松村 ケンイチ

フリーランス。元バーテンダー、ソムリエ。越境者、境の無い人に強い憧れを抱く。バスケット…

松村 ケンイチ

フリーランス。元バーテンダー、ソムリエ。越境者、境の無い人に強い憧れを抱く。バスケットボール、ダンス、芝居、舞台芸術全般、テニス、活字、哲学好き。

最近の記事

13歳の君へ

先日、無事に40歳を迎えた。 40歳というと、確実に人生の前半が終わり後半が始まる感じがあり(本来、前後半に分ける意味も必然も無いが)、それと同時になんとかここまで生きてこれた事そのものに対する感慨も少なからずある。 少し前に、ふとしたきっかけから地元の中学一年生を前に話す機会があり、その後一人ひとりから感想文を兼ねた手紙を受け取った。私は感銘を受け、返事の手紙を書いて送った。その手紙を40歳を迎えた自分から現れた言葉として、記念と記録の意味も含めてここにそのまま残

    • 城崎にて

       城崎温泉駅にある足湯に浸かりながらこの文章を書いている。  父の一周忌と祖母の七回忌のために大阪の実家に帰り、その流れで3ヶ所を巡る旅に出るという予定を立てたのはひと月ほど前だった。その最初の目的地がここ城崎(兵庫県豊岡市)だった。  城崎には確か8年か9年ほど前に一度訪れたことがある。その時は祖母がまだ存命だったが施設に入っており、父と母と私の3人で訪れた。父はもう歩く足取りがかなりおぼつかなくなっており、おまけに耳が殆ど聞こえなくなっていたので、私と母は大変だった記

      • 父への手紙

        あなたが逝ってから半年が過ぎ、今日はあなたを想いながら手紙を書きたくなったので、書くことにしました。 そっちの世界はどうですか。過ごしやすいですか。こちらは寒い日々が続いてますが、元気でやってます。 あなたは生前、信心深い母とは反対に “死んだら燃えて灰になるだけや”とよく言ってましたね。どうなんですかね。こちらの言葉が全く届かないとしたら、ちょっとそれは淋しいですけどね。 小学校受験とかさせて貰いましたね、見事に落ちましたけど。あれだけ試験前に “ペンギンは鳥やで”と

        • 追憶のエアボール

          元NBAの歴史的スーパースター、コービーブライアント氏の信じがたい訃報を知り、私が真っ先に思い出したシーンは1試合81得点でも現役最終戦での60得点でも数々の勝負所で魅せた逆転ショットでも無く、5本のエアボールだった。 それは彼が18歳の高卒ルーキーだった1997年の出来事、レイカーズがプレーオフ敗退の崖っぷちに立たされてのユタジャズとの一戦だった。私は当時高校2年生で、NHKBS-1で行われるNBA放送を毎回ほぼ欠かさず観ていた。負ければシーズンが終わる試合終盤の最も重要

          書き初め

          確か書家の武田双雲さんのインタビューだったと記憶しているが、年始にその年の漢字一文字を自分で決めて書き初めをするとびっくりするくらいその通りになる、という話を聞いたことがある。あらゆる文字の中から、敢えて一文字に凝縮する事でよりその効果が増すらしい。 ちなみに私は去年試したばかりで、その一文字は “次”だった。そして2019年は私自身全く想像もしていない形で “次”が実現した。これは確かに面白いと感じて、毎年始めに続けていこうと思っている。こういった事は先出しするから面白い

          手に入れた座右の銘

          2019年12月28日、仕事納めの日に交わした親戚からのメールの文面には “激動の一年”と “人間万事塞翁が馬”の言葉が記されていた。それを読んで、あぁ確かに激動だったな、と再認識した。というのも、自分の中では激動というにはあまりにも心が平穏だったからだ。 今年の主な出来事をざっと挙げてみると、年明け早々に自分が経営していた店の不本意な突然の閉店が決まり、3月末には無一文の状態で現在の家を探さなければならない状況になった(それまでのほぼ丸一年間、私は住む家が無かった)。4月

          手に入れた座右の銘

          自転車の乗り方と生きるセンス

          自転車に初めて乗れるようになったのはいつだっただろう。幼稚園か小学校1年か、それくらいだった気がする。乗れるようになるまで何度転けただろう。100回か、それ以上か。一度も転けずに乗れた人、いるんだろうか。いや、いるはずが無い。乗れるようになる為の練習を努力、なんて言葉使っただろうか。いや、使ったはずが無い。何の役に立つか、とか乗れた時の意味、とか考えただろうか。いや、考えたはずが無い。ただ、シンプルに乗りたいから、その気持ちだけで、何度転けようともトライした。 それから時は

          自転車の乗り方と生きるセンス

          マイノリティーからの表現

          常日頃、私が考察している事象の1つに “マイノリティー(少数派)でいることと、表現において伝わるインパクトの関係性”がある。そういった事を考えるようになったのは、結局意識するしないに関わらず、人間は誰しも他者との関係性の中で自らを表現しながら生きている、という人生観を持つようになってからだ。おそらく大学生時代辺りを境にそう考えるようになった。 大学生時代を振り返って、私にとって大きなターニングポイントというと大袈裟だが、1つの考えるきっかけになった出来事がある。それは、プ

          マイノリティーからの表現

          ただ、成熟したいだけだから

          母は言った。 “こうした方がラクじゃないの” ありがとう。でも私はラクをしたい訳じゃない んです。 亡き父は言った。 “そろそろ結婚か” ありがとう。でも私は縁に任せてるし、カタチ ある関係性にあまり惹かれないんです。 亡き祖母は言った。 “家出て行くなんて、寂し いわ” ありがとう。でも私は弱いから、そうしたんです。 ある先輩は言った。 “卒業だけでもしといた方 が良いよ。きっと後悔するから” ありがとう。でも私は全く後悔していません。むしろ残った方が後悔し

          ただ、成熟したいだけだから

          言葉が見つからない時には

          先日、常連の方を見舞いに有明まで行ってきた。その方からは3週間ほど前に直接LINEを貰い、病状の進行が思いのほか早く、もう余命がそんなに無いとの事だった。私は会えるかどうか分からなかったが、とにかく向かった。 3月の初旬頃、私は店であるイベントというか座談会を開いた。 “死を見つめることでより善く生きる”のようなテーマで、一般的にはかなりディープなテーマである為、日常的にそういった方々に関わっている友人にも手伝ってもらい、参加者8人程度で閉鎖的に行った。その中には冒頭の常連

          言葉が見つからない時には

          2ヶ月経って

          今のシェアハウスに暮らし始めて、あっという間に丸2ヶ月が経った。物件は今年の2月末に完成した新築だが現在は全13部屋のうち、空いてるのは一部屋だけで残りの12部屋は埋まっている。つまり私は、11人のハウスメイトと共同生活をしている事になる。男性は私を含め8人、うち日本人7人、オーストラリア人1人、女性は4人で日本人、イギリス人、香港人、フランス人といった構成だ。部屋はそれぞれに個室があり、2Fに共同キッチンとシャワールームが2つ、3Fにバスタブ付きのシャワールームが一つ、洗濯

          健全な批判精神を可能にする想像力

          例えば、 “金持ちが幸せかどうかは自分が金持ちになってから言え”とか、 “学歴が必要ないとかは、自分が東大に入ってから言え”といった様な極端な言い方がごく当たり前のようにされているのをよく目の当たりにする。それと似たような事で必ず現れるのが、例えばプロ野球選手が不味いプレーをした際にそれを一般人が批判した時に、 “だったらお前は出来るのか”といった言い方をする人だ。こういった事をごく平気に当たり前の様に言う人達に対する違和感は、普段から筆舌に尽くしがたいものがある。 こうい

          健全な批判精神を可能にする想像力

          しっかりと傷ついて得られるもの

          昔、私が25歳頃の時、ある人から “傷つくならしっかり傷つきなさい”と言われた事がある。その当時の私は、今以上にプライドが高く、自信があり、怖いもの知らずだった様に思う。ただ、それは無知と背中合わせのものだったし、本気でぶつかる事、外の世界に自分をさらけ出す事をどこかで逃げながらようやく保てていたものでもあった。 “何も知らない”という事は時に恐ろしいが、知る事によって自信が失われる場合もある。人生はその辺が厄介だと思う。 上記の言葉は今でも時折思い出す言葉の1つで、何か自

          しっかりと傷ついて得られるもの

          苦手こそものの上手なれ

          私は普段から、自分がうまくいかないと感じることと継続出来ること、の関係性についてよく考える。端的に言えば、得意よりも適度に苦手という認識があるものの方が辞めずに続けられるのではないか、という仮説だ。 常日頃私が行なっている仕事は、他者とのコミュニケーションが前提となっているが、小さな頃から非常に内向的でシャイな性格で、その根本的な部分は今でも変わっていない。一方で、1人で何か1つの事に熱中する傾向が非常に強い子供だった。その部分に関しても基本的には変わっていない。この性質を

          苦手こそものの上手なれ

          “in my opinion”

          新生活で始まったシェアハウス暮らしは、率直に言って面白い。と言うより、自分には合っている。こんなに居心地が良いなら、もっと早く経験しておけば良かった、とも思った。ただ、勘違いしてはいけないのが “たまたま”今のシェアハウスに良い人達が集まったに過ぎないという点だと思う。職場であれ、何かのサークルであれ、何であれ、コミュニティーの質がどうかは、当然だがそこに集まる “人”で決まる。そういう意味で、本当に今回は恵まれていると思う。 私が居心地良いと感じる大きな理由の1つは、国籍

          “in my opinion”

          嫉妬深さと愛情深さの境界線

          私は嫉妬深い性格だ。 これは、ほぼ私だけが確実に気付いている性格で、普段生きていて周りの人からそう認識されている事はほとんど無いと思う(実際は分からない)。それくらい、ある種超然と、飄々としているように見えていると思う(これも実際には分からない)。 10代の人格形成の時期において、私にとって客観視する事、飄々とする事、は生きてく技術であり、手段だった。そうする事が、自分を守る術だった。問題が多い場所で育つと、子供ながらに私自身が問題になってはいけない、と思い始める。そうし

          嫉妬深さと愛情深さの境界線