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”かわいい”の正体を探る

多くの人が使う言葉の一つである”かわいい”。あなたが”かわいい”と感じるものは何ですか?”かわいい”は便利な言葉だが、その真意について考えたことがあるだろうか。【「かわいい」の帝国〜モードとメディアの女の子たち 】という本を読み、”かわいい”の中身について考えたことを綴る。

まずは雑誌の”かわいい”だ。私はCUTiEやZipperが好きだった。CUTiEのコンセプトは”女の子の自分のためのおしゃれ”を提案する”for independent girls”である。このコンセプトが示すような、男の人に向けて作る”かわいい”ではなく、自分のための独立した精神を持った”かわいい”。わかる人にわかってもらえればいい”かわいい”が好きだった。

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2003年のCUTiE(左)2005年のZipper(右)


当時の雑誌は、単に洋服とか商品を売るための広告ツールではなく、マインドや精神的なものも提示してくれていたように思う。しかし今は、個の時代と言われる位にSNSも発達し、情報を得られる時代になっている。それ故、雑誌の役割が少なくなり、力が弱くなっていると思う。

最近【 ギャルと「僕ら」の20年史―女子高生雑誌Cawaii!の誕生と終焉 】という本も読んだ。読んで思ったのは、雑誌にも思いが込められていて、思いが弱くなったり、時代や読者の変化についていけないと、途端に求心力がなくなるのだなと感じた。寂しいが、その時代に対する役割を終えたということだと思う。




化粧品だとマジョリカマジョルカ(資生堂のブランド、通称マジョマジョ)が好きだった。熱情、貴婦人、白いばらなど、アイシャドウの色味に対して、物語を感じるような名前が付いたのは、このブランドが初めてだ。商品自体の見た目や広告も凝ったつくりで魔法がイメージされ、一目見てマジョマジョだ!とすぐ分かるくらい特徴があった。

今では他のブランドも追従し、化粧品も”かわいい”ものが多くなった。しかし、2003年の発売当時、ドラッグストアでマジョマジョだけが異様な空気を放っていた。私は自分の住んでいた田舎で、初めて見たときの衝撃を忘れられない。そのコーナーを眺めたり商品をじっくり見る為だけに、ドラッグストアに通っていた時期もある程だ。

また、原宿カワイイの元祖である6%DOKIDOKIの”かわいい”にも夢中になった。そこは主に服、雑貨、アクセサリーを扱うお店だ。しかし、普通のお店にはない、世界観を伝える活動があった。代表的なものはヴィジュアルショーだ。それは演劇に近いもので、ホールを使って大々的に行われた。2008年に「千夜一夜物語 〜月と砂漠と魔法のランプ〜」を見に行き、とても感銘を受けた。

6%DOKIDOKIはセンセーショナルカワイイ(度を超えたかわいさ)を提唱した。このお店を作ったのが増田セバスチャンさんだ。彼は、2011年にきゃりーぱみゅぱみゅの歌「PON PON PON」のPVで世界観を作り、世界に向けて”かわいい”を発信した。それがきっかけとなり、世界を”かわいい”で魅了するKAWAIIムーブメントが起こった。


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6%DOKIDOKIヴィジュアルショーの写真 2008年撮影


当時思っていたことは、物が溢れている世の中で、売れるものなら何でもいいみたいな、魂のこもっていない”かわいい”を手にしたくなかった。本当に意味があるものしか手にしたくなかった。意味があるって何だ、と思われるかもしれないが、作り手の気持ちとか、物に込められた”ストーリー”や、”思い”に近いように思う。

”かわいい”という言葉が色んなものに使われすぎて、自分が好きな”かわいい”がよく分からなくなっていた。しかし、本を読んだことがきっかけで改めて考え、自分のルーツを辿ることになった。

現在メインで描いているイラストの題材のプリクラも、自分のための独立した”かわいい”の類だと私は思っている。誰かに媚びたりする訳ではなく、完全に自分の楽しみのための”かわいい”だと思うから、題材として選んだのかもしれない。



今は割とシンプルなものが好まれるような気がしていて、自分が辿ってきた細々した”かわいい”や、過剰な”かわいい”はどこか遠い世界へ行ってしまったような気がする。しかし、私は物語とか、思いを込めた”かわいい”が好きだ。

そういったものは本来は”かわいい”の一言で片付けられるようなものではない。それ故、”かわいい”という言葉以上のパワーが宿るから惹きつけられるのだ。それが、私の思う”かわいい”の正体だ。

全ての”かわいい”に対して意味を求め始めると、つまらなくなるので程々が良い。理想はたまたま”かわいい”と感じたものに、興味がそそられるストーリーとか思いがあると嬉しい。


原宿をテーマにした立体アート 【 平成最後の大付録 】 2019年制作


この作品は私が”かわいい”をテーマにして作ったものだ。現在はSNSが発達して何でも見れる時代だからこそ、生で見た方がいい!と思ってもらえるような絵を目指した。生で見ることを重視した為、写真にも動画にも映らない仕掛けがある。

私は生きている間、作品を通して自分なりの”かわいい”と向きあっていくと思うし、そうありたい。社会とか色々に潰されて何も表現できない時もあった。しかし、今はやっと制作できる位に回復したので、自分なりに”かわいい”を追求し、表現できるように何とかやっていきたい。


ELIE




※ 今回のTOP画像は「インスタ映えとirony 」という題名で2018年に描いたオリジナルイラストです。

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