ面白いのですが、当時のテレビマンたちはだいぶ肝を冷やしたんじゃなかろうか。。。

動画2の補足として、金属バットは(コンプライアンス的な意味で)攻めたネタを持つコンビなのですが、賞レースの勝負ネタはその辺だいぶ気をつけて選んでいる印象なので、準決勝のウケ量が十分なら決勝あげてほしいな、というのがいちファンとしての筆者の本音。こんなこと書いておきながら、決勝の舞台で好き勝手ちょける金属が見たい。見取り図と同期でコンビ歴も一緒なので、2022年がラストイヤー。

ヒプノシスマイクをある程度履修して盧笙の人となりを知っているとコンプラ的に危ないことをするわけないとわかるのですが(手が出やすいのはご愛嬌)、賞レースの審査員は話が別。ネタ中にまごついたり予定と違うことを盧笙がやっても、ウケを確保しつつ制限時間内(決勝戦は少しだけなら4分をオーバーしてもカットされることはない)にネタを調整できる簓がすごい。

余談3 - ダークホース「麒麟枠」-

「麒麟枠」 というM-1用語をご存知でしょうか。これはM-1という賞レースにおけるダークホースを指し、お茶の間ひいては劇場に通うようなお笑いファンからも予測できず、しかし突如として決勝の舞台に上がってきたいわゆる「無名」コンビをこう呼ぶことがあります。2019年大会で優勝したミルクボーイもこの麒麟枠に該当します(知名度はなかったものの、2019年当時、予選からミルクボーイの仕上がりについての下馬評は高かった)。Wikiの説明ではもう少し具体的に、各漫才師につけられるキャッチコピーを引き合いにした解説があります。

命名の由来はラヴィットの顔でありM-1決勝進出者発表の司会も担っている川島さんと、著書「ホームレス中学生」が有名な、バスケの上手い兄さんこと田村さんからなる漫才コンビ「麒麟」から。

麒麟
M-1 2001年 決勝5位、2003年 決勝8位、2004~2006年 いずれも決勝3位
決勝出場回数5回は2020年時点で和牛と並ぶ2位タイ。ちなみに決勝出場回数1位は笑い飯で計9回。

筆者のお気に入りネタは2005年大会ファーストラウンドで披露した「野球」。このネタで麒麟に沼りました。

類義語として、無名の状態で準決勝に駒を進めたコンビに関しては、2018年準決勝進出者に由来して「侍スライス枠」と呼んだりする。2021年の該当コンビは同年THE Wへの決勝進出も確定しているヨネダ2000

当然麒麟枠や侍スライス枠として、デビューして間もない若手(=ゆえに知名度が低い)にスポットライトが当たるケースも少なくないです。2020年に準決勝進出した侍スライス枠タイムキーパー(NSC大阪校41期生 2018年入学)は当時デビュー年から数えて芸歴2年に満たなかったコンビ。準決勝まで勝ち上がれば敗者復活戦が全国ネットで放送されるため、一気に知名度を上げる機会になります。このようなシンデレラストーリーが割とよく発生するのもお笑い賞レースの面白いところ。

3-3. THE MANZAI出場のIF

本記事の年表に沿えば、現実軸で旧どつが参加していたのはこのTHE MANZAI。賞レースTHE MANZAIはM-1の代わりとなった大会という体はあるものの、M-1とは異なる点が多々あります。主なものを以下に。
筆者も実はTHE MANZAIについてそんなに詳しく知らない&資料があまり残っていない背景から、大会の特徴はけっこうWikipediaを引用しています。

芸歴/コンビ歴制限がない。
師匠クラスが参加していた。一方でアマチュアの参加は不可。

優勝賞金がない。
代わりにフジテレビのレギュラー番組が与えられる。

審査員に漫才師/お笑いを主軸とした経歴がない人がいる。
秋元康氏が審査員をしていたことは有名。また審査員票に加え、(第二回大会から)視聴者投票制度があり、獲得点数の一番多い漫才師に一票入る。

予選/本戦の仕組み諸々が大きく異なる。
 M-1は1~3回戦、準々決勝、準決勝まで各1回ずつネタ見せし、その評価で決勝まで勝ち上がっていく形式。THE MANZAIは1回戦で6地方、2回戦で東京/大阪各会場でネタを披露し、その総合結果から本戦サーキットへの出場権を得る。さらにここで2回ほどネタ見せし、獲得した総合得点の上位者が決勝大会へ進む。決勝の対戦スタイルもM-1とだいぶ異なるがここでは割愛。
要約すると、M-1は一戦につき1ネタだが、THE MANZAIは一戦一戦のネタ見せ回数が多い。

おそらく旧どつは大阪予選にめちゃめちゃ強い、かつYouTubeチャンネルが人気だった描写があるので、決勝では視聴者投票に積極的に参加してくれるようなデジタルネイティブ世代にファンが多かったんじゃなかろうか。

ネタの評価については概ねM-1章で書いたものと同じかなと思っていますが、コミカライズで気になるネタ中の描写があったのでこれを最後に前半記事を締めます。

大会決勝の舞台で簓が「ショートコント」を始めようとしたシーン。ぶっちゃけあまり深い意味はないと思うのですが、「漫才師」って言い張ってる割に「ショートコント」するんか?(コント漫才なるスタイルはあるが、漫才の大会においておおっぴろげに「コントやります」宣言してネタをやるコンビを筆者は見たことがない)と正直少し引っかかりました。ただ、実は漫才の大会とショートコントにはちょっとしたエピソードがあります。

ここでTHE MANZAIで3年連続決勝進出、3位以上の結果を残した千鳥に着目。千鳥は旧M-1の決勝にも複数回出場した実績があるのですが、2007年大会にて松本人志氏から「ショートコントを見せられている」と辛評をもらっています

千鳥
M-1 2003, 2004年 ともに決勝9位 2005年 決勝6位 2007年 決勝8位
THE MANZAI 2011年 決勝3位 2012, 2013年 ともに決勝2位

今や飛ぶ鳥を落とす勢いの2人ですが実は苦労人。千鳥はTHE MANZAIに出場している辺りで大阪から上京してくるが、しばらく東京のテレビシーンで跳ねることができず、結果アメトークで伝説の「帰ろか・・・千鳥」回ができる。
ちなみに筆者はM-1時代の戦友ダイアンとの東京レギュラー番組ができるのをずっと待ってます。みなさんぜひ彼らのGTA実況見てください。

ファーストラウンドで松ちゃんが千鳥につけた点数は80点で、この年の決勝進出者の中で一番低いです。M-1はアマゾンプライムで全大会見ることができるので、加入している方はぜひ。

この経緯を知っていると、THE MANZAIを総合して好成績を納め、予選でもだいぶ評価された上で勝ち上がってくる(2012年大会に至っては予選1位通過の)千鳥を煽っているセリフだとも解釈することができ、めちゃくちゃ尖った若手という色がつくのがちょっとおもしろいので筆者はそう思うことにしました。これが将来ディビジョンラップバトルに出る男の煽り。

4. あとがき

キャラ造形の考察って楽しいですよね。
本当はこの記事、前後編構成になるはずだったのですが、後編はあまりに客観性に欠ける構成になりそうなので断念しました。
個人的に、このコンテンツは芸人という職業について解像度高く描写しようというよりは、あくまでキャラの個性を演出するためのフレーバーとして取り扱っている嫌いがあるなと節々の描写を見て感じているのですが、だからこそ読み手の解釈に幅を持たせ、行間を楽しむという遊びができていいですね。(楽曲を提供してくださるアーティストの方々はこの行間をこれでもかと詰めてくるので、新楽曲が発表される度に舌を巻きますし関心の溜息が出ます。このコンテンツのオタクになってよかったと思う瞬間です。)
勝手ながら、わたしは旧どつの原案にロザン(もしくはウエストサイド)のオタクが一枚噛んでいると踏んでいます。いつかその答え合わせができることを薄く期待しながら、もうしばらくこのコンテンツ追いかけ続ける心づもりです。

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