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Training - 長い距離を走る + ランナー心理学? -

 長距離の基本練習ともいうべき、「長い距離を走る」練習ですが、長い距離を走るにしてもいくつか方法があります。これは基本的には長い距離を”どの程度のペースで走るか”によって分類されます。ペースによって練習の効果が変わってくるからです。

ここではLong Slow Distance(LSD)、テンポ走、ビルドアップ走について一般的な練習の方法を紹介し、しっかりと分類した上で練習メニューに組み込めるようにしたいと思います。また、「長い距離」というのは人によって異なってくるでしょう。一般には5kmくらいからでしょうか?普段のランニングやレースの距離に応じた自分にとっての長い距離で大丈夫ですし、徐々に距離も伸びていくはずです。

Long Slow Distance(LSD)

ロング・スロー・ディスタンスの略であるLSDは初心者から上級者まで多くのランナーが練習として取り入れています。これはその名の通り、長い距離を遅いペースで走る練習です。ペースはおしゃべりしながら余裕を持って走れるぐらい、とにかく遅くて構わないですが、そのスローペースで長い距離を走ります。

大事なのはできるだけ長い時間、有酸素運動下で走り続けることです。僕がLSDを行う場合は7〜8分/km程のペースで1時間走ります(ペースはあまり気にしません)。

これにより長距離ランナーに必要な持久力を鍛えることができます。少し細かく言うと、この持久力とは、酸素を運ぶための毛細血管の密度や、遅筋の発達に起因するとされています。LSDではケガのリスクが少なく、これらを効率よくトレーニングできるのが利点です。

テンポ走

 一般にテンポ走またはペース走と呼ばれています。これは一定のペースを守って長距離を走る練習です。特に無酸素性閾値または乳酸性閾値付近ペースで行うことでより持久力向上の効果が得られます。

詳しい専門的な内容は省きます(調べてみて下さい)が、すこし用語について説明すると、

・無酸素性閾値(Anaerobic Threshold、AT値)

・乳酸性閾値(Lactate Threshold、LT値)

運動時のエネルギー生産過程において、運動強度の低い(筋肉に大きい負荷をかけない)うちは取り込んだ酸素を使用しエネルギー生成するのに対し、運動強度を上げていくと酸素消費では追いつかなくなり酸素を使わずにエネルギー生成(解糖系)を行うようになります。
この時、解糖の過程で乳酸が生成されるが、ある運動強度から乳酸の生成量が過多となり血中乳酸濃度の上がり方が急激になるポイントがあります。この運動強度のポイントを乳酸性閾値と呼び、また有酸素運動から無酸素運動へ切り替わることから無酸素性閾値とも呼びます。

運動強度を上げ上記の閾値を超えると乳酸が蓄積する無酸素運動となり長距離走には適しません。そのため長距離ランナーとしてはいかに乳酸性閾値(無酸素閾値)を上げ、ギリギリで走るかが重要だと考えられます。

とは言っても個人でLT値などを正確に測定するのは難しいので、一般的なペースの目安としてはテンポ走を行う距離に近い距離のレースでの、現在のベストペースから25〜30秒遅いペースぐらいとか(参考1)。まずはこの辺りのペースで試しつつ、距離とペースを調整するのがいいと思います。

心肺機能と筋肉に、ある程度の負荷をかける長距離走で、実戦に近い強度と質の練習ができる、非常に重要な練習です。

参考文献1

ビルドアップ走

 最後にビルドアップ走という練習です。これは段階的にペースを上げていき、最後はレースと同じくらいの強度までペースをあげてフィニッシュするという練習です。いわゆるネガティブ・スプリット(Negative split)的にタイムを刻むことで、スピード持久力とペースの増減に対応する瞬発力を鍛えることができます。

また本番にレースを組み立てる練習としても効果的でしょう。レース後半にペースが落ち、ダラっとした感覚でゴールしてしまい、後味の悪い内容のレースになったという経験はないでしょうか?逆に、ベストのタイムでなくても後半に大きく崩れることなく、ペースを上げてゴールできた時は、ポジティブなレース内容として捉えることができると思います。

もちろん前半から攻めることで自己ベストを積極的に狙いに行く姿勢はとても良いことだと思います。一方で、明らかなペースダウンを感じたり、ペースが上がらないという感覚はランナーの自信を喪失させます。

そのためペース配分をしながら、レースの全体を通して大幅なペースダウンがなく、苦しくも我慢しながら最後少しだけスパートできた、というような「ポジティブなレース内容」を多く経験していくことがとても重要だと感じています。必ずしも後半にペースを上げろということではなく、大事なのは大きく崩れずに頑張れる部分は頑張るということかなと思います。

そのための練習として、徐々にペースアップしながら意図的に後半の失速を無くし、長い距離を走り切るビルドアップ走は効果的でしょう。

心理的ハードルはバリエーションで超える

 長い距離を走る練習は基本中の基本だが、ただ走るだけでは辛い上に飽きてしまうでしょう。それを愚直に続けられるのが強い人だと思いますが。でもできない人は弱いのかというと、そうではなく人間心理の自然な反応なのではないかと思うのです。

最近いろんな物事における人の心理について考えることがよくあります。人の大半の悩みは人間関係が原因であって、それはまさに人間心理の相互作用によってもたらされます。またスポーツなど、人の多くのパフォーマンスは心理的作用が深く関係しているから、それをどうやってコントロールしたり、分析したりできるかと。

長距離走の場合は、疲労が蓄積していくこと、それから走るという同じ行為をひたすら続けることの二つの心理的ストレスをいかに軽減できるかがトレーニングを継続する上で重要だと思います。走る目的がトレーニングである以上、疲労の蓄積はあまり避けられないと思いますので、まずは「走る」のバリエーションを増やし、飽きない方法を考えるのがいいかなと思います。

今回紹介したような練習は基本的なものですが、上手く練習メニューに組み込んでいくと、それぞれの練習法で目的意識が異なり、メリハリになります。また自分なりの練習方法を考案するのも面白いでしょう。何かこんな練習ありますよ、という方はコメントいただけると嬉しいです。