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歴史小説家ひと月パリ滞在記 その3 いよいよショッピングとランチ

  パリにはモノプリといって、ちょいオシャレめな量販チェーン店があり、娘の家から歩いて15分ほどのところにも1軒あります。孫娘は夏休みが終わって、幼稚園に通うようになったので、私は新生児育児の手伝いの合間に、そこまで歩いていっては、可愛い缶入り石鹸などを買って、そこそこ満足しておりました。

パリ土産に手頃な缶入り石鹸

 でも5年前の渡欧の際には、ラファイエットなど都心の高級デパートでコートを買ったりもしたので、今度も娘が「デパートに行ってきたら? サマリテーヌってとこがいいよ」と勧めてくれました。ならばと重い腰を上げ、ひとりでメトロに乗って行ってまいりました。
 サマリテーヌとはサマリア人の女性という意味だそうで、ポンヌフという有名な橋のたもとにある老舗百貨店(トップの写真)でした。創業は150年以上も前だそうですが、建物の老朽化によって閉店し、荒れ果てていたのを、近年、ルイ・ヴィトンのグループ会社が買い取って改修。一昨年にリニューアルオープンしたとか。アールヌーボーの階段が有名ですが、最上階の壁画も壮観で、この辺は、さすがパリの感性ってところです。

サマリテーヌで評判の階段

 中は軒並みハイブランドショップで、買いものをすると、その場で免税書類を作ってくれます。お店のスタッフは、英語の上手な中国人のおねえさんが多くて、接客も丁寧。レジに並んでいるお客さんに、スタッフが「どこから来たの?」と問うと「ニュージーランド」という返事。なるほどパリは、世界中から観光客が集まる憧れの街なのだなと、改めて実感しました。
 私は次女へのお土産として、カシミヤのネックウォーマーと、指先の空いている手袋のセットを買いました。ハイブランド品ではないけれど、そこそこのお値段でした。もちろん、その場で免税書類をもらいました。
 いろいろ見ているうちに、どうやら、ここは老舗百貨店のテイで、実はデューティフリーショッパーズなんだなと気づきました。化粧品売り場も、とっても充実してるし。あくまでも観光客向きで、パリジェンヌは、やって来ないとか。さすがルイ・ヴィトンのお仕事! というか、こういうビジネスがフランスの国策なのでしょう。

サマリテーヌ最上階の大壁画

 それから数日後に、わが亭主も日本からやってきて、新生児孫と対面。ちょうど週末だったので、幼稚園児5歳孫が暇しており、ジイちゃんバアちゃんと3人でセーヌ川クルーズに乗ることにしました。
 「ミラキュラス」というフランスで人気のアニメのキャラ船があり、それに乗船。出航すると、黒猫とてんとう虫のキャラクターが登場して、小芝居を披露してくれるのですが、なにせジジババはちんぷんかんぷん。おそらく「大変だ! 敵が来るぞ!」とかって言ってるんだろうけれど、黒猫とてんとう虫だけの掛け合いで進んでいき、いっこうに敵キャラは登場せず。「なんで猫と虫なのよ? とっくに虫は食われてるでしょ。それに日本だったら、照明とか音響とか、もっと作り込むよね」と、亭主に小声で文句タラタラ。それでも孫娘が楽しんでくれたら、ま、いいかという気分で、帰りがけにはキャラのコスプレ衣装まで買ってやるババ馬鹿ぶりでありました。

てんとう虫キャラのグータッチに応じる5歳孫娘

 下船後は、わが娘が「セーヌ川沿いなら、いい店あるよ」と推してくれた水上レストランへ。でも、これが遠かった。まして今年の夏はヨーロッパも猛暑。川べりは日陰もない。なんとかたどり着いてみると、そこは、ひっそりとした隠れ家的レストラン。なにせデザイナーである娘のこだわりだけあって、なかなかレベルが高く、観光客向きではない雰囲気が漂っておりました。
 英語のメニューがないから、料理がさっぱりわからない。とにかくビールとウェイターのオススメ料理と、孫娘の好物のフライドポテトを注文しました。ところが届いたオススメは、竹の重箱みたいなのにチンマリと収まったシーフードで、ビールを呑みながら一瞬で食べてしまえる量。
 フライドポテトは、ちゃんとしたフライドポテトだったけれど、孫娘は「ケチャップがほしい」との仰せで、バアちゃんは「孫のためならば」とばかりに、店内を走りまわってケチャップを探しました。でもスタッフの方からは「ない」と、つれないお返事。パリのシャレたレストランで、ケチャップなんか頼んじゃいかんのだなあと反省しつつ、肩を落として店を出ました。
 でも、まだまだ腹ぺこ状態なので、とりあえず橋を渡って対岸に行ってみると、そこは観光客だらけのにぎやかな界隈。あっちにもこっちにもレストランやカフェがあって、どこに入っていいのか、今度は途方にくれました。
 そのとき孫娘が「あそこにしよう」と、力づよく一軒を指さしたのです。何の根拠もなさそうだったけれど、そうなったらジジババは迷いなく、お孫さまの仰せの通り、一直線に入店。中はエアコン効いているし、「英語のメニューある?」と聞くと、ウェイトレスのおねえさんが「オフコース!」と胸を張る。もちろんケチャップもあって、あー、気楽でいい。でかしたぞ孫娘と褒めちぎり、ジジババは、またビールをグビグビ、ワインをカパカパ。
 酒呑み老夫婦のために、翌日、娘夫婦は、家からほど近いマルシェ兼ビアホールへ案内してくれました。ガラス張りの大きな建物の中に、お惣菜屋さんが並んでおり、そこで何種類かツマミを買い求めて、ビールやワインを頼む方式。亭主は、いたく気に入って、以降連日、通いつめました。

背後はお惣菜屋さん

 仕事のある亭主は先に東京に帰り、残った私の帰国前の最終夕食は、孫娘が「バアバとふたりでレストランに行きたい」と申します。いつもは大人同士の話が中心になってしまい、おとなしい孫娘は蚊帳の外だしね。それで、ふたりきりで近所のベトナム料理店に行き、しみじみと差し向かいでベトナム春巻きを食べました。バアバ、慕われております。
 翌朝、婿どのに車で送ってもらって空港へ。本来ならサマリテーヌでもらった書類を、免税窓口に提出しなければならないのだけれど、私には窓口が見つけられず、空港内を歩きまわった末に、疲れ切って「もう免税でなくてもいいや」と返金断念。帰国便に乗り込む直前、その旨、娘にLINEで知らせたら「せっかく免税で買えたのに! でっかい看板があったでしょうに!」と、ぶりぶり怒られました。昔は私が娘を叱ったものだけれど、いつのまにか逆転しちゃったな。
 次の「ひと月パリ滞在記 その4 名建築サボア邸見学」に続く。

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