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関わるスポーツを「競技」と捉えているのか「商品」と捉えているのかでその取り組みが変わる。#スポーツビジネス

こんにちは。佐藤奨(さとうつとむ)です。

関わるスポーツを「競技」と捉えているのか「商品」と捉えているのかでその取り組みが変わる、というお話です。

日本における、これまでのスポーツの閉鎖感は、スポーツを「競技」と捉えていたことが影響していると考えれば、ほとんどのことが説明がつく、と考えています。

そして、これからスポーツは「商品」の視点、つまりは「顧客視点」で捉えた取り組みが求められています。

今回は、そんなお話をnoteにしてみようと思いました。

・スポーツの「競技」を「飲食店の料理」と例えてみる

そのスポーツの「競技」を「飲食店の料理」と例えてみます。

「競技」を「飲食店の料理」と捉えますと、お店の都合で「料理」を提供するお店だと仮定します。

お店の営業方針は、オーナーの考え方、「料理」作り方の方が何よりも大事で、お店が繁盛しなくても、作った「料理」さえお客さんに提供されていれば問題がない。味も別に求められたものではなく、自分がよいと思えば問題ない。

スタッフの態度も関係なく、「料理」さえ提供されていれば問題がない。

「料理」が出てくる時間も、お店側のタイミングで作れれば良いし「料理」提供のスピードもお店の都合だけで判断すれば問題ない。

しかも、お店がオープンする時間もある程度気分でやる。提供する時期はお店の都合である程度判断して提供する。

お皿の種類もバラバラで古びた食器類で「料理」が提供される。

というお店の場合だったらどうでしょう?

・・・繁盛する可能性は少ないですよね。
(そういうスタイルが受け入れられるお店もあるにはあると思いますが、一般的には難しいですよね)

さらに、「料理」がさほど売れず、飲食店を繁盛させられないオーナーなのに、補助金で売り上げの足りない分を補填されてしまっているので潰れないので、オーナーはその地位に座り続けられてしまう。

・・・おっと、この状況は、どこかで聞いたような話ですよね。

そう、この飲食店のようなことがこれまでの日本のスポーツの協会に起きてしまっていたようなことです。

そりゃ日本のスポーツ界、閉鎖感が出ますよね・・・。

・スタジアムやアリーナの問題も根っこは同じ

特に、今になって課題が浮き彫りになって来ている日本のスタジアムやアリーナの問題も、そもそもは大規模なスポーツ興行や音楽コンサートを実施できる数が少ないというのが表面上の課題となっています。

ただ、掘り下げてみれば、そもそもが観客がたくさん入れる設計になっていなかったですとか、専門のスポーツができるスタジアムが少ないですとか、陸上競技場とサッカー競技場が同じ空間にあるため、臨場感の作れる場所が少ないということも大きな課題となっています。

さらに、アリーナにおいては、スポーツやコンサートをやるにしても機材等の搬入経路が狭いなどのネックが多いため大規模な演出がスムーズに準備しにくかったり、音響や映像の演出も十分なものが設置されていないことが課題なのです。

これまでのスタジアム・アリーナが、完全に顧客視点が抜けていたかというとそうではないとは思いますが「競技」さえできれば良い前提でつくられた場所が多く、その競技を「商品」という視点で「商品」を良くするためスタジアム・アリーナのつくられ方をしていないところが多いのです。

これらの流れを汲んで、近年行われた さいたまスーパーアリーナや横浜アリーナなどのアクセスも良い人気会場は、音響や照明、映像機器を改修工事によってアリーナの設備面をグレードアップさせていますが、そもそもこれらのアリーナはつくられた時点で「商品」を良くするための視点でつくられたアリーナでもあったため人気が高く、改修費用が捻出しやすい場所でもあったと言われています。

・競技の進行に「顧客視点」「エンタメ視点」はあるか?

競技大会の進行に関しても「商品」という視点があるかどうかは同じです。

競技することが優位になっていて、顧客の楽しむ温度感をほとんど意識しない進行が行われるケースもあります。

例えば、表彰式がなぜかすごく長い。MCが大会を盛り上げない。大会を盛り上げる音響がない。他の年齢やクラスと同時並行で行われるためメインがどのタイミングで行われるのかが分からない。スケジュールが曖昧、時間通りに進行しない、などなど。

もちろん、顧客の楽しみだけが優先されてしまうと選手へのケアがおざなりになる懸念もありますから(メジャーリーグにおける球数制限などのように、観客は目当てのピッチャーを長く観たいけれど、選手のケアを優先してルールで縛るなどの例もありますが)競技のルールの範疇かつ選手の十分なケアが行われた前提の中で、進行にはエンタメ要素があっても良いと感じています。

こうした進行については、以前に記事にしたことがあるのですが、昨年12月に行われたフェンシングの全日本選手権は、進行に関して大胆な取り組みを行いました。

何がすごいかと言うと、大会の進行スケジュールを抜本的に見直したこと。

全日本選手権で、観客を集める日、いわゆる集客をする日を設けるために、競技の進行・日程から抜本的に見直したのです。

どういうことかというと、通常であれば予選から決勝まで一気に行われる形式だった全日本フェンシング選手権を、第70回全日本フェンシング選手権に関しては、最終日の観客を集める日は、決勝戦(3種目の男女計6試合)だけの興行とし、準決勝までは前日までに終わらせたのです。

決勝戦だけを興行イベントとして有料チケット販売をしたのです。

最高レベルの決勝戦(3種目の男女計6試合)だけを商品として有料化する。つまりボクシングのように世界戦を目当てとしてチケットを有料販売するのと似ていますね。※ボクシングの場合は前座の試合もありますが興行のメインは世界戦です。

(全日本フェンシング選手権では、競技の合間にエンタメも盛り込んでいた。アマチュアスポーツの大会ではかなり特異な例ではないでしょうか)

もちろん進行の変更は、競技のルールの範疇かつ選手の十分なケアが行われた前提の中で行われるべきことですが、スポーツを「商品」と捉えることで、大会の進行する順番や日程を見直すこともできるのです。

これから、スポーツは「商品」の視点、つまりは「顧客視点」で捉えた取り組みが求められています。


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