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HADOをスポーツビジネス軸で考察する -AR型スポーツは”今”だけを見てはいけない

こんにちは。佐藤奨(さとうつとむ)です。

今回は、ARスポーツとして注目を集めているHADOをスポーツビジネス軸で考察します。そしてAR型スポーツは”今”だけを見てはいけないというお話をします。

(画像:HADOの公式ページから画像を拝借しました)

先月末、運営するスポーツビジネスコミュニティ #SAC#スポイキ のメンバーの皆さまと、HADOの体験しに行きました。

当日の様子を #HADOをやって帰って来るまでというハッシュタグで追っかけていましたので、ご興味のある方は、上記よりTwitterで振り返ってもらえたらと思います。

そして、私がHADOをプレイしてみた感想は以下の記事に記載しました。

プレイヤーとしてどうだったのか?というのを前編として、今回の後半はスポーツビジネス軸でどう感じたのか?という視点で書いてみます。

振り返りとしてHADOとは何か、をざっくり言うと、かめはめ波みたいなのをバーチャル上で打ち合える、新感覚ARゲームです。

さらに、HADOの開発元であるmeleap社は、2017年と2018年の2回で、総額11.1億円もの資金調達をしており、スポーツ界において非常にHOTな存在であると言えます。だって、マイナースポーツで11.1億円も集められている会社、他にありますか?ないですよね。

また、2月2日、3日に行われていたホリエモン万博にもHADOが体験ブースとして出展され、人気コンテンツだったそうです。まさに、HADOは、こうしたイベントに参加するような情報感度が高い人たちにも注目を集めている存在と言えるでしょう。

また、今回、記事を書くにあたり、HADOの生みの親とも言われる本木さんにも、思ったことそのままお願いします!と言われましたので、忖度なしで考察を書きます。笑

ということでこの辺りまでを前置きとしまして、スポーツビジネス軸でどう感じるのか?の中身に入ります。(ちなみに、私は、ゲームや、eスポーツに関しての知見があるわけでなないので、そのゲームや、eスポーツ軸での考察は詳しい方に任せ、あくまでスポーツビジネス軸からの考察です)

それでは今回の目次

・HADOがすごいのはこれを”スポーツ”と言い切ったこと

まず率直にHADOのすごいところをスポーツビジネス、いやビジネス視点で言うなれば、これを「ゲーム」ではなく「スポーツ」と言い切ったこと。

スタートアップとして名乗りを上げ、話題性をつくること。並びに自分たちを何と定義するか?どのマーケットを狙うのかは、とても大事なことです。

ARを活用したゲームではなく、スポーツであると。そして日本発として世界的にも馴染みのある波動拳(かめはめ波)を連想するHADOと銘打ったこと。それが多くの方に注目を集める起点となれていると考えています。

ゲームとして売り出すのではなく、スポーツとしてのアピールをしたことがHADOの注目にも大きく繋がっていると思います。(そして実際にこのHADOでは、身体をたくさん動かすため、スポーツ性も確かに高いです。実際に私もかなり汗かきました。)

・HADOなどAR型スポーツは”今”だけを見てはいけない

HADOの開発元であるmeleap社は、2017年と2018年の2回で11.1億円の資金調達に成功しました。マイナースポーツのカテゴリにおいて、こうした資金調達に積極的な企業はまだ少ないです。

そうした中、どうしてmeleap社は資金調達に成功したのか?投資家たちにどこを評価されたと考えられるのか?

私の視点ではおそらく2つ。1つ目は「今後の開発に期待」2つ目は「グローバル展開」ではないかと思います。さらに大きな波となっているのは、eスポーツをはじめとするスポーツ自体の熱の高まり。いわゆる時流ですね。

meleap社のHADOとは、これからの注目技術として注目されるARと、eスポーツ熱(時流)の両方を掴んで追い風となっていると考えています。

ただしAR型スポーツは”今”だけを見てはいけないと書いた理由が2つあります。

”今”だけを見てはいけない理由の1つ目は、すぐに装着してスタートできるようなシームレスさはない。例えば、サッカーのようなボールがあれば始められるほどの敷居の低さではないですし、ゲーセンで100円を投入したらすぐにゲームをスタートできるような内容ではない。

ルール理解や装着時のセッティングが必要なため、現状のHADOではインストラクターさんにやり方を教えていただく必要があるのです。

こうした初めにくさを指摘したら他のスポーツだって一緒だよ、と、キリがないのかもしれないですが、スポーツ軸での普及のためには大事なポイントであると思います。

一方、こうしたスポーツの初めにくさも乗り越え、人気となっているスポーツもあると思いますから、ゲームの分かりやすさを追求するのか、路線を変えずに人気を獲得し、初めにくくても多くの人を惹きつけるのが先なのか、その未来に関しては今後のHADOの活動次第であると思います。

”今”だけを見てはいけない理由の2つ目、こちらは、スポーツの観戦者視点、いわゆる、このHADOをスポーツの競技として観戦する人が出てきたときに考えられることについてです。

今のHADOは、観戦型のスポーツの軸で考えると、プレイヤーの顔が見えないことがネックになるだろうと思います。これは、新日本プロレスをV字回復させた木谷高明氏も言っていたことですが、今、世界的に人気が落ち気味なスポーツに共通しているのは、プレイヤーの顔が見えないこと。F-1などもその類であると。

これから8Kなどに代表されるように、映像技術の向上で、よりプレイヤーの表情が大事になって行く。そうなってくると、今のHADOのように大きなゴーグルを装着することでプレイヤーの表情が見えませんので、それもネックになると思われます。

ただ、これも、今だけを見てはいけないと書いたのは、ゴーグルなどのAR機器はこれから小型化していくでしょうし、取り付けやすいものになっていくことが予測されるため、将来的には小型化し、プレイヤーの表情も感じやすい形に進化することを期待したいと思います。

観戦者視点では、素人目に勝ち負けや得点の入り方が分かりにくい部分があるため、観戦者の視点に立ったビジュアル表現なのか、ルール変更なのかが必要かもしれません。

さらに、AR機器、ゲーム自体、映像技術、それぞれの進化に加え、5Gの通信技術の向上によって、ゲームで表現できることも増えて行くことが考えられます。そうしたビジュアルの表現技術の向上で分かりやすさが上がる可能性は十分にありえます。(開発ばかりではいくら調達資金しても足りないか?)

・施設に依存しにくいため展開のしやすさが吉と出る

HADOで特筆すべきポイントは、省スペースでできる利点があり、施設に依存しにくいため、展開のしやすさがあること。スペースと電源とネット環境があればどこでも出来る。現行のHADOの場合は、ゲームセンターの機器などに比べれば非常に安価で展開が可能なようなので展開のしやすさがあります。

現時点で、すでに海外展開も果たしていて、例えば、DMMグループであるサッカー ベルギー1部リーグSTVV(シント・トロイデンVV)のホームスタジアムにて「HADO」を導入するなどの事例もあるようです。

・HADOのコミュニティが育っているのが凄い

HADOプレイヤーが率先してこのスポーツを発信し、それぞれの拠点を起点としてHADOのコミュニティが育ってきています。

今回、#HADOをやって帰って来るまで の企画を実施するまで流れで、多くのプレイヤーさんがTwitter上で申し込み方法や、やり方のレクチャーをしていただくなどして親切な方が多く、熱いんですよ。

みんなでヒットを狙いに行く!みたいな空気があり、昨年話題になった映画の「カメラを止めるな!」の超ヒット生んだ本質の記事にも触れられていた

関係者全員にできるだけツイッターアカウントを作ってもらい、映画に対する思いをつづったり、映画に関する投稿をしている人をエゴサーチして見つけて、発言にいいねをしたりコメントしたり、を関係者みんなでやったそうです。(出典:「カメラを止めるな!」の超ヒット生んだ本質 / 東洋経済オンライン)

上記のように、HADOのトッププレイヤーたちが自ら、どんどん体験者たちに絡んでいて、これすげーっていう感想を持っています。

これもHADOにとっては大きな利点であり、資産の一つだと思います。

・課題はゲームで行く?スポーツで行く?

今後の拡大の課程で起こりえるのは、ゲームで行く?スポーツで行く?の選択が訪れる可能性があると考えています。つまり、今後のHADOが向かう方向性によって、ビジュアルなり、ゲーム性も、目指す方向性によって変異が必要となる可能性があると考えています。

HADOを、スポーツ興行として育てる場合、例えば、グローバルな規模で行われている対戦型のスポーツであるテニスと比べた場合、現状のHADOは、いわゆるテレビゲーム的なビジュアルという印象があります。

今のようなビジュアルやゲーム性が、今のコミュニティの結束にも役立っている可能性もありますが、もしステップアップしていく場合、メジャー化させるタイミングで、ビジュアルをどのように考えるか、このままで果たして受け入れられるのか?を真剣に考える機会が訪れるのではないかと思います。

日本の人口に対して1%だったとしても、1億人の中の1%だと100万人。世界の70億人の中の1%ならば7000万人となりますが、仮に今の方向性の中で1%属性でも熱狂的なファンがいれば成立するのがオンラインゲームだとしたら、リアルな場所でのプレイが必要なHADOの場合はそうは行かないのです。

つまり、HADOの場合、プレイする場合にはフィジカルな部分も必要となりますからオンラインでは完結しません。

世界中に話題を提供したところで、HADOをプレイするには現状だと施設と身体が必要なため、プレイする場所が限られてしまうのです。つまり特定の1%を狙う戦略は取りにくいのです。(これがVR空間で完結するゲームならば問題がないでしょうけれど、VRゲームにした瞬間にARという優位性が損なわれてしまいます)

それならば、まずは、プレイヤーを増やすために、国内の1%ではなく、10%の認知を狙っていく方向にシフトするのかどうか?そうすると、今のようなゲームっぽい方向性でどこまで受け入れられるのか?という課題が発生するのです。

つまり、日本のマスを狙う場合には、いかにして「一般化」できるか?つまり、人口の1%ではなくて、10%や20%の認知獲得を狙う視点では、より「一般」に受け入れられやすいパッケージングにする課題にぶつかるのです。ちなみにここは、マイナースポーツを普及する際にも考えるべき視点と同じです。

ゲームの普及で考えるのかではなく、スポーツの普及として考えることができるのか。このまま成長すれば、一般化の課題と向き合うフェーズが訪れると思います。

・「一般化」するための取り組みと、考察のまとめ

上記のゲームの普及で考えるのか、スポーツの普及として考えるかの課題に対応するためか、HADOの場合は一つ打ち手があるようです。

“HADO BEAST COLOSSEUM”という簡素なルール、かつ賞金1000万円の大会を実施するなどして、より観戦に適した大会を実施しているようです。
http://meleap.com/beast_colosseum/

この大会は、HADOのルールを簡素化し、スポーツ性を高め、より観戦しやすくした大会と言えるでしょう。

以上、スポーツビジネス視点での考察をまとめますと・・・

HADOのこれからを考えると、AR機器、ゲーム自体、映像技術の進化に対応していくこと。またオンラインゲームのような広がりは現状では難しいため、プレイヤーを増やすためには体験できる店舗を増やす必要性がありそうだということ。これらは見えている課題として、、

より大きなマーケットを狙うために、世界でウケる路線で行く?それとも、国内でウケる路線で行く?今の路線を掘り下げて世界中の同じ属性を狙って行くのかゲームっぽくいくのか、それともスポーツっぽくいくのかを考えるタイミングが訪れるでしょうけれど、HADOのARスポーツという特色を考えると、どこかのフェーズで「一般化」を切っても切り離せないのでは、と考えています。

一方で、プレイヤーを増やすために、まず地盤となる日本で足場を固めるために店舗拡大が必要と思いますが、それに躍起になることで、新たに開発したバージョンの浸透に時間を要するなど、身動きが取りにくくなる可能性すらありますから、絶妙なバランスが求められていると思います。

まさにHADOは、スタートアップと感じさせる状況ですね。

今後HADOを開発するmeleap社が、こうした課題に対して、どんな打ち手を取っていくのかに注目していきたいと思っています。

そして、meleap社がこのままステップアップして上場を果たすことの意味は大きいと思います。昨今の日本のIT業界は、メルカリの上場によって多くの波及効果が生まれていますが、同じようにスポーツ系スタートアップが上場することで、日本のスポーツビジネスがさらに活性化する可能性もあると思います。

meleap社には、ぜひこのまま突っ走ってもらいたいと思いますしスポーツ界に身を置くものとしても今後に期待をしたいです。

以上がHADOをスポーツビジネス軸で考察するの記事でした。

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