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『マイナビ Laughter Night』チャンピオンLIVEは「正統派漫才」よりも「ヤバいコント」が勝つ

2015年以降のお笑いシーンを語る上で欠かすことのできない番組の1つが、TBSラジオ『マイナビ Laughter Night』だと思っています。

長らく「若手お笑いの登竜門」として多くのお笑い芸人を世に送り出した『爆笑オンエアバトル』、そしてその後継の『オンバト+』の番組終了が2014年3月。その翌年の2015年4月に放送を開始し、今年で放送9年目となるネタ番組が、この『マイナビ Laughter Night』です。
「週末放送の30分番組」「公開収録の観客投票で上位のネタをオンエア」「毎週5組前後のネタが放送される」「年間でチャンピオン大会がある」・・・など、オールドお笑いファンの私にとっては、『爆笑オンエアバトル』との共通点を思わずにはいられません。あくまで私の意見ですが、『マイナビ Laughter Night』こそが「令和のオンバト」だ、とまで思っています(放送開始の2015年はまだ「平成」なのですが)。


2016年、ほぼ無名の状態で「第2回チャンピオンLIVE」を優勝した空気階段は、翌年よりラジオのレギュラー番組『空気階段の踊り場』をスタートさせ、私生活を剥き出しにした放送でリスナーを獲得、知名度を上げ、2021年の「キングオブコント」優勝と相成りました。

同様に、2019年の「第5回チャンピオンLIVE」を制した真空ジェシカは、翌年より『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』がスタート。デジタルネイティブ世代を惹きつける独自の世界観を展開し、お笑いファンの支持を拡大、2021年・2022年には「M-1グランプリ」で決勝進出する実力者となります。


巷に溢れる「芸人発掘番組」の最先端、いや、急先鋒を行くラジオ番組が『マイナビ Laughter Night』。
その「チャンピオンLIVE」の第9回が、来たる11/11(土)に開催されます。

毎年思っていますが、今年も「どうやったらこのメンツを集められるんだ」って思うくらい、出場者のマッチメイクが良すぎます。ワクワクします。素晴らしい。


2016年10月の放送から欠かさず『マイナビ Laughter Night』を聴き、「チャンピオンLIVE」の会場にも過去3度足を運んだ、いわば「強めのラフターナイトファン」である私が、今回、「チャンピオンLIVE」の展開を予想する中で見えてきた「これまでの大会の傾向」を、この機会に僭越ながらお話ししたいと思います。

今回、私がお話ししたいのは、「コント師が有利」「ヤバいネタが有利」の2点です。


●「コント師が有利」

過去8回の歴代チャンピオンと、その時に披露したネタの種別を並べました。

2015年:ニューヨーク(漫才)
2016年:空気階段(コント)
2017年:空気階段(コント)
2018年:やさしいズ(コント)
2019年:真空ジェシカ(漫才)
2020年:オズワルド(漫才)
2021年:金の国(コント)
2022年:サスペンダーズ(コント)

漫才が3組(ニューヨーク、真空ジェシカ、オズワルド)に対し、コントが5組(空気階段×2、やさしいズ、金の国、サスペンダーズ)と、コントがやや優勢です。これには明確な理由があるのでは、という考察を僭越ながら以下に述べます。

この「チャンピオンLIVE」の開催は、毎年10〜11月です。この時期の漫才師は、このあとに控える「M-1グランプリ」の準々決勝や準決勝(11〜12月ごろ)に向けて、「今年の勝負ネタ」の披露はまだ温存しておきたい・・・という心情が働きます。
一方、コント師の場合ですと、「キングオブコント」の予選(7〜9月ごろ)のために叩きに叩き上げた「今年の勝負ネタ」を、この「チャンピオンLIVE」に心置きなくぶつけることができるのです。事実、2022年に優勝したサスペンダーズのコント『花占い』は、同年の「キングオブコント」準決勝でも披露されたネタでした。
「キングオブコント」と「M-1グランプリ」に挟まれた、この「10〜11月」という時期に開催される、というのが、「チャンピオンLIVE」を考える上でのひとつのポイントだと考えます。


●「ヤバいネタが有利」

「3大賞レース」と呼ばれる『M-1』『KOC』『R-1』から、若手の登竜門的位置づけの『ABCお笑いグランプリ』『ツギクル芸人グランプリ』『ytv漫才新人賞』『NHK新人お笑い大賞』に至るまで、決勝でネタをジャッジするのは、プロの芸人さんや、放送作家・テレビマンの方々です。
しかし、この『マイナビ Laughter Night』の「チャンピオンLIVE」は、観客投票により優勝者を決定します。その日会場に集まった観客から最も支持を得られれば、勝ちます。
もちろん、会場の観客のほとんどは、『マイナビ Laughter Night』の番組ファンであるラジオリスナーです。つまり、強めのお笑いファン/お笑いオタクである会場のラジオリスナーたちから、「その日一番面白かった」と思わせた組が勝つのです。

私が上記のことを強く意識するようになったのが、2019年の「第5回チャンピオンLIVE」でした。全ネタ終了後、投票する1組を決める際、自分の中でほぼ同点だった、かが屋と真空ジェシカのどちらに投票するかで、会場にいた私はひとしきり悩みました。
人間観察の鋭さと高い演技力に裏打ちされた、「かが屋らしさ」のど真ん中を行くような正統派コント『モンハン』のかが屋。対して、直前のママタルトのツカミパロディに始まり、本ネタ『グラデーション転校生』を挟んだあと、最後に「キングオブコント2本目前の芸人」で締めた「反則スレスレお笑いオタク狙い撃ちフルコース」の真空ジェシカ。
悩んだ挙句、当時の私は「かが屋が優勝するだろうけど、単純に真空ジェシカの方でより多く笑っちゃったから」という理由で真空ジェシカに投票しました。

・・・蓋を開けてみると、もりだくさんに小ネタを詰め込んだ真空ジェシカが優勝。当時の私は以下のようなことを思ったのです。

2019年の真空ジェシカだけに限った話ではありません。この年以外の「チャンピオンLIVE」も、優勝したネタは「お笑いラジオリスナーを刺してくる”ヤバいネタ”」であったと思うのです。
内容のネタバレになってしまうので、詳しいコンビ名は伏せますが・・・ある時は「腹の中にWi-Fiをぶち込まれているおじさん」だったり、ある時は「ホスト狂いの女」だったり、ある時は「AVとの邂逅」だったりしたわけです。

もちろん、その日の出場者の中でトップクラスにウケるほど面白いネタであることが、観客票を集める一番の条件であることに間違いはありません。
ただ、「同じくらい面白かった組が2組いて、どっちに投票するか」というシチュエーションが発生した場合、我々お笑いラジオリスナーの心をくすぐる、それどころか、強く刺激してくれるヤバいネタの方により票が集まる、と考えます。


『マイナビ Laughter Night』の「第9回チャンピオンLIVE」、11/11(土)に開催されます。
配信チケットもありますので、是非見てください。
記事に「『ヤバいコント』が勝つ」という断定タイトルをつけ、くどくどと考察を述べましたが、正直に言うと私は、今年は漫才が勝ちそうな気がしています。楽しみだ~~~。

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